192 / 257
第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
巨大な鉄の鳥を飛ばそう
しおりを挟む
「ここって……空港?」
「そう、羽田空港、正式名称は東京国際空港よ!」
俺の零れ落ちた呟きに、ゾーイはテンション高めに答える。
自分が運転するというゾーイの意見をどうにか男五人がかりで宥め、シンの安全運転で、自動車を約三十分走らせてやって来たのは、地上時代に使われていたと思われる空港だった。
「よし、行こう! ゴー! ゴー!」
「え? ちょっと、ゾーイ!?」
「むやみやたらに騒ぐな! あちこち脆くなってるんだからな!?」
縦にも横にも大規模な施設、そこにゾーイは臆することもなく、サトルの制止の声も、望の注意する声も、聞き入れることなく、どんどん先に進んでそのまま中に入って行ってしまう。
俺達は顔を見合せるが、そもそもここに連れて来たのはゾーイだしで、仕方なく、俺、望、サトル、アラン、シン、ローレンさんの六人はそのままゾーイの後を追って施設に入った。
「何してるの? 全員まとめて、置いて行くわよ~?」
「いや、何ていうか、もうちょっと慎重さを、俺は求めてる!」
「警戒心とかないのか、お前は」
「はあ? 慎重さも警戒心も、ここにはあたし達以外に誰も来ないわよ!」
中に入ってみると、そこには想像以上の開放感溢れる空間が広がっていた。
その少し先で、ゾーイはブンブン手を振りながら、俺達に呆れた声を漏らす。
それを受けて、ほとんどシンは手を上げて懇願するように叫び、アランは淡々と吐き捨てる。
まあ、そんな二人の意見を、ゾーイは真正面から跳ね除けていくわけだけど。
確かに、ゾーイの言う通りに、ここには誰も用はないかもな……
約千年前の施設だからしょうがないけれど、高すぎる天井は崩れ落ちており、土産屋だったであろう場所は荒らされまくっていた。
暗く静かな広すぎるその空間は、すごく不気味なものだった。
「シャノン、よかった。さっきより、マシな顔色になったわね?」
「え? ええ……ありがとう」
「どういたしまして」
俺達がゾーイに追いつくと、ゾーイはまっすぐにローレンさんを気にかけた。
振り返ると、確かにローレンさんは先ほどまでとは比べものにならないほど、平常心を取り戻しているなと思った。
まあ、いつもより挙動不審で、何かに怯えてるなって印象は変わらないけど。
「それより、ゾーイさん。何で、そんな迷うことなく、進めるのかしら……?」
「ああ、十日間の日本一周擬きツアーの時に、偶然見つけたのよ」
「そうだったの……」
「うん。だから、目的地は決まってるのよね! さっさと、行くわよ?」
すると、今度はローレンさんが、ゾーイに質問を投げかける。
確かにと思っていると、ゾーイは淡々と答える。
それであんなに、どんどん警戒心もなく空港の中に入って行ったわけか……
本当に事前説明とかないよなと、俺が呆れていると、またゾーイは歩き出す。
こうなったゾーイを止めることは不可能なので、俺達は大人しくゾーイの後を追うことにした。
「は? うわあ、何だこれ……!?」
「何だこの、バカ広い敷地面積……」
そして、そのままゾーイは空港の外に俺達を連れ出した。
そこには、思わず、シンと望が声を上げて興奮するほど、海まで続く広大な土地が広がっていたのだ。
「これが地上ってことか……」
「空島じゃ、まずこんな光景は、一生拝めないよな?」
俺の呟きに答えたサトルの言葉に俺は大きく頷いた。
空島の土地には限りがあり、それはここ地上とは比べものにもならないほど狭くて、窮屈なものだ。
空島の土地の半分ぐらいは、ここに収まるんじゃなかろうか?
空島にも空港はあるし、何なら空島間同士の移動は百パーセント飛行機だ。
しかし、それは地上時代の滑走路を使わなければ飛び立てないような大人数を乗せられる飛行機とは違って、ほとんど助走なしで飛べる小型の飛行機だ。
空港の規模も、地上の駅などとさほど変わらない規模のもの。
俺は改めて、地上の雄大さとその可能性に感動を覚えていた……本当に俺達の先祖は、なぜ、こんな素晴らしいものを壊すようなもったいないことをしたのだろうか。
「さて、それじゃあ、今日は、出血大サービスね? どれでも、好きな飛行機を選んでいいわよ!」
しかし、ゾーイの一言であっという間に俺達は現実に……無慈悲な現実に、引き戻されることになった。
というより、全然ゾーイの言ってる意味がわからないんだけど……?
「選ぶ? 俺達が好きな飛行機とやらを選んで、何の得があるんだ。コレクションでもしろってか」
「え? 別にコレクションしたいなら否定はしないけどさ……どこ置くのよ?」
「どうして、お前が呆れてる」
すかさず、アランがまるで出会った頃のようなとんでもなく凶悪な顔で、ゾーイを睨みつけながら、そう問いかける。
けど、あいかわらず、ゾーイはそんなことなんて気にもせずに、アランと大昔の地上時代の今度のようなやり取りを繰り広げる。
本当にゾーイにかかると、何もシリアスにならないよな……
「まあ、冗談はさて置き、そんなの、空島に帰るために決まってるじゃん?」
けど、今回ばかりは、どうやら早々に話を元に戻すことに決めたようだ。
「アラン、シン、望、サトル。あんた達四人で、この千年前の鉄の鳥を動くようにして?」
本当に俺達は君の思考を先回りすることなんて、一生できそうもないや。
「そう、羽田空港、正式名称は東京国際空港よ!」
俺の零れ落ちた呟きに、ゾーイはテンション高めに答える。
自分が運転するというゾーイの意見をどうにか男五人がかりで宥め、シンの安全運転で、自動車を約三十分走らせてやって来たのは、地上時代に使われていたと思われる空港だった。
「よし、行こう! ゴー! ゴー!」
「え? ちょっと、ゾーイ!?」
「むやみやたらに騒ぐな! あちこち脆くなってるんだからな!?」
縦にも横にも大規模な施設、そこにゾーイは臆することもなく、サトルの制止の声も、望の注意する声も、聞き入れることなく、どんどん先に進んでそのまま中に入って行ってしまう。
俺達は顔を見合せるが、そもそもここに連れて来たのはゾーイだしで、仕方なく、俺、望、サトル、アラン、シン、ローレンさんの六人はそのままゾーイの後を追って施設に入った。
「何してるの? 全員まとめて、置いて行くわよ~?」
「いや、何ていうか、もうちょっと慎重さを、俺は求めてる!」
「警戒心とかないのか、お前は」
「はあ? 慎重さも警戒心も、ここにはあたし達以外に誰も来ないわよ!」
中に入ってみると、そこには想像以上の開放感溢れる空間が広がっていた。
その少し先で、ゾーイはブンブン手を振りながら、俺達に呆れた声を漏らす。
それを受けて、ほとんどシンは手を上げて懇願するように叫び、アランは淡々と吐き捨てる。
まあ、そんな二人の意見を、ゾーイは真正面から跳ね除けていくわけだけど。
確かに、ゾーイの言う通りに、ここには誰も用はないかもな……
約千年前の施設だからしょうがないけれど、高すぎる天井は崩れ落ちており、土産屋だったであろう場所は荒らされまくっていた。
暗く静かな広すぎるその空間は、すごく不気味なものだった。
「シャノン、よかった。さっきより、マシな顔色になったわね?」
「え? ええ……ありがとう」
「どういたしまして」
俺達がゾーイに追いつくと、ゾーイはまっすぐにローレンさんを気にかけた。
振り返ると、確かにローレンさんは先ほどまでとは比べものにならないほど、平常心を取り戻しているなと思った。
まあ、いつもより挙動不審で、何かに怯えてるなって印象は変わらないけど。
「それより、ゾーイさん。何で、そんな迷うことなく、進めるのかしら……?」
「ああ、十日間の日本一周擬きツアーの時に、偶然見つけたのよ」
「そうだったの……」
「うん。だから、目的地は決まってるのよね! さっさと、行くわよ?」
すると、今度はローレンさんが、ゾーイに質問を投げかける。
確かにと思っていると、ゾーイは淡々と答える。
それであんなに、どんどん警戒心もなく空港の中に入って行ったわけか……
本当に事前説明とかないよなと、俺が呆れていると、またゾーイは歩き出す。
こうなったゾーイを止めることは不可能なので、俺達は大人しくゾーイの後を追うことにした。
「は? うわあ、何だこれ……!?」
「何だこの、バカ広い敷地面積……」
そして、そのままゾーイは空港の外に俺達を連れ出した。
そこには、思わず、シンと望が声を上げて興奮するほど、海まで続く広大な土地が広がっていたのだ。
「これが地上ってことか……」
「空島じゃ、まずこんな光景は、一生拝めないよな?」
俺の呟きに答えたサトルの言葉に俺は大きく頷いた。
空島の土地には限りがあり、それはここ地上とは比べものにもならないほど狭くて、窮屈なものだ。
空島の土地の半分ぐらいは、ここに収まるんじゃなかろうか?
空島にも空港はあるし、何なら空島間同士の移動は百パーセント飛行機だ。
しかし、それは地上時代の滑走路を使わなければ飛び立てないような大人数を乗せられる飛行機とは違って、ほとんど助走なしで飛べる小型の飛行機だ。
空港の規模も、地上の駅などとさほど変わらない規模のもの。
俺は改めて、地上の雄大さとその可能性に感動を覚えていた……本当に俺達の先祖は、なぜ、こんな素晴らしいものを壊すようなもったいないことをしたのだろうか。
「さて、それじゃあ、今日は、出血大サービスね? どれでも、好きな飛行機を選んでいいわよ!」
しかし、ゾーイの一言であっという間に俺達は現実に……無慈悲な現実に、引き戻されることになった。
というより、全然ゾーイの言ってる意味がわからないんだけど……?
「選ぶ? 俺達が好きな飛行機とやらを選んで、何の得があるんだ。コレクションでもしろってか」
「え? 別にコレクションしたいなら否定はしないけどさ……どこ置くのよ?」
「どうして、お前が呆れてる」
すかさず、アランがまるで出会った頃のようなとんでもなく凶悪な顔で、ゾーイを睨みつけながら、そう問いかける。
けど、あいかわらず、ゾーイはそんなことなんて気にもせずに、アランと大昔の地上時代の今度のようなやり取りを繰り広げる。
本当にゾーイにかかると、何もシリアスにならないよな……
「まあ、冗談はさて置き、そんなの、空島に帰るために決まってるじゃん?」
けど、今回ばかりは、どうやら早々に話を元に戻すことに決めたようだ。
「アラン、シン、望、サトル。あんた達四人で、この千年前の鉄の鳥を動くようにして?」
本当に俺達は君の思考を先回りすることなんて、一生できそうもないや。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる