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13話 婚約者は転生者

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ウィル様の誕生日の時に、私が誤魔化した色々を話す約束をしてしまったので、どう話をしようか悩んでいる事を、同じ転生者のアリスに手紙で相談した。
そしてアリスはカイン殿下に相談したらしく、相談されたカイン殿下が「それなら城に招待してあげるから私の部屋で4人で話そうか」と言ったらしい。
この4人とはもちろん私、ウィル様、カイン殿下、アリスである。


※ウィリアム視点※

城でアルが王子教育をサボらないよう護衛ついでに見張っていると、カイン様から呼び出しを受けた、以前と違い、キャサリン嬢と婚約してからのアルは割と真面目に王子教育を受けるようになったので、護衛は別の影にお願いして、カイン様の部屋へ向かった。
部屋に着いてみると、王子妃教育で度々王城に来ているアリス様はともかく、マリーも一緒に居て驚いた。
え?俺マリーが居るなんて聞いてないんですけど。

「やぁ、ウィル、急に呼び出してごめんね」
「いえ、構いません、ただマリーが居るのには驚きました」
「あれ?居場所が分かるんじゃないの?」
「俺を何だと思ってるんですか、流石に四六時中監視したりしませんよ」

ブレスレットの件がバレてる事もだけど、相変わらず鉄壁の王子スマイルで何考えてるのか分かりにくい人だな、と思った。

「あ、ちなみに私がブレスレットの事を知ってるのはアリスに聞いたからであって、マリアンヌ嬢は何も言ってないから誤解しないようにね」
「いや、むしろ何故アリス様がご存知で?」
「うん、その件でも話があるからとりあえず座ってくれる?」
「分かりました」

そうして俺がマリーの横に座ると「じゃあ説明するね」とカイン様が話し出した内容は、想像を遥かに超えていた。

話を聞き終えた俺が「つまり、アリス様とマリーは転生者で、前世で見た物語にこの世界の事が描いてあり、物語の進み方によっては身の危険があるかもしれない、と?」と聞くとカイン様が「流石ウィルだね、飲み込み早くて助かるよ」と笑っている。
カイン様の前で盛大なため息を吐いてしまったが、俺は悪くない。

「しかも私が聞いた感じだと、身の危険どころかこの国が揺らぐような事がゴロゴロ転がってるみたいなんだよね、もう私だけじゃ対処出来そうになくて」
「それで俺も仲間にしようと思ったわけですか」
「そういう事、だってウィルはマリアンヌ嬢の為ならなんだってするだろう?」

そのカイン様の言葉に対して「…まぁ、否定はしませんが」と答えたら何故か隣のマリーが少し驚いていた。
俺に監視されるようなブレスレットを貰っておいて、まだ俺の愛の重さに気付いてないってどういう事だろう。
もう少しスキンシップを増やして解らせておかないと駄目かなぁ、なんて思いつつ、少し疑問に思った事を聞いてみた。

「しかしカイン様、マリーやアリス様が転生者というのは、まぁ、思い当たる事もありますし信じましょう、ですが前世の物語とこの世界が同じであるというのは、どの位信憑性があるものですか?」
「私は人物情報はほぼ信じていいものだと思っているよ」
「何故です?」
「私がアリスの情報を基に個人的に調べた結果、陛下と前国王陛下の隠し子を見つけた」
「あ、はい、もういいです、分かりました、信じます」
「え?もういいの?まだまだあるのに」
「その都度教えて頂いたので構いません」

よりにもよって隠し子、バレる時期によっては傾国案件じゃないか、勘弁してほしい。
そうして頭を抱えていると「そうそう、そのブレスレットの事も書いてあったんだって、ウィル自作のブレスレットまで載ってるんだから信じるしかないよね」と言われてしまった。
まったくもってその通りである。

そしてその後俺はカイン様、アリス様、マリーの3人から物語の細かな説明を受け、質問したりしていたら大分日が傾いていた。

「あ、もうこんな時間なんだね、それじゃあ次は、アリス達の言う半年後にある王誕祭中のイベント、とやらが本当に起きるのか見に行ってみようか」
「え、ですがカインは、王誕祭中お忙しいのでは?」
「そこはどうとでもなるからアリスは気にしなくていいんだよ、もし何事もなければ普通にデートして帰ればいいし、あったらあったで…まぁ、何か対策を考えるよ」

それからカイン様は「詳細はまた後日連絡するよ」というと俺にマリーを自宅まで送るように言いつけ、解散となった。

馬車の中でマリーが「転生者だという事、今まで黙っていてすみませんでした」と言ってきたが、あの内容では信じてもらえるか分からなくて、話しにくかっただろうと思う。
転生者というのは実は希にいて、普通は身体能力が高かったり、見知らぬ技術を持っている前世持ちの人の事で、マリーやアリス様のように未来に起こる出来事を知っている、だなんてのはまず居ない。

「マリー、俺は今回カイン様やアリス様の証言もあったから全部信じられたけど、正直1人で聞いていたら半信半疑だったろうと思うんだ、だから俺は今日こういう形で聞けて良かったよ」
「そうですか、黙っていたせいでウィル様に嫌われてしまったらどうしようかと思ってました」
「こんな事で嫌ったりしないから大丈夫だよ」

そんな事を話していたらあっという間にマリーの家に着いてしまった。

俺は先に降り、マリーに手を貸して馬車から降ろすと玄関の扉の前までエスコートした。
そして扉の前に着くと、マリーが俺にお礼を言う為に向かい合わせに立ち「送って下さりありがとうございました」と言うので、距離を縮めて顔を近づけたら、キスをされると分かったのか真っ赤になって目を瞑ってしまった、これはこれで可愛いのだけれど、肩に手を添えただけで固まってしまったので、もう少し慣れて欲しいな~と思いつつ、ちょっと笑ってしまった。
まぁ、今日の話でマリーは前世の頃から俺が好きだったって分かったから、積年の思いじゃ仕方ないかと納得し、慣れないなら慣れるまですればいいんだしと考えた。

そこで俺はマリーの柔らかい唇に触れるだけのキスをして、耳元でなるべく優しく「またね」って囁いてあげたのだが、マリーは勢いよく耳を手でかばうと扉まで下がり、真っ赤な顔で何か言おうと口をパクパクさせてたけど、言葉にならなかったのかサッと綺麗な礼だけして扉の向こうに行ってしまった。

何アレ、俺の婚約者可愛過ぎじゃない?
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