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15話 出会いイベント2

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カイン殿下に連れてこられたお店は広場に隣接するガーデンテラスのあるお店で、基礎を上げ、広場より少し高い位置に建っている為、広場に居る人の目線を気にすることなく景色を眺められる静かで素敵なお店だった。
殿下は店主の方と顔見知りらしく、一言二言交わすと当たり前のようにテラス席を貸し切った、こういう所を見るとこの国の王子なんだなぁと実感した。
席に着くとカイン殿下は「ここは紅茶文化のこの国で、珍しく珈琲を出してくれるお店でね、私もたまに来ているんだよ」と教えてくれた、何でも先々代の方が珈琲がどうしても飲みたくて、海外まで行き意地と根性と熱意で珈琲豆の入手経路を確保したらしい、その話にアリスも同じ疑問を抱いたのか「え?その方転生者では?」と聞いたら「だったのかもね」とカイン殿下は相変わらずの王子スマイルで笑っていた。

「あ、キャンベル伯爵令嬢が1人になりそうですよ」とウィル様が言った為、皆でそちらを見るとバージル様がヒロインのクリスティーナ様を広場のベンチに座らせ、何やら念入りに言い含めていた。
するとウィル様が「先程飛ばされたキャンベル伯爵令嬢の帽子を追いかけていった、ハーグリーヴ伯爵令息がなかなか戻らないので探しに行くみたいですね、入れ違いも考えて彼女はここに残すみたいですけど、絶対に動かないようかなり念入りに言ってるなぁ、過保護か?」と説明してくれた。

しばらくしてバージル様が居なくなったけど、クリスティーナ様は大人しく座っていた、そこに何やら色々買い込んで両手いっぱいの荷物を持った男の子が近寄っていた。
「おやあれは、エリックのところのマークだね」とカイン殿下が言ったので、2人目の攻略対象であるマーク・シモンズ侯爵令息だと分かった。
マーク様は荷物で前が見えないのかふらふらと歩き、クリスティーナ様の前で持っていた荷物を盛大にぶちまけた、クリスティーナ様はマーク様の荷物を拾うのを手伝い、その後2人で楽しそうに話していた。

「彼女このままマーク様と話し続けるのかしら」とアリスが言うと、カイン殿下が「いや、お迎えが来たみたいだよ」と指差した方を見ると、マーク様のお兄様が2人に近付いていった。
お兄様の名前は確かクラーク・シモンズ、攻略対象ではないもののマークルートに入ると割と出番があった人だ、マーク様はそのお兄様に荷物を持ってもらい、クリスティーナ様と別れ広場を後にした。

マーク様と別れた後のクリスティーナ様は、座っている事に飽きたのか広場をウロウロと歩き出した。
それを見たウィル様が「あれだけ念入りに動くなって言われてたのに、動いちゃうんだね、あの子」と苦笑いしていると、アリスが「前世の設定では彼女の田舎育ちならではのおおらかな性格と行動力、そして貴族社会に揉まれてない素直な心に殿方達は惹かれるそうですわ」と説明すると「それって裏を返せば、常識知らずな上に貴族社会で思った事が口から出ちゃう浅慮な子って事だよね」とカイン殿下が王子スマイルで毒づいた。
唖然としていた私に気付いた殿下は「ねぇマリアンヌ、私は王族だし君達は貴族だ、導くべき民がいる以上無知は罪だと思わないかい?」と聞いてきた、確かにゲームならいくら頭がお花畑でもご都合主義で通るけど、ここは現実、今はともかく学園に入学する歳になってもあのままであれば、きっと苦労するだろう、私は「そうですわね、殿下」としか言えなかった。

「カイン様、さり気なくマリーを呼び捨てにするのやめてもらえませんか?」
「なんだいウィルやきもちかい?同じ秘密を共有してるんだし、少しくらい君の婚約者と仲良くしたっていいと思うんだけど、マリアンヌも殿下じゃなくてウィルと同じように呼んでくれていいからね」
「えっと、カイン様ですか?」
「そうそう」
「はぁ、マリーが良いなら良いですけど、それよりネイサン・ウォードがキャンベル伯爵令嬢に話しかけてますけど良いんですか?」
「あ、本当だね、何で話しかけてるの?」
「えー…あぁ、迷子かどうか確かめてるようですね」
「あら、流石騎士団総長のご子息ですわね、真面目ですこと」

アリスがそんな事を言って感心していると、ネイサン様は迷子でないならウロウロしないように、とクリスティーナ様に言って、元のベンチに座らせた後少し話をして去っていった。

「さて、日も傾いてきたし、そろそろお店を出て近くで様子を見てみようか」
「私達の知るシナリオでは歩いているとアルベール殿下に腕を掴まれるんですけど、理由は描いてませんでしたわ」
「アリス達にも分からないんだね、所々に差異はあれど、着実に目的の人物との接触はしてきてるから、たぶんアルとも会うと思うけど」

そんな話をしながらクリスティーナ様に近付くと、どこかを見つめていたので目線の先を追うと、そこには猫がいた。
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