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28.ネックレス【アルフレート】
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「心配かけてごめんな。俺の力では聖女は捕らえられない。人を巻き込む以上、正確な情報が欲しいんだ。分かってくれるよな?」
アルフレートは泣き出しそうなクラウディアを宥めるようにいつもよりゆっくりと語りかけた。フロレンツだったなら、速やかに然るべき機関の人間を引き連れて、カタリーナを捕まえただろう。アルフレートにはその力がなく、クラウディアに心配をかけてしまうことが悔しい。
「アルが直接調べなくても良いのではなくて? 他の人に任せましょう」
「俺以外が行ったほうが危険だろう?」
アルフレートはこの国の中でも一、二を争う実力者であると自負している。カタリーナの力が分かっている状況で遅れをとるつもりはない。ただ、想定される戦闘はクラウディアが想像出来るようなものではなく、言葉にすればするほど危険な戦いだと教えることになりそうだ。
「アル、降ろして」
「ああ」
アルフレートは要求通りクラウディアをゆっくりと床に降ろす。クラウディアはリタに目配せして受け取った箱をアルフレートに押し付けてきた。
「ちゃんと、毎日付けてなさいよ」
「俺にか?」
「当たり前でしょ」
アルフレートは驚きながら受け取って箱を開ける。中には素朴なネックレスが入っていた。
「クラウディアが作ったのか? 闇魔法の魔力を感じる」
ネックレスの宝石から感じる魔力はクラウディアのものだ。アルフレートへの強い執着を宝石から感じとって、顔が情けなく緩みそうになるのを必死で堪えた。
「わたくしとディータと二人で作ったのよ」
「二人で?」
クラウディアはもじもじしていて可愛いが、聞き捨てならない言葉が聞こえた。アルフレートは感情を抑えきれなくて、近くに控えるディータを睨みつける。
「私はクラウディア様がお選びになった宝石に、魔道具化の魔法をかけただけです。魔道具屋の職人だと思って頂ければ良いのではないでしょうか。家族に自らの魔法を贈りたい方も多いので、空の魔道具が売られているのは知っていますよね?」
ディータがアルフレートの視線を受けて慌てたように説明する。確かにディータがやったことは魔道具屋の仕事に過ぎない。アルフレートはそれでも納得いかなくて、ディータを連れてクラウディアから少し距離をとる。
「ディータ、お前はどうして俺に話さなかったんだ。そうすれば、俺とクラウディアの二人で作れただろう?」
クラウディアの気持ちは嬉しいが、ディータではなくアルフレートが二人で作りたかった。クラウディアには理解できなくても、ディータならアルフレートのどうしょうもない嫉妬心を想定できたはずだ。
「アルフレート様は忙しくて、それどころじゃなかったでしょ? いらないなら捨てておきますよ。あなたの姫が泣こうが喚こうが、私には関係ないですからね。せっかく喜ぶと思って手伝ったのに残念です」
「ゔ……それはそうだが……」
ディータは心底呆れた顔をしている。ここまで言われては八つ当たりの言葉も出てこない。
「ほとんどディータがやってくれたのだけど、わたくしがアルの事を想って作ったのは本当よ。気に入らないならリタにあげるから返しなさい!」
クラウディアが泣きそうな顔で手をこちらに突き出してくる。
「クラウディアが俺を想って作ったのか……」
その言葉だけで嫌な感情が消えていく。隣で大げさなため息をついたディータには、後で特別手当を渡すことにしよう。
「べ、別に特別な意味はないわ! わたくしのせいで危険な目にあうのだもの。当然でしょ」
「ありがとう。大切にするよ」
クラウディアは狼狽えながら否定していたが、アルフレートがお礼を言うとホッとしたように微笑んだ。
「無茶はしないと約束なさい。怪我をしたら、わたくしは許さないわよ」
「分かった。約束する」
アルフレートはきちんとクラウディアの目を見て約束し、さっそくネックレスをつけた。
アルフレートは泣き出しそうなクラウディアを宥めるようにいつもよりゆっくりと語りかけた。フロレンツだったなら、速やかに然るべき機関の人間を引き連れて、カタリーナを捕まえただろう。アルフレートにはその力がなく、クラウディアに心配をかけてしまうことが悔しい。
「アルが直接調べなくても良いのではなくて? 他の人に任せましょう」
「俺以外が行ったほうが危険だろう?」
アルフレートはこの国の中でも一、二を争う実力者であると自負している。カタリーナの力が分かっている状況で遅れをとるつもりはない。ただ、想定される戦闘はクラウディアが想像出来るようなものではなく、言葉にすればするほど危険な戦いだと教えることになりそうだ。
「アル、降ろして」
「ああ」
アルフレートは要求通りクラウディアをゆっくりと床に降ろす。クラウディアはリタに目配せして受け取った箱をアルフレートに押し付けてきた。
「ちゃんと、毎日付けてなさいよ」
「俺にか?」
「当たり前でしょ」
アルフレートは驚きながら受け取って箱を開ける。中には素朴なネックレスが入っていた。
「クラウディアが作ったのか? 闇魔法の魔力を感じる」
ネックレスの宝石から感じる魔力はクラウディアのものだ。アルフレートへの強い執着を宝石から感じとって、顔が情けなく緩みそうになるのを必死で堪えた。
「わたくしとディータと二人で作ったのよ」
「二人で?」
クラウディアはもじもじしていて可愛いが、聞き捨てならない言葉が聞こえた。アルフレートは感情を抑えきれなくて、近くに控えるディータを睨みつける。
「私はクラウディア様がお選びになった宝石に、魔道具化の魔法をかけただけです。魔道具屋の職人だと思って頂ければ良いのではないでしょうか。家族に自らの魔法を贈りたい方も多いので、空の魔道具が売られているのは知っていますよね?」
ディータがアルフレートの視線を受けて慌てたように説明する。確かにディータがやったことは魔道具屋の仕事に過ぎない。アルフレートはそれでも納得いかなくて、ディータを連れてクラウディアから少し距離をとる。
「ディータ、お前はどうして俺に話さなかったんだ。そうすれば、俺とクラウディアの二人で作れただろう?」
クラウディアの気持ちは嬉しいが、ディータではなくアルフレートが二人で作りたかった。クラウディアには理解できなくても、ディータならアルフレートのどうしょうもない嫉妬心を想定できたはずだ。
「アルフレート様は忙しくて、それどころじゃなかったでしょ? いらないなら捨てておきますよ。あなたの姫が泣こうが喚こうが、私には関係ないですからね。せっかく喜ぶと思って手伝ったのに残念です」
「ゔ……それはそうだが……」
ディータは心底呆れた顔をしている。ここまで言われては八つ当たりの言葉も出てこない。
「ほとんどディータがやってくれたのだけど、わたくしがアルの事を想って作ったのは本当よ。気に入らないならリタにあげるから返しなさい!」
クラウディアが泣きそうな顔で手をこちらに突き出してくる。
「クラウディアが俺を想って作ったのか……」
その言葉だけで嫌な感情が消えていく。隣で大げさなため息をついたディータには、後で特別手当を渡すことにしよう。
「べ、別に特別な意味はないわ! わたくしのせいで危険な目にあうのだもの。当然でしょ」
「ありがとう。大切にするよ」
クラウディアは狼狽えながら否定していたが、アルフレートがお礼を言うとホッとしたように微笑んだ。
「無茶はしないと約束なさい。怪我をしたら、わたくしは許さないわよ」
「分かった。約束する」
アルフレートはきちんとクラウディアの目を見て約束し、さっそくネックレスをつけた。
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