赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

目標

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棚の中には丁寧に並べられてた本と巻物とボロボロのバックだけ。

「あの、触ってもいいですか?」

「構わぬ」

許可を貰い巻き物を手に取り左手で広げ右手で巻いて行きなが簡単に読み取れる部分だけを拾い ザッと読み解き、今度は1冊の本を手に取った。
コチラは筆記体だ。

「1人ではなかったんですね」

一応 大学では日本の歴史学を専攻してたから巻き物は読み解くのは何とかなっても 英語か・・・出来ないことも無いけど時間かかりそうだな。それでも なんとか読める部分だけを拾い出す。

「聞いてるのは2人だ。送られてきた時代も大きく違う。美味い料理を広めてくたのが800年ほど前、素晴らしい建築を広めたのが500年ほど前と聞いてる」

800年前は平安時代か500年前になると安土・・・測量技術があったか?アレ・・・時代が合わない・・・?

「どうだ?読み解く事は可能か」

「えぇ、少し時間はかかりますが読み解く事は出来ます」

「おぉー出来るか。そこにどんな事が書かれてるか知りたい。是非 読み解いて欲しい」

「俺でいいですか?」

「頼んだぞ」

「はい」

この巻物と本には 先人が生きた証が書き残されてると思うと心がざわめく。
今までと違う世界で どう向き合ってきたか、どのように感じたか、どんな人物と知り合い仲良くなったか、もしかしたら垣間見ることが出来るかもしれない。コレを書き残した者の生きてきた証を知ることで、俺のコレからの手掛かりやヒントがここにあるかもしれない。一刻も早く読みたい。



-・-・-・-・-・-・-・


一応もてなしはしたが、イオリが居ないと騒ぐ者達にウンザリする。昨日は1人で来ただけでも大迷惑だったのに今は4名だ。

「昨日も言いましたが イオリは養成に行ってますと何度も申し上げてますが?聞き入れないのはどうかと思いますよ」

「では、イオリ殿はどこで養成してる」

1人だけ冷静に話を聞き入れてるのはバドラ国 第4王子のリーズ外務最高官だ。

「イオリの側で騒がれては養成とは言えません」

「養成してる者の側で騒ぐ者は居ない。だだ 一刻も早くイオリ殿の持たれている稀少魔法に付いて話をしたいとアシス様は仰られてるだけ、何も疲れさせるつもりは無い」

「疲れさせない為に外で休ませてると言っても聞かない方が、イオリを更に疲れさせるのではと危惧して教えないだけ。それに、アシス様だけではなく、他の方もイオリに会いたいと申し入れが有るが、今は控えてもらっている。そこに、アシス様だけ 特別に合わせるとなると、今暫く待って貰ってる方達に申し訳ないと思いませか?」

暗に会いたいと言ってるのはあんた達だけではない。それに ほかの者達は待っていてくれると仄めかす。

「他の者など どうでも良い。稀少魔法こそ魔法の最高峰!我々が先に会わずにどうする。体力は子供と差ほど変わらないと聞いたが、魔法力が高ければ問題ない。我々、聖魔法同士が共に歩むべき事が自然な事。養成させるべき場所は我々と共に住む宿舎でするべきだと思わないか?」

めちゃくちゃな理論をさも正論の如く語るターナ様に呆れる。

「有難い申し入れですが、イオリは何処よりも安全で安心出来る場所で養成して貰ってる」

「分かりました。ですが、イオリは稀少魔法の持ち主だ。失う訳にはいかない、その事はアルベルト様も充分に理解出来てるはずです。ですので、この誓約書にサインして頂きたい」

後はサインすれば全て契約が成される様にしてある誓約書を取り出し静かに差し出すのはナターシャ嬢だ。あからさまな 行為に目を細め紙切れを見つめた。

「なんの誓約書でしょうか?」

「イオリ殿も我々の話を聞いたら、稀少魔法と聖魔法の活動に納得し我々と共に行動したがるでしょう。その時 邪魔になる証などに縛られないと誓約書があればすんなりと 我々の元に来れるというもの。番なら相手を思いやり 先に行動するべきかと」

納得出来ない話を真面目に聞く程馬鹿らしいものはない。

「おかしな事を言うな?大きく開かれてるイオリの行く末を勝手に決めつけ こんな下らない誓約書にサインをしろとアルベルトに突き付けることは間違ってる」

隣で黙って聞いてたユージが我慢の限界だと口を開いた。

「わかって下さらないとは嘆かんしいですわ。私達は神に選ばれし者。私達は 1人でも、多くの者を救う為に常に心身共に綺麗ではなければ力が発揮出来ない事は誰でも知ってのこと。番であろうと身を穢すなど 恐ろしくて出来ませんでしょ?」

「では、世継ぎはどうする?」

「証持ちの番だからと、絶対に結婚しないといけないなんて決まりはありませんわ。他の方と御結婚すれば宜しいのよ」

「ナターシャ嬢 少し黙ろうか?」

ユージが静かに ナターシャ嬢に語りかけるが、彼女はユージを小馬鹿にした顔でハッキリと宣言した。

「そうですは、丁度良いので ハッキリと申し上げときます。私はお家の為に犠牲になり貴方と結婚して差し上げます。ですが、私 生涯この身を穢すことはしたくありませんの。あなたの世継ぎは産みませが、貴方が他所で世継ぎを作るのも許せませんの。この事はご理解して下さいませ」

「よく 言いましたね。ナターシャ嬢。素晴らしいです。コレで私も心から御祝いが言えます!」

ターナ様の賛美の声が響き アシス様とリーズ様が拍手を送る。

「世継ぎの前に色々と腑に落ちない事だらけだな」

ユージの呟きは私の耳にしか届いてない。ナターシャ嬢の聖魔法は子供一人分を治せる力しかないが、聖魔法を持つもの達から特別な存在だと言われ続け 自分は最高峰の魔法が使える1人だと思い込む様になり アシス様達の言うことは全て正しいと思うようになった1人だ。

世継ぎを産みたく無いのなら婚約破棄すれば全て丸く収まるが、女性が10代で結婚出来なければ 淑女として落ちこぼれとみられる為に破棄だけは避けたいナターシャ嬢。
何度となく婚約破棄を言い渡しても のらりくらりと躱され 挙句の果てには金を積むようになったナターシャ嬢の父親にユージはウンザリしてた。

子供の内でも、1度婚約してしまえば簡単に破棄が出来ないのはどの時代も同じだ。
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