赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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やりたい事

今できること 10

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魔法紙がどんなモノなのかは想像出来ないけど、狂ったかの様に叫び始めたリーズ王子。

「そこに写ってるのは貴様だ。我が国の信用を下げるなど しかもそれが国族の一員とは情けなくて父上も幻滅してた」

「ビルクスが、俺を、フフアハハハ 何が幻滅だ、あの腑抜けた奴に幻滅などされたくはない!!何時もいつもいつも 人目ばかりを気にして人の意見ばかりを聞いて 人に従ってばかりの奴だ。それなのに私の意見は聞かない所か下らないと跳ね返す。もっと民のことを考えろと、幻滅してたのは俺だ!民の為では無い、国を支えてる俺たちにの為に民は働けばいいんだ」

あー、なんかすっごい確執があったのね。でもさ、どんな提案をしてたか知らないけど、"俺たちのために働け"は酷くない?そんな意見は聞けない。俺は俺のために働くって反発心が生まれるよな。

「残念だ。国が有るのも民が居てこそ我らが王族として居られる。民が居てこそ我らの意義が求められる。そんな簡単な事も気が付かない愚か者とは情けない」

「知ったような口を聞くな!」

「貴様よりは知っているつもりだ。それと父から伝言です。"城を襲撃し番の証を手にかけようとした罪は最早 庇い建て出来ない。ハシューム国が処刑の執行をしやすくする為にリーズをバラド国から除名する"だそうです」

リーズ王子の目ん玉が零れ落ちそうだ。うん?もう、王子じゃないんだ、じゃただのリーズさんになったんだ。

「・・た・・が」

うん?アシス爺さんがボソッと何か言ったけど、声がハッキリ聞こえずに分からなかった。

「なっだと、こ・・愚・・私をー!」

「事実ではないか!あんな戦争の中やっと権威ある者を助けてやったと恩を売ったと思った。この先自分の後ろ盾になる者を私の出世に一役も二役にもなる相手を助けたと思えば全く持って役にも立たない屑だ。なーにが王子だ、肩書きだけの王子はつまらん」

「アシス、終戦のあの戦いの中で恩を売ったとか自分の後ろ楯になるなる者と 判断して助けてたのか?呆れてものが言えん」

確かにな。人を助けるのにそんな事をいちいち考えない。兎に角 怪我人を1人でも多く助けるのが最優先だ。声を出したのはズラリと並んだ中の1人が顔を顰めてアシス爺さんを見てる。

「ふん、何が治療だ、大した治療も出来ずに後ろ盾もなく結局は今でも子爵止まりのシャラフ」

「後ろ盾を作りに戦場を駆けたのではない。人命を1人でも多く救う為だ。テントの中で大人しく怪我人を運ばれて来るのを待ってた貴様にはわかるまい」

「テントに居ても怪我人は運ばれて来ていた。態々 戦場を駆けてまで怪我人を探さなくてもな」

「どんなに討論をしても根本が分かってない貴様には一生話してもわからんだろう」

「確かになアシスにはわからんだろう。だが、コレだけは言える。あの時助けてくれたのはシャラフ子爵貴方だ」

1人がシャラフ子爵に助けられたと宣言したあと我も我もと声が上がる。驚いたのか咄嗟に立ち上がると騎士達に押さえつけられ地べたに両手と両膝を着いたアシス爺さん。

「嘘だ!!シャラフよりこの私が劣るのか?王子を助けたワシが?そんな事有るのか?!」

「アシス 私も終戦の戦いでシャラフに助けられた」

あ!この人王様に何となくソックリ。
『戦争って何年前なの?』

『そんなに古くはない確か。30年前が最後の戦いだった。そして 各国の順位が入れ替わった』

『最近なんだ。じゃ、あの人アルのおじいちゃんになるの?』

『そうだ、終戦させた第一人者だ。アルベルトの祖父でもある。ジェイク・サー・ハシュームだ』

「褒美に爵位の階級を上げると言っても当然のことをした迄。と、言い張り 儂の褒美は受け取らんかった。他にも終戦に尽力してくれた者達に褒美をと言ったが多くのものが亡くなった中での褒美は要らないと辞退した。皆 勲章のみとなった。そんな中 バラド国から一通の手紙が届いたアシスを男爵に引き上げハシューム国とバラド国の隣接する一角をハシュームの領土にとの事。

帰ってきたお主の顔 今でも忘れられん。
それからだな。お主が益々意固地になったのは、誰の話にも耳を傾けず ひたすらに己の信条を掲げる様になったのは」

静かに語るけどアルのじいちゃん。にしてはまだ声に張りがあって良い声してる。

アシス爺さんをちゃんと見てたから言えることなんだ。話を聞くだけでも想像出来る。戦争の酷さが。多くの人を助けたくて懸命に動いた人 自分達の居場所を守りたくて戦った人
1人でも守りたくて前線で戦った人達がいる。帰ってこない仲間が居ると知ってる人達は褒美なんて貰えなかった。 知らないアシス爺さんは意気揚々と大腕を振って帰ってきたんだろうな。褒美を貰ったと、でも 誰も羨ましいとも思わなかった。誰も褒めなかった、誰も話を聞かなかった、何も聞いてもらえない中孤独が増していった。

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