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9話 推しが思いのほかチート仕様だった
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あのお茶会から数日後、今日は正式な婚約の為ウィル様が父親のバーナード様と共に家に来る日だ。
いよいよ推しとの婚約が確定するので、私は朝から浮かれていた。
約束の時間が近づいたので、お父様、お母様、私で応接室で待っていると、お父様に話しかけられた。
「マリー、今日はウィリアム君と正式な婚約を結ぶ日だけど、クレメント家はちょっと特殊でね、少し難しい話になるかもしれないが、ウィリアム君の為にもちゃんと覚えるんだよ」
「はい、お父様」
返事はしてみたものの、ウィル様の特殊な事情とか私知らないんですが、ゲームでもそんな設定描かれていなかったし何なんだろう、もしかして黄昏の裏側編で描かれてたりしたのかな、確かめようも無いんだけど気になる。
そんな事を思っているとウィル様達が到着したらしく、使用人に案内されて部屋に入ってきた。
「やぁロン、今日はよろしく」
「あぁ、いらっしゃい、とりあえずかけてくれ」
お互いにテーブルを挟んで対面に座ると、我が家の使用人が人数分のお茶をサッと出し、静かに部屋を後にした。
使用人が全員退室したのを確認してから、お父様が「ではマリーとウィリアム君の婚約について話を始めようか」と切り出した。
「じゃあこの間は慌ただしくて挨拶出来なかったから俺から、マリアンヌちゃん、俺がウィルの父親のバーナード・クレメント辺境伯だ、よろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします、バーナード様」
「本当は辺境伯領で色々しなきゃいけないんだけど、長男と次男が王都の学園に入学してるし、お義父さんがまだまだ現役でね、「こっちは任せてお前ら家族は王都に行ってこい」って言われてるからほぼ王都で暮らしてるよ」
「そうなんですね」
「ちなみに所属は一応騎士団なんだけど、うちは代々王家の影をしてるから今は諜報活動や王族の護衛とかが仕事かな」
「あの、それは私が聞いても良い話なんでしょうか?」
「ウィルと婚約するならむしろ知っておいて欲しいかな、但し他言無用でね」
そう言ってバーナード様はクレメント家について色々教えてくれた、今は戦争などしていないので主な仕事は他国へのスパイ活動、国内貴族の汚職調査や証拠確保などと、王族への隠れた護衛など、表立って動けない事が仕事らしい。
もちろんそんな危険な仕事をするには訓練が必要で、ウィル様もその訓練を小さい頃から受けているという、これがお父様に言われた特殊な事情か、と納得しているとお母様が口を開いた。
「そういえば、この間はカイン殿下が来られたので聞きそびれてしまいましたけれど、何故ウィリアム君はその歳で変装魔法だなんて難しい魔法が使えますの?」
そう聞かれたウィル様はきょとんとした顔で「あれは難しいのですか?」と答えたのだが、その瞬間お母様とお父様がバーナード様に「何をどう教えたんだ!」と詰め寄った。
問われたバーナード様は目をそらしながら「ウィルは俺に似て優秀だったから、つい」と言いながら、2歳から魔力操作を覚えさせ、3歳で身体強化、4歳で辺境伯領の魔物のいる危険な森に同行させ、5歳でその森に1人で放り込んだらしい、その後6歳でお兄様達とお祖父様の対人訓練を受け、7歳で王都に来てアルベール殿下の護衛兼影武者訓練、今はバーナード様が魔法師団長のエリック様を巻き込んで、対魔法訓練を受けさせているらしい。
「お前、エリックまで巻き込んだのか」
「だってあいつ魔法の事になると凄い協力的だし、ウィルも物覚えが良かったから俺も楽しくなってつい色々仕込んじゃって」
「ついじゃありませんわ、まったく貴方って人は前々から…」
バーナード様はお母様に説教されだしたので、ふとウィル様を見ると目が合い「流石に5歳の時はちょっと死ぬかもって思ったんだよ」と笑っていた、ちょっとどころか普通死ぬと思いますよ、ウィル様。
推しが思いのほかチート仕様な事に驚きつつも、私は前世分が乗っかってる精神年齢だからアレだけど、ウィル様のこの子供らしからぬ出来上がっちゃってる感じは、バーナード様の鬼訓練のせいだというのは理解した。
するとお父様が「ウィリアム君」とウィル様に話しかけた。
「あ、はい何でしょうロナルド様」
「君が影としてとても優秀なのは認めよう、ただ我が家に婿養子に来るという事は、私の宰相としての職も継ぐ勉強をしてもらう事になるのだが、本当に良いのかい?」
「えぇ、もちろんです、私は本来影としての職務の支障にならぬよう、誰とも結婚出来ないはずでしたから、好きになった人と一緒になれるのなら、むしろ喜んで勉強しますよ」
「本当に、バーナードは何を教えてるんだか、まぁとにかくマリーをよろしく頼むね」
「はい、絶対幸せにします」
この後私とウィル様は、お父様が用意した婚約証明書類にサインして、正式な婚約者になった。
貴族間の婚約があった場合、他の貴族が婚約済みの家に申し込まないよう、定期連絡書類で公表する様になっているのだが、お茶会でカイン殿下が仰っていた通り王子2人の婚約と同時発表だった為、特に騒がれる事もなく過ごす事が出来た。
私宛にアリス様から手紙が届いたのは、それから3か月後の事だった。
いよいよ推しとの婚約が確定するので、私は朝から浮かれていた。
約束の時間が近づいたので、お父様、お母様、私で応接室で待っていると、お父様に話しかけられた。
「マリー、今日はウィリアム君と正式な婚約を結ぶ日だけど、クレメント家はちょっと特殊でね、少し難しい話になるかもしれないが、ウィリアム君の為にもちゃんと覚えるんだよ」
「はい、お父様」
返事はしてみたものの、ウィル様の特殊な事情とか私知らないんですが、ゲームでもそんな設定描かれていなかったし何なんだろう、もしかして黄昏の裏側編で描かれてたりしたのかな、確かめようも無いんだけど気になる。
そんな事を思っているとウィル様達が到着したらしく、使用人に案内されて部屋に入ってきた。
「やぁロン、今日はよろしく」
「あぁ、いらっしゃい、とりあえずかけてくれ」
お互いにテーブルを挟んで対面に座ると、我が家の使用人が人数分のお茶をサッと出し、静かに部屋を後にした。
使用人が全員退室したのを確認してから、お父様が「ではマリーとウィリアム君の婚約について話を始めようか」と切り出した。
「じゃあこの間は慌ただしくて挨拶出来なかったから俺から、マリアンヌちゃん、俺がウィルの父親のバーナード・クレメント辺境伯だ、よろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします、バーナード様」
「本当は辺境伯領で色々しなきゃいけないんだけど、長男と次男が王都の学園に入学してるし、お義父さんがまだまだ現役でね、「こっちは任せてお前ら家族は王都に行ってこい」って言われてるからほぼ王都で暮らしてるよ」
「そうなんですね」
「ちなみに所属は一応騎士団なんだけど、うちは代々王家の影をしてるから今は諜報活動や王族の護衛とかが仕事かな」
「あの、それは私が聞いても良い話なんでしょうか?」
「ウィルと婚約するならむしろ知っておいて欲しいかな、但し他言無用でね」
そう言ってバーナード様はクレメント家について色々教えてくれた、今は戦争などしていないので主な仕事は他国へのスパイ活動、国内貴族の汚職調査や証拠確保などと、王族への隠れた護衛など、表立って動けない事が仕事らしい。
もちろんそんな危険な仕事をするには訓練が必要で、ウィル様もその訓練を小さい頃から受けているという、これがお父様に言われた特殊な事情か、と納得しているとお母様が口を開いた。
「そういえば、この間はカイン殿下が来られたので聞きそびれてしまいましたけれど、何故ウィリアム君はその歳で変装魔法だなんて難しい魔法が使えますの?」
そう聞かれたウィル様はきょとんとした顔で「あれは難しいのですか?」と答えたのだが、その瞬間お母様とお父様がバーナード様に「何をどう教えたんだ!」と詰め寄った。
問われたバーナード様は目をそらしながら「ウィルは俺に似て優秀だったから、つい」と言いながら、2歳から魔力操作を覚えさせ、3歳で身体強化、4歳で辺境伯領の魔物のいる危険な森に同行させ、5歳でその森に1人で放り込んだらしい、その後6歳でお兄様達とお祖父様の対人訓練を受け、7歳で王都に来てアルベール殿下の護衛兼影武者訓練、今はバーナード様が魔法師団長のエリック様を巻き込んで、対魔法訓練を受けさせているらしい。
「お前、エリックまで巻き込んだのか」
「だってあいつ魔法の事になると凄い協力的だし、ウィルも物覚えが良かったから俺も楽しくなってつい色々仕込んじゃって」
「ついじゃありませんわ、まったく貴方って人は前々から…」
バーナード様はお母様に説教されだしたので、ふとウィル様を見ると目が合い「流石に5歳の時はちょっと死ぬかもって思ったんだよ」と笑っていた、ちょっとどころか普通死ぬと思いますよ、ウィル様。
推しが思いのほかチート仕様な事に驚きつつも、私は前世分が乗っかってる精神年齢だからアレだけど、ウィル様のこの子供らしからぬ出来上がっちゃってる感じは、バーナード様の鬼訓練のせいだというのは理解した。
するとお父様が「ウィリアム君」とウィル様に話しかけた。
「あ、はい何でしょうロナルド様」
「君が影としてとても優秀なのは認めよう、ただ我が家に婿養子に来るという事は、私の宰相としての職も継ぐ勉強をしてもらう事になるのだが、本当に良いのかい?」
「えぇ、もちろんです、私は本来影としての職務の支障にならぬよう、誰とも結婚出来ないはずでしたから、好きになった人と一緒になれるのなら、むしろ喜んで勉強しますよ」
「本当に、バーナードは何を教えてるんだか、まぁとにかくマリーをよろしく頼むね」
「はい、絶対幸せにします」
この後私とウィル様は、お父様が用意した婚約証明書類にサインして、正式な婚約者になった。
貴族間の婚約があった場合、他の貴族が婚約済みの家に申し込まないよう、定期連絡書類で公表する様になっているのだが、お茶会でカイン殿下が仰っていた通り王子2人の婚約と同時発表だった為、特に騒がれる事もなく過ごす事が出来た。
私宛にアリス様から手紙が届いたのは、それから3か月後の事だった。
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