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夜襲

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晩餐会は始まりこそトラブルも起きたが、その後は穏やかな時間が過ぎた。

「本日集まっていただいたお客人方!今宵、皆と喜びを分かち合えたことを
心より感謝したい!しかし、夜も更け疲れもある事と思う。そこで
今宵は皆、我が城にお泊りいただきたい。城内に続く扉の前に門兵が居る!その者が
皆を、部屋まで案内する。今宵の宴はここまで!皆の者、ゆっくりと休まれよ!」

客人が少しづつ、戸口へ移動していく中、けたたましい鳴き声が庭園に響く。

「アンドラ国王!その首、もらい受けに参じたァ!」

庭園の柵を軽々と越え、馬が庭園へと侵入してきた。
その馬の上には、騎手が居る。いわゆる「騎兵」だ。

「な、何者だ!」

「ち、父上!お逃げください!父上ー!」

庭園はパニックになり、宴の参加者は我先へと城内に駆ける。
王族の兄弟たちも、その人ごみにもみくちゃにされている状況だ。

「我が名は、グルンガス・エシュロイ!亡き父、ロード(将軍)エシュロイの子!
貴様に裏切られ戦地で果てた父の恨み!今、晴らさせてもらう!」

「貴様!・・・オルランドの息子か!」

「いかにも!ボナパラ砂漠で果てた父の仇、討たせてもらう!覚悟なされよ!」

グルンガスの合図で馬は勢い良く走り出し、国王目指して猛進する。
彼が武装していたランスは、王の胴体を射抜く為、前方へと突き出されその距離を縮める。

「うぉおぉぉぉ!」

「こ、国王!」

「ジュナ!離れるのだ!ジュナ!」

猛進する馬の前に、ジュナが立ちはだかり、グルンガスの槍は彼女を捕えた。
次の一秒で彼女の胴体は貫かれ、その鮮血で庭園が染まるだろう。

・・・だが、それを許さぬ者が居た。

ほんの一瞬。・・・一瞬の出来事だ。
横から割って入ったブレアが、ジュナをそのまま突き飛ばし左腕で馬の胴体を抑え
右腕から抜刀された刀がランスの先端を抑えた。
その姿勢のまま、ブレアは馬に押され数メートル引きずられた挙句
ランスの先端は国王の王冠を穿ち、宙を舞った。

「き、貴様!何者か!邪魔をするな!」

「・・・っふぅーー。陛下。ご無事で?」

「あ・・・あぁ。」

「姫様は?」

「・・・いったぁ~。もう何するのよ!危うくケガする所だったじゃない!」

「ジュナ!お主!あのままならケガでは済まなかったのだぞ!」

「っう・・・そうですけど・・・。」

「姫、陛下を連れて城内へ。」

「・・・分かったわよぉ!」

「くそ、アンドラ国王!逃がすものか!」

「待て!」

「!」

「戦士が敵兵を前に尾を見せる様な真似・・・するまいな?」

「・・・貴様。名を名乗れ!」

「王宮第一王女傍付・・・ブレア。」

「よかろう・・・父の名に懸けて、貴様を倒し王を討つ!」

・・・・・。

「父上!父上はご健在か!父上ー!」

「ジャンセ!」

「ち、父上!ご無事ですか?」

「あぁ。問題ない。それよりも、宴の参加者の安全を・・・。」

「既に宮廷騎士たちに任せてあります。」

「そうか。では戸口の守りも・・・。」

「オービスが手配中です。」

「っふ。成長したな。ジャンセ。」

「ですが。まだ賊が庭園に?」

「案ずるな、時期に型が付く。」

「相手は騎兵、並みの騎士では・・・。」

「問題ない。ジャンセ。お前は成すべきことをなさい。」

ここで唐突だが
兵の階級について説明する。
一番下から「城下衛士」「城中衛士」「衛兵」「騎兵」「騎士」「騎士公」「ロード」「王族傍付騎士」である。
主に「騎士」と呼ばれるのは「騎兵」からであるが
純粋な「騎士」としての称号の有る無しでは権限に大きな差が生まれる。
また、ブレアが一介の騎士でありながら、最高位の「王族傍付」に任命された事は異例である。
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