続・骸行進（裏怪談）

不動産に勤める後輩「伊藤（仮名）」の話

土地、買取 終（裏話）

今回のお話。
結論を申しますと、土地は買い取られ
現在も何処かの不動産屋を転々とする「曰く付き物件」となってしまったそうだ。

最初に土地を買い取った、伊藤の務める不動産。
其処でも後々、かなりの揉め事を生んだそうだ。

あの豪邸を土地ごと借りたという、とある夫婦は
入居後から仲違いが増え、ついには離婚した。
別の家族は、夜逃げ同然で逃げ出し
またある別の家族は、膨大な借金を作り一家離散となった。

元々から「曰く」がある。と叩き売り同然の値で貸し借りが行われていたそうだが
とうとう、手に負えないと判断した責任者の意向で
別の不動産屋へ、物件を任せたそうだ。

そして、あの豪邸を借りた人々の共通の話として
「中年の男女を見た。」というものが挙がっていたそうだ。

これは、私が推察するに
土地の元々の所有者であった男の「伯母夫婦」ではないか？と睨んでいる。

更に、追加で分かった事なのだが

この一件が全て片付き、伊藤の務める不動産で土地の買取が成立した一か月後。
土地の所有者であった男は、不審な死を遂げたという。

こちらの詳細については、伊藤自身も良く分かっていないそうだ。
しかし、伊藤が職場の噂程度で小耳にはさんだ話によれば
男は、なぜか自身の住んでいた小屋の近くに穴を掘り、その中に半ば埋まる形で
・・・地面から首だけが出た状態で発見されたのだという。

ソレが、事件なのか故意なのか。事故なのかすら詳細な情報は伝わっていないそうだ。

その話を聞いた時、私は彼の「異常行動」を思い出していた。
恐怖を嬉々として語る歪んだ表情を。

『あぁ、やり兼ねないな。彼の・・・あの状態なら。』というのが本音の所だ。
同時に、私は嬉しかったものだ。
彼が嬉々として話すあの一瞬を「怖い」と感じていた事に。

まだ「その感情」が残っていた事に。

何かを恐ろしいと思える心が、「慣れ」によって死んでいなかった事が・・・。

「怖い」という感情が「喜ばしい」なんて、それ自体がもう異常だ。
・・・分かっている。

だが、私は多くの事を経験をし、多くの人から経験を聞いた。

人は鳴れるものだ・・・。
次第に「恐怖」より「好奇心」が勝って来る物だ。

伊藤の話によれば、その物件は「関東の何処か」であるそうだ。
それ以上の事は、各方面への迷惑を考え「口外はしない。」という事だった。

皆さん、興味本位でその物件を探してはいけない。
その執着は、既に「狂っている証拠」かもしれないのだから・・・。
その先に待っているのは「全てを失う結果」だけだから・・・。