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70話 異世界の聖女
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カイン様が王太子になられた事で変わったことが幾つかある。
まずはカイン様のフルネームがカイン・リーベル・トワイライトからカイン・レクス・トワイライトとなった事、この国では王の子供の名前には王妃の実家の名前が入り、それがそのまま後ろ盾になるのだけれど、王太子になるとその部分が陛下と同じレクスの名に変わる、これにより立場が王の次に偉くなるので、次期王として臣下に命令したり、騎士も動かせる立場となった。
それと、アルヴィン様が生きている事が貴族の間で噂されるようになったらしい、まだ夜会等には出席していないから噂程度だが、お城では姿を隠さずカイン様と一緒に居る為、目撃者がちらほら出てきているらしい。
本人に聞くと「もう兄さん達にバレてるから隠す必要ないし、大公って身分も色々落ち着くまでは利用した方が良い事もあるからな」と言っていた。
そしてもう1つが、エレナ様がカイン様に話し合いの場を設けて欲しいと言ってきた事だ。
エレナ様からの要望もあり、話し合いにはカイン様、アリス、私、ウィルが参加する事となり、念の為アルヴィン様も姿を隠した状態で参加した。
部屋にはエレナ様1人でやってきて、簡単な挨拶を終えると「本来より随分早いタイミングで王太子になられたんですね」とカイン様に言った。
「そちらの教皇がマリアンヌを狙わなければ、こんなに早く王太子になる必要も無かったんだけどね」
「それに関しては申し訳ないと思ってますわ」
「どういう事かな?」
「教皇の部屋に飾られていたアリアンナ様の肖像画を、私がマリアンヌ様と見間違えたのが始まりですから」
そうしてエレナ様は自分がこちらの世界に来た時の事を話し始めた。
「もうご存じだと思いますけれど、私はこの世界の人間ではありません、数年前にティルステアの教皇と枢機卿によって召喚されました。不思議な事にこちらに来た事で顔も見た目の年齢も変わってしまい、召喚された時はどうしていいやら分かりませんでしたわ」
「そんな状態で、君はどうしたんだ?」
「最初はどういう所か分からないし、怖かったので、幼い見た目になったのを利用して、色々教えてもらいました、そしてこっちの世界に来てから2年経った頃にノアと会って、ここが黄昏のメモリアの世界と似ている事に気付いたんです」
エレナ様が言ったノアとは3章で登場する攻略対象のノア・ティルステアの事だろう、彼もティルステア聖国の聖人となるはずだから、エレナ様と知り合っていても不思議ではない、実際ゲームでも新ヒロインとの仲が良かったのを覚えている。
エレナ様の発言を聞いたカイン様が「エレナ嬢、君はどこまで先の事を知っているんだい?」と聞くと、エレナ様は「私は、熱心なプレイヤーだった妹から登場人物やネタバレをよく聞いていたくらいで、どんなストーリーなのかはほぼ知りませんの」と言った。
それを聞いたアリスが「では貴女の探し人って誰なの?」と質問すると「魔王ヴィンセント様ですよ」と答えたので全員驚いた。
「えっ!?私貴女はアルヴィン様に会いたいのだと思ってたんだけど」
「アリス様、それで合ってますよ、実は妹が「アルヴィン様がヴィンセント様だったなんて~!」と喚いていた時期がありまして、アルヴィン様に会えればそれがヴィンセント様だと思っていたのですが…違うんですか?」
エレナ様がそう言うと、アルヴィン様が「いや、それ俺じゃないから」と言い、アルヴィン様の声は現在カイン様と私しか聞こえていないので、カイン様が「最近私といる叔父上は正真正銘アルヴィン・フェアリード大公爵だから、エレナ嬢の探し人ではないよ」と否定していた。
「そう、なんですか…」
「ちなみに魔王を探している理由は教えてもらえるのかな?」
「はい、話が戻るのですが私がノアと出会った後、実はクロードとも出会っているんです」
エレナ様のその発言にアリスが「ちょっと待って、クロードってあの?」と聞くと「はいそうです、ティルステアで執行者をしていました」とエレナ様は言った。
私が「執行者?」と分からないでいると、アルヴィン様が「ティルステアの暗殺専門部隊だ」と教えてくれた。
また物騒な部隊を持っているなぁ、と思いつつクロードは元々暗殺者の攻略対象なので、そのままと言えばそのままだ。
「何でまたクロードがティルステアにいるの?彼、グランディア帝国の人間でしょう?」
「諜報活動中だったらしいです、グランディア帝国は魔王を探していますから、私は彼の諜報活動を黙っている代わりに、ティルステアの外の情報を貰っていたのですが、そんな事を数年続けていたある日、教皇にその事がバレてしまって…教皇は私を自室に呼び出すと、彼を人質に知っている事を話せと言ってきました」
「それで、エレナ嬢は何を話したの?」
「そのうち魔王が復活する事くらいしか知らないのでその事を言いました、その時アリアンナ様の肖像画が目に入り、なぜマリアンヌ様の肖像画を持っているのか尋ねたら、そちらの方が興味を引いたようで、マリアンヌ様の婚約破棄や国外追放について話したら、学園に留学させてやるからマリアンヌ様がティルステアに来るよう仕向けろと命令されました、クロードは私が裏切らないようにする為の人質です」
「それがどうして魔王探しに繋がるのかな?」
「クロードは教皇の持っている神杖で何かされてしまったみたいで、今は教皇の操り人形の様になっているんです、その事を責めたら教皇が元に戻せるとしたら魔王くらいだろうなって言ってたので…」
「なるほどね、魔王を探してた理由は分かったけど、それを私達に話してエレナ嬢はどうするつもりなんだい?」
カイン様がそう言うとエレナ様は「図々しいのは分かっていますが、助けてもらえないでしょうか、お願いします」と頭を下げてきた。
するとカイン様は「ん~…すぐには答えが出せないから、返事は後日でも構わない?」と言い、エレナ様は「それで構いません」と言うともう1度頭を下げて、部屋から出て行った。
まずはカイン様のフルネームがカイン・リーベル・トワイライトからカイン・レクス・トワイライトとなった事、この国では王の子供の名前には王妃の実家の名前が入り、それがそのまま後ろ盾になるのだけれど、王太子になるとその部分が陛下と同じレクスの名に変わる、これにより立場が王の次に偉くなるので、次期王として臣下に命令したり、騎士も動かせる立場となった。
それと、アルヴィン様が生きている事が貴族の間で噂されるようになったらしい、まだ夜会等には出席していないから噂程度だが、お城では姿を隠さずカイン様と一緒に居る為、目撃者がちらほら出てきているらしい。
本人に聞くと「もう兄さん達にバレてるから隠す必要ないし、大公って身分も色々落ち着くまでは利用した方が良い事もあるからな」と言っていた。
そしてもう1つが、エレナ様がカイン様に話し合いの場を設けて欲しいと言ってきた事だ。
エレナ様からの要望もあり、話し合いにはカイン様、アリス、私、ウィルが参加する事となり、念の為アルヴィン様も姿を隠した状態で参加した。
部屋にはエレナ様1人でやってきて、簡単な挨拶を終えると「本来より随分早いタイミングで王太子になられたんですね」とカイン様に言った。
「そちらの教皇がマリアンヌを狙わなければ、こんなに早く王太子になる必要も無かったんだけどね」
「それに関しては申し訳ないと思ってますわ」
「どういう事かな?」
「教皇の部屋に飾られていたアリアンナ様の肖像画を、私がマリアンヌ様と見間違えたのが始まりですから」
そうしてエレナ様は自分がこちらの世界に来た時の事を話し始めた。
「もうご存じだと思いますけれど、私はこの世界の人間ではありません、数年前にティルステアの教皇と枢機卿によって召喚されました。不思議な事にこちらに来た事で顔も見た目の年齢も変わってしまい、召喚された時はどうしていいやら分かりませんでしたわ」
「そんな状態で、君はどうしたんだ?」
「最初はどういう所か分からないし、怖かったので、幼い見た目になったのを利用して、色々教えてもらいました、そしてこっちの世界に来てから2年経った頃にノアと会って、ここが黄昏のメモリアの世界と似ている事に気付いたんです」
エレナ様が言ったノアとは3章で登場する攻略対象のノア・ティルステアの事だろう、彼もティルステア聖国の聖人となるはずだから、エレナ様と知り合っていても不思議ではない、実際ゲームでも新ヒロインとの仲が良かったのを覚えている。
エレナ様の発言を聞いたカイン様が「エレナ嬢、君はどこまで先の事を知っているんだい?」と聞くと、エレナ様は「私は、熱心なプレイヤーだった妹から登場人物やネタバレをよく聞いていたくらいで、どんなストーリーなのかはほぼ知りませんの」と言った。
それを聞いたアリスが「では貴女の探し人って誰なの?」と質問すると「魔王ヴィンセント様ですよ」と答えたので全員驚いた。
「えっ!?私貴女はアルヴィン様に会いたいのだと思ってたんだけど」
「アリス様、それで合ってますよ、実は妹が「アルヴィン様がヴィンセント様だったなんて~!」と喚いていた時期がありまして、アルヴィン様に会えればそれがヴィンセント様だと思っていたのですが…違うんですか?」
エレナ様がそう言うと、アルヴィン様が「いや、それ俺じゃないから」と言い、アルヴィン様の声は現在カイン様と私しか聞こえていないので、カイン様が「最近私といる叔父上は正真正銘アルヴィン・フェアリード大公爵だから、エレナ嬢の探し人ではないよ」と否定していた。
「そう、なんですか…」
「ちなみに魔王を探している理由は教えてもらえるのかな?」
「はい、話が戻るのですが私がノアと出会った後、実はクロードとも出会っているんです」
エレナ様のその発言にアリスが「ちょっと待って、クロードってあの?」と聞くと「はいそうです、ティルステアで執行者をしていました」とエレナ様は言った。
私が「執行者?」と分からないでいると、アルヴィン様が「ティルステアの暗殺専門部隊だ」と教えてくれた。
また物騒な部隊を持っているなぁ、と思いつつクロードは元々暗殺者の攻略対象なので、そのままと言えばそのままだ。
「何でまたクロードがティルステアにいるの?彼、グランディア帝国の人間でしょう?」
「諜報活動中だったらしいです、グランディア帝国は魔王を探していますから、私は彼の諜報活動を黙っている代わりに、ティルステアの外の情報を貰っていたのですが、そんな事を数年続けていたある日、教皇にその事がバレてしまって…教皇は私を自室に呼び出すと、彼を人質に知っている事を話せと言ってきました」
「それで、エレナ嬢は何を話したの?」
「そのうち魔王が復活する事くらいしか知らないのでその事を言いました、その時アリアンナ様の肖像画が目に入り、なぜマリアンヌ様の肖像画を持っているのか尋ねたら、そちらの方が興味を引いたようで、マリアンヌ様の婚約破棄や国外追放について話したら、学園に留学させてやるからマリアンヌ様がティルステアに来るよう仕向けろと命令されました、クロードは私が裏切らないようにする為の人質です」
「それがどうして魔王探しに繋がるのかな?」
「クロードは教皇の持っている神杖で何かされてしまったみたいで、今は教皇の操り人形の様になっているんです、その事を責めたら教皇が元に戻せるとしたら魔王くらいだろうなって言ってたので…」
「なるほどね、魔王を探してた理由は分かったけど、それを私達に話してエレナ嬢はどうするつもりなんだい?」
カイン様がそう言うとエレナ様は「図々しいのは分かっていますが、助けてもらえないでしょうか、お願いします」と頭を下げてきた。
するとカイン様は「ん~…すぐには答えが出せないから、返事は後日でも構わない?」と言い、エレナ様は「それで構いません」と言うともう1度頭を下げて、部屋から出て行った。
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