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番外編:幼い日の記憶 〜二人の出会いの物語〜
1.日々の暮らし
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※『番外編:幼い日の記憶』は、全編クリスティーナ目線で書いています。
―――――――――
クリスティーナ・ドリコリンは、ティラノ王国の由緒正しきドリコリン伯爵家の長女として生まれた。
『クリスティーナは伯爵と兄に溺愛される箱入り娘である』
これが領外の者から見たクリスティーナの印象だ。伯爵夫人は身体が弱く早くに亡くなったため、とにかく伯爵と兄のガスパールはクリスティーナに甘かった。しかし、ドリコリン伯爵家の箱は一味も二味も違う。
クリスティーナが得意とするのは、刺繍やダンスではなく武術と魔法だ。竜騎士を一番多く輩出してきたドリコリン伯爵家の当主は、護身のためにと小さい頃から娘に剣術や弓術を習わせた。そこにさらにクリスティーナがおねだりして教わった魔法が加わり、普通の令嬢とは違う『箱入り娘』が完成してしまったのだ。
10歳になったクリスティーナは、時間がある日にはドリコリン伯爵領内の街に積極的に出かけていた。過保護な伯爵だが、クリスティーナのおねだりを無視することはできなかったのだ。
「姫様、おはようございます」
「おはよう! 今日も良い天気ね」
クリスティーナは町民のようなワンピースを着ているが、いつも町の人にはばれてしまう。最初は貴族特有の金髪のせいかと思ったが、帽子を被っても意味はなかった。
町の人に直接聞いてみたら、腰に下げている剣がいけないらしい。クリスティーナにとっては普通だが、小柄な体格に似合わない本格的な剣は目立つようだ。ちなみに最初は弓も持って行こうとしたが、それは侍女に止められてしまった。
「今日も教会ですか?」
「うん。今日は西地区よ。怪我人に聞かれたら教えてあげてね」
「はい!」
クリスティーナは待ちゆく人と挨拶を交わしながら、まずは冒険者紹介所に向かった。ヴェロキラ辺境伯領ほどではないが、ドリコリン伯爵領も辺境から近いため、町外れの森には他の領地より強い魔獣が出る。必然的に魔獣を倒す冒険者の需要は高く、冒険者と依頼人を繋ぐ紹介所の支部があるのだ。
主な依頼は商人の護衛や魔獣由来の素材集めだ。中には領主であるドリコリン伯爵家からの魔獣討伐依頼もある。伯爵騎士団があり町を守っているが、様々な理由があり冒険者にも定期的に依頼を出している。
「姫様、いらっしゃいませ」
「おはよう。今日も治癒の依頼があれば受けるわ。西地区の教会にいるから伝えてくれる?」
「西地区ですね。いつもありがとうございます」
クリスティーナはドリコリン伯爵が竜騎士の仕事で大怪我をして以来、治癒魔法を重点的に修行していた。魔法は使えば使うほど効果が上がり、使える回数も増える。冒険者は怪我が多いので治癒魔法の修行にはぴったりだ。
最初はお姫様のお遊びだと敬遠されていたが、続けているうちに陰口を叩く者はいなくなった。ガラの悪い冒険者に関しては力で黙らせてしまっている。
本職の方は紹介所で待機して依頼を受けるので、邪魔にならないよう、クリスティーナは少し離れた教会でお値段高めの設定で活動している。それでも日に何人もやってくるのだから、冒険者は本当に大変な仕事だ。
「それじゃあ、よろしくね」
クリスティーナは冒険者紹介所を出て、次は市場に向かう。これがいつもの流れだ。
「姫様、今日は新鮮な野菜がたくさん入ってるよ」
「じゃあ、コレとコレを箱で一つずつお願い」
「毎度あり!」
クリスティーナは治癒魔法で貯めたお金で、日持ちがする食材を中心に箱買いしていく。これから行く教会に隣接する孤児院への差し入れだ。買うたびに食材の入った箱を積み上げていき、魔法で強化した腕でいっぺんに抱えた。最初の頃は町の人も目を丸くしていたが、今は見て見ぬ振りをしてくれている。どうしても目立ってしまうが、自分で運ぶとお店の人が安くしてくれるのだからしょうがない。
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クリスティーナ・ドリコリンは、ティラノ王国の由緒正しきドリコリン伯爵家の長女として生まれた。
『クリスティーナは伯爵と兄に溺愛される箱入り娘である』
これが領外の者から見たクリスティーナの印象だ。伯爵夫人は身体が弱く早くに亡くなったため、とにかく伯爵と兄のガスパールはクリスティーナに甘かった。しかし、ドリコリン伯爵家の箱は一味も二味も違う。
クリスティーナが得意とするのは、刺繍やダンスではなく武術と魔法だ。竜騎士を一番多く輩出してきたドリコリン伯爵家の当主は、護身のためにと小さい頃から娘に剣術や弓術を習わせた。そこにさらにクリスティーナがおねだりして教わった魔法が加わり、普通の令嬢とは違う『箱入り娘』が完成してしまったのだ。
10歳になったクリスティーナは、時間がある日にはドリコリン伯爵領内の街に積極的に出かけていた。過保護な伯爵だが、クリスティーナのおねだりを無視することはできなかったのだ。
「姫様、おはようございます」
「おはよう! 今日も良い天気ね」
クリスティーナは町民のようなワンピースを着ているが、いつも町の人にはばれてしまう。最初は貴族特有の金髪のせいかと思ったが、帽子を被っても意味はなかった。
町の人に直接聞いてみたら、腰に下げている剣がいけないらしい。クリスティーナにとっては普通だが、小柄な体格に似合わない本格的な剣は目立つようだ。ちなみに最初は弓も持って行こうとしたが、それは侍女に止められてしまった。
「今日も教会ですか?」
「うん。今日は西地区よ。怪我人に聞かれたら教えてあげてね」
「はい!」
クリスティーナは待ちゆく人と挨拶を交わしながら、まずは冒険者紹介所に向かった。ヴェロキラ辺境伯領ほどではないが、ドリコリン伯爵領も辺境から近いため、町外れの森には他の領地より強い魔獣が出る。必然的に魔獣を倒す冒険者の需要は高く、冒険者と依頼人を繋ぐ紹介所の支部があるのだ。
主な依頼は商人の護衛や魔獣由来の素材集めだ。中には領主であるドリコリン伯爵家からの魔獣討伐依頼もある。伯爵騎士団があり町を守っているが、様々な理由があり冒険者にも定期的に依頼を出している。
「姫様、いらっしゃいませ」
「おはよう。今日も治癒の依頼があれば受けるわ。西地区の教会にいるから伝えてくれる?」
「西地区ですね。いつもありがとうございます」
クリスティーナはドリコリン伯爵が竜騎士の仕事で大怪我をして以来、治癒魔法を重点的に修行していた。魔法は使えば使うほど効果が上がり、使える回数も増える。冒険者は怪我が多いので治癒魔法の修行にはぴったりだ。
最初はお姫様のお遊びだと敬遠されていたが、続けているうちに陰口を叩く者はいなくなった。ガラの悪い冒険者に関しては力で黙らせてしまっている。
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「それじゃあ、よろしくね」
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