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第四章-⑶ ラスボスとの直接対決
世界遺産を上昇していこう
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「え!? 北京って……何で……!?」
ゾーイの言葉に、俺はどうしてそんなことがわかるんだと思った。
「韓国から、少し高度を下げてフライトしといて正解だったわね?」
どうやら、クレアとモーリスも俺と同じことを思ったようだが、ゾーイは淡々とそう告げると、窓の外に視線を移す。
その様子に、俺達三人も慌てて窓の外を覗き込んだが……それでようやく、ゾーイの言葉の意味を理解する。
確かに、そこに広がっている光景はどこからどう見たとしても、北京だ。
「紫禁城。意外と綺麗に残るものね?」
隣のゾーイの言葉が、やけに俺の耳に響き渡った。
より一層の正確な北京の位置情報を把握するために、俺達は韓国を過ぎた辺りのとこから普通では考えられないほどの低い高度でフライトをしていた。
それが功を奏したのか、俺達の目の前には歴史そのものが広がっていた。
人類が地上を捨てて千年、それでも辛抱強く根を張って、それは残っていた。
紫禁城――二十四人の皇帝が居城したとされていて、地上時代には、世界遺産というものにも登録された世界最大の木造古建築で、世界で最大の皇居。
緑がそこら中に生い茂り、当たり前に老朽化が進んでいるのもわかるが、その紫禁城は、ここがかつての中国で北京と呼ばれた場所だという証だ。
「ゾーイ、昴。ベルトを締めて」
「アナウンスもお願いします」
すると、さっきまでとは明らかに、クレアとモーリスの声が変わる。
『ここから揺れるわ。怖かったら、隣の奴の手でも握りな。切るよ』
そして、ゾーイは指示通りなのかは怪しいけれど、どこまでもゾーイらしい機内アナウンスを告げる。
宣言通りにアナウンスを切り、ベルトを締めたゾーイ……俺も再度、ベルトを確認し、深く息を吸った。
「チェック!」
「さらに上昇します!」
そして、クレアとモーリスの声と目まぐるしい機械音が聞こえたかと思えば、徐々に機体は傾いていき、そのまま一気に上昇を始めた。
初めての感覚に、俺は拳をこれでもかと握り締める……重力に引っ張られる!
「ビンゴ! 中心島ドンピシャよ!」
やがて、俺は息を吐く……珍しくゾーイから、興奮したような声が聞こえたなと思ったと同時に、その感覚からは解放され、体は自由を取り戻す。
時間に換算すると数分だったのだろうけど、俺にはひどく長く感じた。
まるで、悪夢から醒めたような……?
とにかく、予想以上に体力を消耗した気がする。
そういえば、さっきのゾーイは、何て言ってたっけと思って、俺はどうなったのかと窓の外を見たのだが……
「え? あ、あれは、飛行場だ……飛行場が見えたぞ!」
俺が正気を取り戻す間に、飛行機は中心島上空に入っていたようだ。
そして、俺は一際目立つ広さの土地を見つけ、思わず叫んでいた。
「クレア、モーリス! そのまま大きく右に旋回して!」
すると、俺の声を聞くやいなや、ゾーイは前の二人に叫ぶ。
「え……? 本当に!?」
「あ、ありました! 飛行場です!」
俺の突然の大声に、当初は前の二人は軽くパニックだったけど、ゾーイに言われた通りに旋回したことで、無事に飛行場を発見できたようだ。
『中心島が見えたわ。あと少しで、この機体は着陸する。全員、もう一度しっかりとベルトを締めて。大きく揺れる可能性があるからね?』
そして、すぐさまゾーイは機内アナウンスで知らせる……本当に、こういうとこは抜け目ないよな。
それだけ言うと、ゾーイは二人に向き直って一言……
「あとはできるわね?」
そのゾーイの言葉に対して、二人は答えず、振り返ることもしなかった。
その代わり、コックピットの窓から見える景色がどんどん下に下がり、やがて気圧が変わったのがわかった。
本当に、ゾーイの言葉は魔法だよ。
君から声を聞くだけで、俺達は安心できるんだ……
そう考えて、俺が何となく隣に視線を移せば、ゾーイの透き通るような青い瞳と目が合ったのだ。
「昴。あんたは、絶対に遅れないであたしについて来なよ?」
「……え?」
ドキッと、縛られるような感覚に俺は襲われる。
今のはどういう意味なのか……そう尋ねようとした時、機体が揺れた。
目を瞑り、妙な浮遊感がなくなった代わりに、やがて前からは安堵の深いため息が聞こえてくる。
「はあ、はあ……!! ちゃ、着陸成功!」
「到着……しました! 中心島に!」
そして、クレアの溢れんばかりの笑顔と、モーリスの安心したような今にも泣きそうな顔が、俺達に振り返る。
「は? 着陸……? よ、よっしゃああああああああああああ!!」
しばらく状況を理解するのに時間を要した俺だが、気付けば俺は叫でいた。
「ちょっと、はしゃぐのもいいけど、本番はこっからだからね?」
そんなゾーイの呆れたような言葉が聞こえた気もするが、今は許してくれ。
俺は、興奮冷めやらぬままクレアとモーリスの手を取って、狭いコックピットの中を回っていた……やっとだ!
ゾーイの言葉に、俺はどうしてそんなことがわかるんだと思った。
「韓国から、少し高度を下げてフライトしといて正解だったわね?」
どうやら、クレアとモーリスも俺と同じことを思ったようだが、ゾーイは淡々とそう告げると、窓の外に視線を移す。
その様子に、俺達三人も慌てて窓の外を覗き込んだが……それでようやく、ゾーイの言葉の意味を理解する。
確かに、そこに広がっている光景はどこからどう見たとしても、北京だ。
「紫禁城。意外と綺麗に残るものね?」
隣のゾーイの言葉が、やけに俺の耳に響き渡った。
より一層の正確な北京の位置情報を把握するために、俺達は韓国を過ぎた辺りのとこから普通では考えられないほどの低い高度でフライトをしていた。
それが功を奏したのか、俺達の目の前には歴史そのものが広がっていた。
人類が地上を捨てて千年、それでも辛抱強く根を張って、それは残っていた。
紫禁城――二十四人の皇帝が居城したとされていて、地上時代には、世界遺産というものにも登録された世界最大の木造古建築で、世界で最大の皇居。
緑がそこら中に生い茂り、当たり前に老朽化が進んでいるのもわかるが、その紫禁城は、ここがかつての中国で北京と呼ばれた場所だという証だ。
「ゾーイ、昴。ベルトを締めて」
「アナウンスもお願いします」
すると、さっきまでとは明らかに、クレアとモーリスの声が変わる。
『ここから揺れるわ。怖かったら、隣の奴の手でも握りな。切るよ』
そして、ゾーイは指示通りなのかは怪しいけれど、どこまでもゾーイらしい機内アナウンスを告げる。
宣言通りにアナウンスを切り、ベルトを締めたゾーイ……俺も再度、ベルトを確認し、深く息を吸った。
「チェック!」
「さらに上昇します!」
そして、クレアとモーリスの声と目まぐるしい機械音が聞こえたかと思えば、徐々に機体は傾いていき、そのまま一気に上昇を始めた。
初めての感覚に、俺は拳をこれでもかと握り締める……重力に引っ張られる!
「ビンゴ! 中心島ドンピシャよ!」
やがて、俺は息を吐く……珍しくゾーイから、興奮したような声が聞こえたなと思ったと同時に、その感覚からは解放され、体は自由を取り戻す。
時間に換算すると数分だったのだろうけど、俺にはひどく長く感じた。
まるで、悪夢から醒めたような……?
とにかく、予想以上に体力を消耗した気がする。
そういえば、さっきのゾーイは、何て言ってたっけと思って、俺はどうなったのかと窓の外を見たのだが……
「え? あ、あれは、飛行場だ……飛行場が見えたぞ!」
俺が正気を取り戻す間に、飛行機は中心島上空に入っていたようだ。
そして、俺は一際目立つ広さの土地を見つけ、思わず叫んでいた。
「クレア、モーリス! そのまま大きく右に旋回して!」
すると、俺の声を聞くやいなや、ゾーイは前の二人に叫ぶ。
「え……? 本当に!?」
「あ、ありました! 飛行場です!」
俺の突然の大声に、当初は前の二人は軽くパニックだったけど、ゾーイに言われた通りに旋回したことで、無事に飛行場を発見できたようだ。
『中心島が見えたわ。あと少しで、この機体は着陸する。全員、もう一度しっかりとベルトを締めて。大きく揺れる可能性があるからね?』
そして、すぐさまゾーイは機内アナウンスで知らせる……本当に、こういうとこは抜け目ないよな。
それだけ言うと、ゾーイは二人に向き直って一言……
「あとはできるわね?」
そのゾーイの言葉に対して、二人は答えず、振り返ることもしなかった。
その代わり、コックピットの窓から見える景色がどんどん下に下がり、やがて気圧が変わったのがわかった。
本当に、ゾーイの言葉は魔法だよ。
君から声を聞くだけで、俺達は安心できるんだ……
そう考えて、俺が何となく隣に視線を移せば、ゾーイの透き通るような青い瞳と目が合ったのだ。
「昴。あんたは、絶対に遅れないであたしについて来なよ?」
「……え?」
ドキッと、縛られるような感覚に俺は襲われる。
今のはどういう意味なのか……そう尋ねようとした時、機体が揺れた。
目を瞑り、妙な浮遊感がなくなった代わりに、やがて前からは安堵の深いため息が聞こえてくる。
「はあ、はあ……!! ちゃ、着陸成功!」
「到着……しました! 中心島に!」
そして、クレアの溢れんばかりの笑顔と、モーリスの安心したような今にも泣きそうな顔が、俺達に振り返る。
「は? 着陸……? よ、よっしゃああああああああああああ!!」
しばらく状況を理解するのに時間を要した俺だが、気付けば俺は叫でいた。
「ちょっと、はしゃぐのもいいけど、本番はこっからだからね?」
そんなゾーイの呆れたような言葉が聞こえた気もするが、今は許してくれ。
俺は、興奮冷めやらぬままクレアとモーリスの手を取って、狭いコックピットの中を回っていた……やっとだ!
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