赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

目標 9

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椅子を隣り合わせにして手を繋いで窓の外、正確には夜空を見てる。
だから、部屋の中でマフラーはいらない物だと思うのだが、何故か アルの首に外せとも言えない緩さで ふんわりと巻き付けてる。

しかもだ、いつもより3割増で上機嫌なのか 金を払わないといけないんじゃないかと思える程 キラキラパーフェクトスマイルでお座りになってるアルに、数十分前の氷点下の目をした人物と同一人物なのか問いたくなる。 

ぽつりぽつりと 何の気なしに会えなかった数日を話し 月が赤くなったと、どうでもいい事を話しながら、いつもよりスキンシップが多い事に気がついてるけど 辞めて欲しいとまでは思わない。その代わりに ちょっとした事でも、心臓がドキッて 跳ねる。

「私はイオリに逢えなくて寂しかったが イオリは?」

なんだ?この 甘ったるい睦言は?なんて思うけど 心の何処かで 喜んでる自分が居るのも分かるわけで、複雑だ。

「マフラー編んでる時はアルの事 思いながら編んでたから そんなに寂しくは無かった」

素直に寂しかったと伝えたい自分と、なんとも思って無かったと言い張りたい自分を織り交ぜたら自然と零れた答えは 自然に的を得たものになった。

「私のことを思いながら このマフラーを編んでくれたのか。益々 大事にしなくては」

「そんなに大事にしなくても」

大事にして欲しいけど、ちゃんと使って欲しい、それが 作ったも者の想いだ。

「ちゃんと使うが大事にもする」

俺の気持ちが届いたのか 目元を和らげて使ってくれると言ってくれるアル。
今日の俺は本当に 少し可笑しい、俺の心臓が不整脈を起こし始めてる。
この世界で心拍数と脈拍を計る装置はあるならすぐさま 調べたい。

スクスク 楽しそうに笑いながら 俺はまたもやアルの膝の上に座らされて 月を眺めながらが たわいも無い話をしながら久しぶりに深い眠りに落ちた。


-・-・-・-・-・-・-・

こんな 夜更けになってしまい申し訳ございません。と、詫びは必要だろうと 一応 言葉に出してみたが 帰ってきた答えは 父親から濡れ衣一歩手前だ。

非難がましい目で見てくるのは同じ番持ちの叔父ではあるが、仮にもこの国の王である。言い返す言葉も「やってません」の一言にとどまってしまう。
確かにか長い間 番が現れなかった反動で、寸前迄は行ったとしても 神の至福と王の赦しがなければ、最後まで出来ない決まりは知っている。

「分かってると思うが、式迄は我慢しろよ」

叔父は多くは語らずとも、分かってるよな?と見つめてくる目を見て静かに答えた。

「分かってますよ。それに、浅ましい考えしかつかぬ者の要らぬ誤解も与えない為にも 昔の伝統に法った式でと思っております」

「それは・・・確かに 五月蝿いヤツらを黙らせるには 良いかもしれんがイオリにはなんと説明するつもりだ?」

昔は当たり前だったが、今では名乗り出なければ実行もされない初薔薇。
処女の子が真っ白なシーツに赤い血を染み込ませる事から 初薔薇の儀式として 嫁ぎ先の家より身分が高い者に儀式となる部屋を準備して貰い夫は準備された香油1つで入室し外でその様子を親達や準備をした者達だけで見守り、嫁が誠の淑女であると見届けるだけの儀式だ。
コレを拒む者は色々と噂を建てられ婚約破棄にもなるし、婚儀から直ぐに家に返されたものは二度と表に出れない家名汚しとされて来た。

だが、可愛い嫁の初めてを誰かれと見せるのはおかしいと言い始めて 今では余りこの風習は使われていないが、コレをした者は周りからの信頼度が高まってるのも事実。
私も好きで見せる訳では無い。1回でイオリの居場所が確実に良いものになれば 我慢するしかないだろう。

「殆どを知らないので有れば コレが正式な手順だと 説明すれば良いだけです。嘘は言ってませんので、余計な事は言わないで下さい」

「・・・そうだな。確かに騙してはないな。嘘もない。分かった 余計な事は言わないでおこう」

「はぁ~、息子のアレやコレやを見なきゃダメなのか。余り歓迎は出来ないが、私も親に1度見られた身だしなぁ~、仕方ない我慢するか」

遠い目をする父親は無視だ。因みに王族はこの風習は今でも続いてるので、叔父は苦笑してるだけだ。コレで 式のことはおおよそ決まった。

残るは、
「聖魔法達がやってる帳簿です。それと聖魔法に所属してる者がこの数年王都を何度も離れてるのに この近辺の都市に入ってる記録はありません。あと、国品として入ってきてる絹織物とレースの品が段々と減ってきております」

話は変わると遠い目をしてた父親も帰ってきて素早く 資料を広げて私に手渡してきた。
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