110 / 115
終章 王子様の決断
29.光
しおりを挟む
ディランは触れ合うだけの口づけをして、エミリーと微笑み合う。ディランが笑顔が眩しいと思いながら見つめていると、エミリーが本当に輝き出した。
「え……、えっ! なに!?」
ディランは思わず叫んでしまう。エミリーがディランから離れようとするので、しっかり抱き込んだ。大広間からも見えていることに気がついて、ニ人の姿を魔法で消し去る。そんな対応をしているうちに、光は消えてしまった。
「なんだったんだろう?」
大広間の方からざわめきが聞こえ、視線が集まってきているのを感じる。扉の近くにいた者が見ていたのだろう。
「エミリー、おかしい所はある? 痛いとか苦しいとかはない?」
「私は大丈夫です。ディラン様は?」
「僕も平気だよ。とりあえず、この場を離れた方が良さそうだね」
好奇心旺盛な男子生徒が数人、こちらに向かって来るのがみえる。近衛騎士も集まって来ているようだし、皆からは見えていない状態でも、この場に留まるのは危険だ。
「ど、どうしましょう?」
「ちょっと、ごめんね」
ディランは慌てているエミリーをヒョイッと横抱きにした。エミリーには内緒だが、少しだけ魔法で補助している。軟弱で申し訳ない。
「デ、ディラン様……。自分で歩きます」
「ドレスだと動きにくいでしょ。大丈夫、少しの間だけだから我慢してね」
エミリーは重いからとか、アワアワと喋っていたが笑顔で受け流す。ディランは庭にやってきた人たちを避けながら、大広間に戻った。
エミリーから発せられた光は、明るい大広間からも目立っていたようだ。パーティは中断し、不安が広がっていた。チャーリーが近衛騎士に指示を出しているのが目に入るが、人が多すぎて姿を消したままでは近づけそうにない。
「控室に向かうね」
ディランはエミリーに声をかけてから大広間を出ると、控室のソファにエミリーを降ろして隠蔽の魔法を解いた。
「エミリー、体調は大丈夫?」
「大丈夫です」
エミリーは真っ赤になってボーッとしているが、あの光のせいではないだろう。ディランは一先ず安心して、チャーリーに宛てた伝言魔法を作り出す。
『兄上、パーティを続けていただいて構いません。問題はこちらで解決します』
ボードゥアンの伝言魔法は綺麗な蝶だったが、ディランは習ったばかりなので、不格好な紙のような物が蝶のように飛んでいくのを見届ける。
「原因はゆっくり調べるとして、お茶でも飲んで落ち着こうか」
「は、はい」
エミリーはまだ真っ赤な顔をしている。ディランは使用人に見せたくなくて、置いてあった道具と魔法を使って自分で冷たいお茶を用意した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
エミリーは火照った顔を冷やしながら、ゆっくりと飲み干した。ディランが様子を見守っていると、エミリーが表情を引き締めて見つめてくる。
「……ディラン様、確認して頂きたいことがあるんですけどよろしいですか?」
「うん」
エミリーはゆっくりと息を吐き出してから、魅了の魔法を抑えていた腕輪に触れる。ディランはその動作にハッとした。
エミリーが確認するように再び見上げてくるのでディランははっきりと頷く。エミリーは躊躇いがちにゆっくりと腕輪を外した。
「どうでしょう」
ディランは腕輪の影響が減少するまで待って、エミリーの周囲の魔力を探す。出会った頃には感知しようとしなくても感じ取っていた異様な魔力はどこにも存在しなかった。
念の為、エミリーにディランを魅了してみてもらったが、魔法の影響は感じない。
「魅了の魔法が消えてるみたいだね」
ディランは驚きながら伝えるが、エミリーは、さほど驚いた様子もなく、ホッとしたように力を抜く。
「ヴァランティーヌ王女の日記にも書いてあったのかな?」
「はい、そのとおりです」
エミリーは自分が光ったことに対して、ディランほど驚いた様子はなかった。むしろ、ディランが抱き上げたときの動揺の方が大きかった気がする。そう思って尋ねたのだが、ディランの予想は間違っていなかったようだ。
「え……、えっ! なに!?」
ディランは思わず叫んでしまう。エミリーがディランから離れようとするので、しっかり抱き込んだ。大広間からも見えていることに気がついて、ニ人の姿を魔法で消し去る。そんな対応をしているうちに、光は消えてしまった。
「なんだったんだろう?」
大広間の方からざわめきが聞こえ、視線が集まってきているのを感じる。扉の近くにいた者が見ていたのだろう。
「エミリー、おかしい所はある? 痛いとか苦しいとかはない?」
「私は大丈夫です。ディラン様は?」
「僕も平気だよ。とりあえず、この場を離れた方が良さそうだね」
好奇心旺盛な男子生徒が数人、こちらに向かって来るのがみえる。近衛騎士も集まって来ているようだし、皆からは見えていない状態でも、この場に留まるのは危険だ。
「ど、どうしましょう?」
「ちょっと、ごめんね」
ディランは慌てているエミリーをヒョイッと横抱きにした。エミリーには内緒だが、少しだけ魔法で補助している。軟弱で申し訳ない。
「デ、ディラン様……。自分で歩きます」
「ドレスだと動きにくいでしょ。大丈夫、少しの間だけだから我慢してね」
エミリーは重いからとか、アワアワと喋っていたが笑顔で受け流す。ディランは庭にやってきた人たちを避けながら、大広間に戻った。
エミリーから発せられた光は、明るい大広間からも目立っていたようだ。パーティは中断し、不安が広がっていた。チャーリーが近衛騎士に指示を出しているのが目に入るが、人が多すぎて姿を消したままでは近づけそうにない。
「控室に向かうね」
ディランはエミリーに声をかけてから大広間を出ると、控室のソファにエミリーを降ろして隠蔽の魔法を解いた。
「エミリー、体調は大丈夫?」
「大丈夫です」
エミリーは真っ赤になってボーッとしているが、あの光のせいではないだろう。ディランは一先ず安心して、チャーリーに宛てた伝言魔法を作り出す。
『兄上、パーティを続けていただいて構いません。問題はこちらで解決します』
ボードゥアンの伝言魔法は綺麗な蝶だったが、ディランは習ったばかりなので、不格好な紙のような物が蝶のように飛んでいくのを見届ける。
「原因はゆっくり調べるとして、お茶でも飲んで落ち着こうか」
「は、はい」
エミリーはまだ真っ赤な顔をしている。ディランは使用人に見せたくなくて、置いてあった道具と魔法を使って自分で冷たいお茶を用意した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
エミリーは火照った顔を冷やしながら、ゆっくりと飲み干した。ディランが様子を見守っていると、エミリーが表情を引き締めて見つめてくる。
「……ディラン様、確認して頂きたいことがあるんですけどよろしいですか?」
「うん」
エミリーはゆっくりと息を吐き出してから、魅了の魔法を抑えていた腕輪に触れる。ディランはその動作にハッとした。
エミリーが確認するように再び見上げてくるのでディランははっきりと頷く。エミリーは躊躇いがちにゆっくりと腕輪を外した。
「どうでしょう」
ディランは腕輪の影響が減少するまで待って、エミリーの周囲の魔力を探す。出会った頃には感知しようとしなくても感じ取っていた異様な魔力はどこにも存在しなかった。
念の為、エミリーにディランを魅了してみてもらったが、魔法の影響は感じない。
「魅了の魔法が消えてるみたいだね」
ディランは驚きながら伝えるが、エミリーは、さほど驚いた様子もなく、ホッとしたように力を抜く。
「ヴァランティーヌ王女の日記にも書いてあったのかな?」
「はい、そのとおりです」
エミリーは自分が光ったことに対して、ディランほど驚いた様子はなかった。むしろ、ディランが抱き上げたときの動揺の方が大きかった気がする。そう思って尋ねたのだが、ディランの予想は間違っていなかったようだ。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします
リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。
違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。
真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。
──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。
大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。
いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ!
淑女の時間は終わりました。
これからは──ブチギレタイムと致します!!
======
筆者定番の勢いだけで書いた小説。
主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。
処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。
矛盾点とか指摘したら負けです(?)
何でもオッケーな心の広い方向けです。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です
あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?
浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。
にのまえ
恋愛
王太子ルールリアと結婚をして7年目。彼の浮気で、この世界が好きだった、恋愛ファンタジー小説の世界だと知った。
「前世も、今世も旦那となった人に浮気されるなんて」
悲しみに暮れた私は彼に離縁すると伝え、魔法で姿を消し、私と両親しか知らない秘密の森の中の家についた。
「ここで、ひっそり暮らしましょう」
そう決めた私に。
優しいフェンリルのパパと可愛い息子ができて幸せです。
だから、探さないでくださいね。
『お読みいただきありがとうございます。』
「浮気をした旦那様と離縁を決めたら。愛するフェンリルパパと愛しい子ができて幸せです」から、タイトルを変え。
エブリスタ(深月カナメ)で直しながら、投稿中の話に変えさせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる