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第四章-⑵ ナサニエル墜落事件の真相

作戦は全員参加でしょう

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「ゾーイ。最後に一言、頼むよ」
「は? あたしが締めるの?」
「うん。ぜひ君に、お願いしたいんだ」
「……あー、わかった」


 全員の前で、自分では別れの挨拶だと称したハロルドからの長い嗚咽混じりの演説が強制終了して、いよいよ締めとなった時、レオはゾーイを指名した。
 ゾーイは最初は明らかに面倒だという態度を隠しもしなかったが、レオは射抜くような目でゾーイを見ており、その気迫に驚くべきことにゾーイの方が折れたのだ。
 一瞬だけザワついたが、最後だし、ゾーイが締めることに誰も異論はないのだろう、全員が固唾を呑んで前に出たゾーイへと視線を移していた。
 あのめちゃくちゃなゾーイの最後の言葉に、誰もが期待と不安を抱いていたであろう、けど……


「まあ、ここは何か感動的なエピソードとか話す場面なんだろうけど、現段階で特に思い付かないのよね。だからさ、最後に……全員揃って、ワンとか、ニャーとか、鳴いてみろッッ!!!!」


 滑走路を突き抜けて空高く、そのゾーイの叫びは舞い上がる。
 一瞬、また血も涙もないことをと落胆しかけていたたが、そこから続いた言葉に、犬族と猫族、俺達も、間抜けに口を開けて……次の瞬間、心からの笑顔が溢れていた。
 途中から、王国に移住してきたナサニエルの生徒達は何なんだと置いてけぼりをくらっているけど、今だけは、この瞬間だけは、どうか許してくれ。
 俺達の脳裏には、あの時の……俺達が処刑台に立たされて、今にも首を斬られそうになってた時の光景が広がっていることだろう。

 ――ワンとか、ニャーとか、この場で全員鳴いてみろ!

 それはゾーイが、処刑台に立たされた絶望的な場面で、犬族と猫族に初めて放った言葉だ。
 同じ言葉でも、今聞くと、こんなに意味が違って聞こえるもんなんだね?

 また会おう、きっと――レオ、コタロウ、モカ。ありがとう。

 割れんばかりの歓声を背に、俺達は飛行機に搭乗し、その扉が閉まったとこで歓声も止んでしまった。


「さてと、当たり前だけど、今回の作戦メンバーは全員揃っているわよね?」


 切り替えが早いというか、淡白というのか……ゾーイは、さっそく本題とばかりに俺達全員の顔を見回していく。
 今回の作戦には、で作戦に挑む……そう、十五人でだ。


「シャノン、体調はどう?」


 ゾーイは淡々と、いつも通りに一番奥の後ろの席に座るシャノン・ローレンと目を合わせ、そう尋ねた。


「……特に、変わりはないわ」
「あっそ。まあ、変わりないのは元気な証拠よね? というか、久しぶりに外に出たのに、またこんなところに押し込まれて文句の一つぐらいも言いたいだろうけど、あと少し我慢してね?」
「……私のことは、気にしないで」


 妙な緊張感に息が詰まりそうになるこの状況を、俺はゴクリと唾を飲むことで誤魔化そうとした。
 事前にローレンさんには、機内で待機してもらっていると、ゾーイは言った。
 あと、犬族と猫族に挨拶はするかと義理で聞いたらしいが、自分にそんな資格はないと首を振ったとも言っていた……
 何日ぶりかに見たローレンさんは、特に変わりないように見えた。
 まあ少し痩せたし、覇気もない感じだけど……意外と普通で安心していた。
 今回の作戦は、ローレンさんの協力が必要不可欠だった。
 しかし、当初は俺達の中で、信用ができないだとか、そもそも話し合えるのかとか、様々な問題が提示されたが、ゾーイはこれらの意見を一蹴して、ローレンさんが言い出したことだと告げた。


「まあ、あんたの場合は、あたし達に放っておかれた方が気が楽よね? 大丈夫よ。あたし達は……」
「贖罪には! 全然、ならないとは思うけど……これは、私の中で決着をつけなきゃいけないことだから……あなた達には、どこまでもついて行くわ……!!」
「そりゃいい心がけだわね? まあ、中心島に着いてからは、あんたには嫌ってほど働いてもらうから。それまでゆっくりしてなよ」


 話をし始めてからずっと俯いていたローレンさんだったが、ゾーイの言葉を遮り、立ち上がったかと思えば、彼女は意を決したような目で俺達に宣言した。
 正直、俺達はゾーイから言葉を聞いたとしても、あのシャノン・ローレンが協力をするなんてと、半信半疑だった。
 しかし、人間っていうやつは簡単に変わるものでも、長年の固定観念をすぐに払拭できるわけでもないが、その時のローレンさんの目は、嘘は言ってないのではないかと、俺は思ってしまった。
 まあ、ゾーイはその一大決心なるものを軽く流すし、そんなゾーイにどこか対抗してとかがあるかもだけど……


「さてと、とりあえず、全員席についてベルト締めな?」
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