57 / 106
56話 対策
しおりを挟む
私が中庭で待っていると、暫くしてクリスとリリとエレナ様がやってきた。
リリはいつも通りだったが、クリスはやや笑顔が引きつっており、エレナ様は微笑んでいるものの、何を考えているのか全くわからない、この人本当に何がしたいのだろう。
私は待ち合わせが事実になるように、リリとクリスに「2人共遅いわよ」と声をかけ、エレナ様には私の友達に近寄るな、という意味を込めて「エレナ様はなぜ2人と一緒にいるのかしら」と問いかけた。
私がそう言うと、リリとクリスは少し驚いた表情をしたが、すぐ元の表情に戻し、リリは私の横に、クリスはなぜか私の背後に隠れた。
(あれ?クリスってエレナ様苦手なのかしら、初対面だよね?)
「マリー遅くなってごめんなさい、エレナ様が私達と話したいと仰られて」
「同じ選択科目でしたからお近付きになりたくて声をかけましたの、そしたらお2人共マリアンヌ様と先約があると言うので、ご一緒出来ないかと思いまして」
「そうでしたか、でも申し訳ないのですけれど今回は承服しかねますわ」
「あら、どうしてかしら」
これはエレナ様が納得する理由が言えなければ、延々と続いてしまう気がしたので、どうしようかなと思っていると「マリー」と私を呼ぶウィルの声が聞こえたので、そちらを向くと、ウィルがこちらに駆け寄ってきていた。
「マリーここに居たんだね、探したよ」
「どうかしましたか?」
「この間の件で話があるから、マリーとリリアン嬢とクリスティーナ嬢を連れてくるようカイン様に言われたんだ」
「そうですか、でしたらそちらが優先ですわね、エレナ様、そういう事ですので私達失礼しますわ」
「そう、残念ね、ではまた今度話しましょう」
エレナ様はそう言うと私達に背を向け、歩いてどこかへ去っていった。
エレナ様がいなくなったので、ウィルに話を聞こうとしたら背後に隠れていたクリスに後ろから抱き着かれた。
「マリーちゃ~ん、あの人怖かったよぉ」
「怖かったって、初対面でしょ、何かあったの?」
「私も初対面だけど、あの人は仲良くなれそうにないわ、笑ってるのに圧が凄いんですもの」
「リリまで」
「そういえばマリーはどうして中庭に居たの?約束してないわよね」
リリにそう聞かれたので何て答えようかと思っていると、ウィルが「その理由はカイン様が話してくれるから移動しようか」と言って私達を生徒会室に案内した。
私達がソファに並んで座ると、机を挟んで向かい側に座っていたカイン様が話し出した。
「まさか昨日の今日で行動に出るとは思ってなかったよ、ごめんねマリアンヌ」
「いえ、私は大丈夫です」
「さて、クリスティーナ嬢とリリアン嬢は何の事か分からないだろうから説明するけど、これから話す内容は他言無用だよ」
カイン様がそう言うと2人は頷き、カイン様はエレナ様が要注意人物として国からマークされている事と、目的は分からないが、私とその周辺の人物に近寄ろうとする傾向があると話した。
ちなみに私が中庭に居た理由は、エレナ様を監視していた人物から、クリス達が声をかけられたと聞いて、カイン様が私に指示した事になっていた。
話しが終わるとリリが「事情は分かりました、それで私達はこれからどうしたらいいでしょうか、また選択科目で一緒になる事もあると思うのですが」とカイン様に聞いた。
するとカイン様は「そうだったね、じゃあエレナ嬢が大人しくなるまで、ニコラスを暫く君達と行動させようかな」と言い出した。
私が「なぜニコラス様を?」と聞くと「彼なら女生徒2人と歩いててもいつもの事だし、噂やトラブルは起こさせないからね」とカイン様はそう言った後、一瞬クリスの方を見たので、念の為攻略対象じゃないニコラス様が選ばれたのだろうと思った。
後日、午後の授業時間になるとニコラス様は、リリとクリスのそばにいるようになり、しれっとお昼も一緒に食べるようになっていたので、そのコミュ力の高さには驚いた。
リリとクリスも緊張していたのは最初だけで、今では普通に喋っている。
私がふと「何かニコラス様楽しそうですね」と呟くと、隣に居たウィルが「実際あいつかなり楽しんでるよ」と言った。
それを聞いたカイン様が「私がこの件を頼んだ時も、喜んで引き受けてくれたしね」と教えてくれた。
「そうなんですか、ニコラス様の負担でないなら良かったです、リリとクリスが気にしてたので、でもカイン様、これいつまで続けるんですか?」
「一応7月の夏季休暇に入るまでは続けるつもりだよ、そのうちエレナ嬢の方から何か言ってくると思うし」
「なぜですか?」
「ティルステアの諜報員が、無謀にも学園に侵入しようとしたから、陛下側の影に見つかる前に叔父上に頼んで捕まえてもらったんだよ」
「いつの間に…」
「普段はいないんだけど、定期報告の時期だったみたいだね」
「えっと、それで何か分かったんですか?」
「まぁ、少しね、詳しくはやっぱりエレナ嬢から聞いてみないと何とも言えない感じかな」
「そうですか」
「ただマリアンヌが狙われてるのは間違いないみたい」
「ですよね…」
「もし学園の外に行く事があったら、ウィルと一緒に行動してね」
「分かりました」
その後、エレナ様が何か行動を起こす事はなく、あっという間に実技大会当日を迎えた。
リリはいつも通りだったが、クリスはやや笑顔が引きつっており、エレナ様は微笑んでいるものの、何を考えているのか全くわからない、この人本当に何がしたいのだろう。
私は待ち合わせが事実になるように、リリとクリスに「2人共遅いわよ」と声をかけ、エレナ様には私の友達に近寄るな、という意味を込めて「エレナ様はなぜ2人と一緒にいるのかしら」と問いかけた。
私がそう言うと、リリとクリスは少し驚いた表情をしたが、すぐ元の表情に戻し、リリは私の横に、クリスはなぜか私の背後に隠れた。
(あれ?クリスってエレナ様苦手なのかしら、初対面だよね?)
「マリー遅くなってごめんなさい、エレナ様が私達と話したいと仰られて」
「同じ選択科目でしたからお近付きになりたくて声をかけましたの、そしたらお2人共マリアンヌ様と先約があると言うので、ご一緒出来ないかと思いまして」
「そうでしたか、でも申し訳ないのですけれど今回は承服しかねますわ」
「あら、どうしてかしら」
これはエレナ様が納得する理由が言えなければ、延々と続いてしまう気がしたので、どうしようかなと思っていると「マリー」と私を呼ぶウィルの声が聞こえたので、そちらを向くと、ウィルがこちらに駆け寄ってきていた。
「マリーここに居たんだね、探したよ」
「どうかしましたか?」
「この間の件で話があるから、マリーとリリアン嬢とクリスティーナ嬢を連れてくるようカイン様に言われたんだ」
「そうですか、でしたらそちらが優先ですわね、エレナ様、そういう事ですので私達失礼しますわ」
「そう、残念ね、ではまた今度話しましょう」
エレナ様はそう言うと私達に背を向け、歩いてどこかへ去っていった。
エレナ様がいなくなったので、ウィルに話を聞こうとしたら背後に隠れていたクリスに後ろから抱き着かれた。
「マリーちゃ~ん、あの人怖かったよぉ」
「怖かったって、初対面でしょ、何かあったの?」
「私も初対面だけど、あの人は仲良くなれそうにないわ、笑ってるのに圧が凄いんですもの」
「リリまで」
「そういえばマリーはどうして中庭に居たの?約束してないわよね」
リリにそう聞かれたので何て答えようかと思っていると、ウィルが「その理由はカイン様が話してくれるから移動しようか」と言って私達を生徒会室に案内した。
私達がソファに並んで座ると、机を挟んで向かい側に座っていたカイン様が話し出した。
「まさか昨日の今日で行動に出るとは思ってなかったよ、ごめんねマリアンヌ」
「いえ、私は大丈夫です」
「さて、クリスティーナ嬢とリリアン嬢は何の事か分からないだろうから説明するけど、これから話す内容は他言無用だよ」
カイン様がそう言うと2人は頷き、カイン様はエレナ様が要注意人物として国からマークされている事と、目的は分からないが、私とその周辺の人物に近寄ろうとする傾向があると話した。
ちなみに私が中庭に居た理由は、エレナ様を監視していた人物から、クリス達が声をかけられたと聞いて、カイン様が私に指示した事になっていた。
話しが終わるとリリが「事情は分かりました、それで私達はこれからどうしたらいいでしょうか、また選択科目で一緒になる事もあると思うのですが」とカイン様に聞いた。
するとカイン様は「そうだったね、じゃあエレナ嬢が大人しくなるまで、ニコラスを暫く君達と行動させようかな」と言い出した。
私が「なぜニコラス様を?」と聞くと「彼なら女生徒2人と歩いててもいつもの事だし、噂やトラブルは起こさせないからね」とカイン様はそう言った後、一瞬クリスの方を見たので、念の為攻略対象じゃないニコラス様が選ばれたのだろうと思った。
後日、午後の授業時間になるとニコラス様は、リリとクリスのそばにいるようになり、しれっとお昼も一緒に食べるようになっていたので、そのコミュ力の高さには驚いた。
リリとクリスも緊張していたのは最初だけで、今では普通に喋っている。
私がふと「何かニコラス様楽しそうですね」と呟くと、隣に居たウィルが「実際あいつかなり楽しんでるよ」と言った。
それを聞いたカイン様が「私がこの件を頼んだ時も、喜んで引き受けてくれたしね」と教えてくれた。
「そうなんですか、ニコラス様の負担でないなら良かったです、リリとクリスが気にしてたので、でもカイン様、これいつまで続けるんですか?」
「一応7月の夏季休暇に入るまでは続けるつもりだよ、そのうちエレナ嬢の方から何か言ってくると思うし」
「なぜですか?」
「ティルステアの諜報員が、無謀にも学園に侵入しようとしたから、陛下側の影に見つかる前に叔父上に頼んで捕まえてもらったんだよ」
「いつの間に…」
「普段はいないんだけど、定期報告の時期だったみたいだね」
「えっと、それで何か分かったんですか?」
「まぁ、少しね、詳しくはやっぱりエレナ嬢から聞いてみないと何とも言えない感じかな」
「そうですか」
「ただマリアンヌが狙われてるのは間違いないみたい」
「ですよね…」
「もし学園の外に行く事があったら、ウィルと一緒に行動してね」
「分かりました」
その後、エレナ様が何か行動を起こす事はなく、あっという間に実技大会当日を迎えた。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
【完結】ただの悪役令嬢ですが、大国の皇子を拾いました。〜お嬢様は、実は皇子な使用人に執着される〜
曽根原ツタ
恋愛
「――あなたに拾っていただけたことは、俺の人生の中で何よりも幸運でした」
(私は、とんでもない拾いものをしてしまったのね。この人は、大国の皇子様で、ゲームの攻略対象。そして私は……私は――ただの悪役令嬢)
そこは、運命で結ばれた男女の身体に、対になる紋章が浮かぶという伝説がある乙女ゲームの世界。
悪役令嬢ジェナー・エイデンは、ゲームをプレイしていた前世の記憶を思い出していた。屋敷の使用人として彼女に仕えている元孤児の青年ギルフォードは――ゲームの攻略対象の1人。その上、大国テーレの皇帝の隠し子だった。
いつの日にか、ギルフォードにはヒロインとの運命の印が現れる。ジェナーは、ギルフォードに思いを寄せつつも、未来に現れる本物のヒロインと彼の幸せを願い身を引くつもりだった。しかし、次第に運命の紋章にまつわる本当の真実が明らかになっていき……?
★使用人(実は皇子様)× お嬢様(悪役令嬢)の一筋縄ではいかない純愛ストーリーです。
小説家になろう様でも公開中
1月4日 HOTランキング1位ありがとうございます。
(完結保証 )
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる