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師「霊視鑑定人X氏」の禁話
タイプライター
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この話は、前作で語った「私の修行」が行われた「蔵」にて
ある物を発見し、X氏に経緯を伺った事がきっかけである。
発見したのは、タイトルにもある通り「タイプライター」だ。
それもかなり年季の入った・・・所々サビの目立つ代物だった。
ここで改めて説明すると
X氏の保有する「蔵」には「結界」が施されており
プロを以てしても「時間を掛けなければ、お祓いは無理だ。」と言わしめる
呪物が封印されている。
私は修業の都合上、その蔵の中で数日過ごす事となり、その際
多くの呪物を見たり触れたりする機会に恵まれた。
(前作 骸行進「修行の開始と合間で・・・。」参照)
その数日間の中、この「タイプライター」も見ていたのだ。
だが、この話だけはX氏によって、近年まで「語る事すら禁止」と言い渡されていた。
彼と出会い、修行を見てもらったのは「私が学生の頃」
既に14~5年前の話だ。その時から「禁じられた話」となっていた。
お披露目の許可が下りたのは、お祓いが終わり供養も終わった後の事・・・。
それが、つい数か月前の事である。
その「タイプライター」は、ある老婆によって持ち込まれた。
なんでも、そのタイプライターの持ち主は老婆の父が仕事で使っていた物だったそうだ。
その父の仕事は「軍人」。
大戦末期、特別攻撃隊の一人として散った勇士である。
父は、戦地から家族に宛てて手紙を送っていたそうだ。
その時、使われたのが件のタイプライターだそうだ。
私が「蔵」で「ソレ」を見た時。
余りにも「場違い」な感覚を持った。
経年劣化こそ有れど、そのタイプライターからは他の呪物から感じる「敵意・悪意」の様な者を
全く感じなかった。
それを不思議に思い、X氏に尋ねた。
「・・・確かに、あの呪物は他の物とは明らかに違う。でもね・・・とても悲しい呪物だ。
その悲しみに飲まれた人が何人か、自殺未遂を図っている・・・アレは人を壊すよ。」
それ以降、蔵の中で数日間
タイプライターが、消えたり、現れたりを繰り返していたのだ。
なぜ、X氏がこのタイプライターのお祓いに手こずったのか・・・。
それは、特攻隊の悲しき真実に由来する。
「死んで来い。」
そう言われ、喜んで飛んでいく者など居る筈もない。
ある者は、特攻機の中で念仏を唱え、ある者は家族写真を握り締め
またある者は「薬物」で無理やり「ハイ」になる。
老婆の父も・・・そうだったのだ。
突撃前、最後に送られてきたという手紙があるそうだ。
・・・だが、その文面は「支離滅裂」。
最後の方の文章に至っては、最早「文」と呼べる代物ではなかったそうだ。
しかし、手紙は検閲されていた筈なのだ。
そんな意味の分からない物を「送ってよし」とはならなかったはずなのだ。
にも拘わらず・・・。
その手紙が、遺品となったタイプライターと共に送られてきたそうだ。
X氏は言う。
「あのタイプライターに残ったお父さんの念は・・・とっくに廃人だったよ。
此方の語り掛けには耳も貸さない。ただ只管に国歌を口ずさんで身だしなみを整えていた。
下手に邪魔をすれば、何をされるか分からなかった。」
「この話は、お祓いが済むまで誰にも話さない事。
知れば、その人に念が飛んで行き兼ねない。そうなったら振出しに戻っちゃうから。」
そうして、15年近くの年月を、堅く口を閉ざす事になったのだ・・・。
ある物を発見し、X氏に経緯を伺った事がきっかけである。
発見したのは、タイトルにもある通り「タイプライター」だ。
それもかなり年季の入った・・・所々サビの目立つ代物だった。
ここで改めて説明すると
X氏の保有する「蔵」には「結界」が施されており
プロを以てしても「時間を掛けなければ、お祓いは無理だ。」と言わしめる
呪物が封印されている。
私は修業の都合上、その蔵の中で数日過ごす事となり、その際
多くの呪物を見たり触れたりする機会に恵まれた。
(前作 骸行進「修行の開始と合間で・・・。」参照)
その数日間の中、この「タイプライター」も見ていたのだ。
だが、この話だけはX氏によって、近年まで「語る事すら禁止」と言い渡されていた。
彼と出会い、修行を見てもらったのは「私が学生の頃」
既に14~5年前の話だ。その時から「禁じられた話」となっていた。
お披露目の許可が下りたのは、お祓いが終わり供養も終わった後の事・・・。
それが、つい数か月前の事である。
その「タイプライター」は、ある老婆によって持ち込まれた。
なんでも、そのタイプライターの持ち主は老婆の父が仕事で使っていた物だったそうだ。
その父の仕事は「軍人」。
大戦末期、特別攻撃隊の一人として散った勇士である。
父は、戦地から家族に宛てて手紙を送っていたそうだ。
その時、使われたのが件のタイプライターだそうだ。
私が「蔵」で「ソレ」を見た時。
余りにも「場違い」な感覚を持った。
経年劣化こそ有れど、そのタイプライターからは他の呪物から感じる「敵意・悪意」の様な者を
全く感じなかった。
それを不思議に思い、X氏に尋ねた。
「・・・確かに、あの呪物は他の物とは明らかに違う。でもね・・・とても悲しい呪物だ。
その悲しみに飲まれた人が何人か、自殺未遂を図っている・・・アレは人を壊すよ。」
それ以降、蔵の中で数日間
タイプライターが、消えたり、現れたりを繰り返していたのだ。
なぜ、X氏がこのタイプライターのお祓いに手こずったのか・・・。
それは、特攻隊の悲しき真実に由来する。
「死んで来い。」
そう言われ、喜んで飛んでいく者など居る筈もない。
ある者は、特攻機の中で念仏を唱え、ある者は家族写真を握り締め
またある者は「薬物」で無理やり「ハイ」になる。
老婆の父も・・・そうだったのだ。
突撃前、最後に送られてきたという手紙があるそうだ。
・・・だが、その文面は「支離滅裂」。
最後の方の文章に至っては、最早「文」と呼べる代物ではなかったそうだ。
しかし、手紙は検閲されていた筈なのだ。
そんな意味の分からない物を「送ってよし」とはならなかったはずなのだ。
にも拘わらず・・・。
その手紙が、遺品となったタイプライターと共に送られてきたそうだ。
X氏は言う。
「あのタイプライターに残ったお父さんの念は・・・とっくに廃人だったよ。
此方の語り掛けには耳も貸さない。ただ只管に国歌を口ずさんで身だしなみを整えていた。
下手に邪魔をすれば、何をされるか分からなかった。」
「この話は、お祓いが済むまで誰にも話さない事。
知れば、その人に念が飛んで行き兼ねない。そうなったら振出しに戻っちゃうから。」
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