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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
女王様の完全勝利か
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「クレアさんとアランさんは、何か聞かされていないのかしら?」
静まり返った空間で、そんな言葉を投げかけたのは、意外や意外な人物、シャノン・ローレンであり、まだ俺がナサニエル組で唯一、ファーストネームで呼ぶ人物。
そこに関してだが、ローレンさんもゾーイ同様に謎が多い人物であり、最早だけど、俺達と打ち解ける気があるかも怪しいほどだ……
そんなローレンさんだが、医療科のリーダーの真由を菜々美とともにサポートしている。
何かとトラブルが多く、一日あたりのケガ人も相当な環境で、真由と菜々美は救急箱や担架を片手にして、王国とナサニエルを走り回っている。
「あ、え、えっと……私には今回は特にというより、ゾーイとあまりゆっくり話せていなくて……」
「俺も同じだ。気配もなく、あの女はどこかに消えやがるからな」
一方で、ローレンさんから、突然に話を振られて驚いていたクレアとアランだったが、すぐに切り替えて返事を返す。
しかし、クレアは寂しそうに、アランは珍しく深いため息をつきながらという具合の、揃って浮かない表情だった。
クレアとアランは、生徒達側と、犬族と猫族側の架け橋となるような、王国とナサニエル全体の、仲介役とまとめ役を担うような役割を任されていた。
生徒達側に地上の文化を教えたり、俺達が王国に来た時のことを包み隠さずに説明したり、犬族と猫族側に俺達の境遇を改めて詳しく説明したり、文句や不安を受け止めて説得したりなどの、本当に一番と言っても過言ではない緊張感溢れまくるポジションを引き受けてくれており、毎晩遅くまで談話室で話し合ってる姿を見る。
本当にご苦労さまだ、今度ゆっくりと労わらなきゃな……
ちなみに言うと、俺はガラにもなくゾーイから環境学科のトップに問答無用で立たされている。
そして、気付いた時には、畑の野菜の栽培だけではなくて、森での木の実や薬草やキノコの採取だったり、肉調達のための狩りだったり、魚調達のための川釣りや海への遠征だったり、食料調達全般を任されるようになっていた。
当然だが、狩りはゾーイがやっていたし、急には絶対に無理だと断固として俺は断っていたのだが……ゾーイから、澤木昴くんは非情にもあたし達の飢え死にへの道を導こうとしていますよって、例の処刑台から叫んでやると脅され……完璧に脅されて、今にいたる。
だって、そんなことされたら、俺の築き上げた地位と信頼は一瞬のうちに消え去るだろうし、望からはまた前みたいに軽蔑され、真由にはきっと振られるだろうし……本当に死にものぐるいで狩りと釣りの技術を習得したよね?
「あれ? そもそもだけど、モーリスは知ってるんじゃないの?」
俺が若干の思い出した闇に突入してる横で、サトルはメガネが照明の光を反射させているその人物、ゾーイの言葉を借りるのならば、ナサニエル墜落後最大の裏切り者のモーリス・ニコルズに問いかける。
「……さあ? あの人の……ゾーイの考えというのは、私の中の理解と常識を軽々しく、鼻で笑いながら超えていくものがありますからね……ははっ」
「あー、モーリス? そこは壁だ。私達はこっちだぞ?」
その問いかけられたモーリスは、フラリと立ち上がると……壁に話し出した。
しかも、壁に向かって笑うなんてことまで繰り広げるから、あまりの光景に俺達は言葉が出ずにいた。
そんな中で勇気を持ってモーリスに指摘をしたのは、ハロルドだ。
「おやおや、そうでしたか? これは本当にすみませんね……ここ五日間、二時間睡眠なものでして、絶対にそこにあるはずのないものが、なぜだか見える時があるのですよ……」
「見える時とは……そ、それは、たとえばだが、どのようなものなのだ?」
「そうですね……昨日見たのは、キノコと魚が仲良く手をとり、サンバを踊り狂うという、とても愉快な……」
「モーリスウウウウウウ!!!! キノコと魚は足がないから、あの華麗なステップは踏めないんだ!! しっかりしろおおおおおおお!!」
ハロルドの指摘に対して、メガネをかけ直しながら振り向くモーリスは、これまた不可解な言葉を繰り出す。
若干の動揺をしながら聞き返すが、モーリスから返ってきた言葉に、ハロルドはあっという間に正気を失った。
これでもかとハロルドは力いっぱいにモーリスの肩を揺すり、ぐわんぐわんと虚ろな目のモーリスは大きく揺れる。
その光景に、俺は手を合わせて拝んでおいた……おそらく、俺も混乱していたのだろう。
静まり返った空間で、そんな言葉を投げかけたのは、意外や意外な人物、シャノン・ローレンであり、まだ俺がナサニエル組で唯一、ファーストネームで呼ぶ人物。
そこに関してだが、ローレンさんもゾーイ同様に謎が多い人物であり、最早だけど、俺達と打ち解ける気があるかも怪しいほどだ……
そんなローレンさんだが、医療科のリーダーの真由を菜々美とともにサポートしている。
何かとトラブルが多く、一日あたりのケガ人も相当な環境で、真由と菜々美は救急箱や担架を片手にして、王国とナサニエルを走り回っている。
「あ、え、えっと……私には今回は特にというより、ゾーイとあまりゆっくり話せていなくて……」
「俺も同じだ。気配もなく、あの女はどこかに消えやがるからな」
一方で、ローレンさんから、突然に話を振られて驚いていたクレアとアランだったが、すぐに切り替えて返事を返す。
しかし、クレアは寂しそうに、アランは珍しく深いため息をつきながらという具合の、揃って浮かない表情だった。
クレアとアランは、生徒達側と、犬族と猫族側の架け橋となるような、王国とナサニエル全体の、仲介役とまとめ役を担うような役割を任されていた。
生徒達側に地上の文化を教えたり、俺達が王国に来た時のことを包み隠さずに説明したり、犬族と猫族側に俺達の境遇を改めて詳しく説明したり、文句や不安を受け止めて説得したりなどの、本当に一番と言っても過言ではない緊張感溢れまくるポジションを引き受けてくれており、毎晩遅くまで談話室で話し合ってる姿を見る。
本当にご苦労さまだ、今度ゆっくりと労わらなきゃな……
ちなみに言うと、俺はガラにもなくゾーイから環境学科のトップに問答無用で立たされている。
そして、気付いた時には、畑の野菜の栽培だけではなくて、森での木の実や薬草やキノコの採取だったり、肉調達のための狩りだったり、魚調達のための川釣りや海への遠征だったり、食料調達全般を任されるようになっていた。
当然だが、狩りはゾーイがやっていたし、急には絶対に無理だと断固として俺は断っていたのだが……ゾーイから、澤木昴くんは非情にもあたし達の飢え死にへの道を導こうとしていますよって、例の処刑台から叫んでやると脅され……完璧に脅されて、今にいたる。
だって、そんなことされたら、俺の築き上げた地位と信頼は一瞬のうちに消え去るだろうし、望からはまた前みたいに軽蔑され、真由にはきっと振られるだろうし……本当に死にものぐるいで狩りと釣りの技術を習得したよね?
「あれ? そもそもだけど、モーリスは知ってるんじゃないの?」
俺が若干の思い出した闇に突入してる横で、サトルはメガネが照明の光を反射させているその人物、ゾーイの言葉を借りるのならば、ナサニエル墜落後最大の裏切り者のモーリス・ニコルズに問いかける。
「……さあ? あの人の……ゾーイの考えというのは、私の中の理解と常識を軽々しく、鼻で笑いながら超えていくものがありますからね……ははっ」
「あー、モーリス? そこは壁だ。私達はこっちだぞ?」
その問いかけられたモーリスは、フラリと立ち上がると……壁に話し出した。
しかも、壁に向かって笑うなんてことまで繰り広げるから、あまりの光景に俺達は言葉が出ずにいた。
そんな中で勇気を持ってモーリスに指摘をしたのは、ハロルドだ。
「おやおや、そうでしたか? これは本当にすみませんね……ここ五日間、二時間睡眠なものでして、絶対にそこにあるはずのないものが、なぜだか見える時があるのですよ……」
「見える時とは……そ、それは、たとえばだが、どのようなものなのだ?」
「そうですね……昨日見たのは、キノコと魚が仲良く手をとり、サンバを踊り狂うという、とても愉快な……」
「モーリスウウウウウウ!!!! キノコと魚は足がないから、あの華麗なステップは踏めないんだ!! しっかりしろおおおおおおお!!」
ハロルドの指摘に対して、メガネをかけ直しながら振り向くモーリスは、これまた不可解な言葉を繰り出す。
若干の動揺をしながら聞き返すが、モーリスから返ってきた言葉に、ハロルドはあっという間に正気を失った。
これでもかとハロルドは力いっぱいにモーリスの肩を揺すり、ぐわんぐわんと虚ろな目のモーリスは大きく揺れる。
その光景に、俺は手を合わせて拝んでおいた……おそらく、俺も混乱していたのだろう。
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