赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

親 15

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さっきまでと打って変わって 笑顔全開のアル。コレはコレで鬱陶しいと思うのは俺のわがまま なのかもしれないが、何が嬉しいのかと、考える余地もない。

もしかして あの場所でアルも夜空を見てたのかもしれないな。そこに俺が来たから見れなくなった。と、俺は思う。

「もしかして 夜空を見るの好きなんですか?」

「・・・好きになると思う」

「はぃ?」

好きではないって事だよな?

「イオリが好きな物は 私も好きになると思う」

「あの?俺が好きな物を 無理して好きになる必要は無いと思いますよ」

「無理にではない。イオリがどんな物が好きか どんな物に興味を引かれるのか 私はイオリのすべてを知りたい」

「あのォ、それはちょっと・・無理かな」

嘘も方便って言葉 知ろうよ。堂々と全てを知りたいとか 誰が聞いてもドン引きするぞ!
イケメンなのにな残念なイケメンって居るんだな。勿体無い

「なぜ 無理なのだ」

「いやぁー、・・・・」

気持ち悪いとは言えねぇ~。なんて答えようか迷う。

「ゆっくりでも、良いと思いますよ。急いでも疲れるだけですし」

「私は・・・・20年待ち続けた。ずっとイオリだけを待ち続けた。
私はイオリが見てるものと同じ物を見て 色々なことを感じたい。それさえもダメか」

じっと 見つめられながら切ない声で語りかけられるアルは今にも泣き出してしまいそうだ。
そんな顔すんな、オトコだろ!って、友達なら言える。でも、なぜか言葉が出てこない。

アルは世界中の人の中からたった一人の人を待ち続けた。自分と同じ証をもった人物だけを待ち続けた。
それが俺なんだ。
でも、ごめんなさい。俺はなんにも感じない、同じ物があるのにアルと同じ感情にはなれない。

今 感じるのはアルの切ない気持ちだけ。
俺に出来るのは、ばあちゃんが良くしてくれたように そっとアルを抱きしめた。

「アルベルト ちょっと お時間いいかし・・・まぁ!」

お母さんの登場で 俺は飛び退くが アルはゆったりと動く。

「まったく。ノックをして下さいと 何時も言ってますよね。これからはより一層 お気を付けて下さい」

お母さんの足元には桔梗がお座りしてるが なぜかニヤリと笑ったように感じた。

『桔梗 酷いよ俺を置いていくなんて』

『いい雰囲気だったでは無いか』

『いい雰囲気って、アルが泣きそうだったから・・・』

『ほぅ、それで』

『それでって、かける言葉がなかったから ばあちゃんに良くしてもらってたように しただけ。それを見て桔梗笑ったでしょ?』

『笑ってはいない。が、そう見えたのならいい傾向だとニヤけた だけだ』

ニヤけただけって 笑ってるのと一緒だ。



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