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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ

それぞれの成長とともに

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「昴くん! 何だか、少し見ない間に筋肉ついたね!? 元気にしてたかい?」


 続いて、ハロルドと俺の会話に入ってきたのはジェームズだ。


「まあ、知らぬ間に鍛えられてる便利な環境にはいるよな? 俺は変わらず、元気だよ。ジェームズはって……え、気のせいか? 少し痩せたか!?」
「あはは、気のせいじゃないよ。しっかりと痩せたんだ。けどさ、あれだけ走り回ってれば、必然じゃない? それに関してはハロルドもだけど」
「え? あ、言われてみれば……顔周りとか、心なしか引き締まったな!?」
「これに関しては予想外で、不本意ではあるが、このハロルド・早乙女! ダイエットに成功したのである!」


 ジェームズの質問に答えた通りに、俺の悲しくなるほど貧相だった体は、本当にいつの間にか、筋肉というものを手に入れて、レベルアップしていた。
 しかし、そんなことよりも俺が驚いたのは、あのぽっちゃり体型が特徴だったジェームズのぽっちゃりの部分が、消え去っていたことだ。
 これが世に言う着痩せというものかと思ったが、ジェームズからは肯定の一言と、プラスをして、ハロルドまで痩せたという衝撃の言葉。
 慌てて振り向くと、確かにハロルドの輪郭はシュッと引き締まっており、それを指摘すると、ハロルドは高笑いをして拳を突き上げたのだ。
 すると、そんな俺達の様子を見ていた他のみんなからは、次々と驚きと祝福の拍手と声が飛ぶ。


「これが俗に言う、地上のサバイバルダイエットってやつ?」
「いや? どちらかと言うと、ゾーイの無茶ぶりとプレッシャーダイエットとかの方が、ピッタリなんじゃねえか?」
「兄貴! それ、ナイスネーミング!」


 そんな様子を見ながら、奥から歩いて来てそうおかしそうに告げるのは、ソニアとデルタのレイモンド兄妹。
 ソニアの言葉を、まあ上手いこと訂正したデルタに、ソニアは爆笑だった。
 本当に、こういう感じが久しぶりで俺は泣きそうになった……こうして、俺達ナサニエル組が一堂に会するのは、実に三か月ぶりぐらいだからだ。
 もちろん、俺達の場合は他の生徒達と違って王国に家があるから、帰る場所は一緒でそれぞれ顔を見る機会はあった。
 しかし、本当にすれ違いざまに挨拶をしたり、食事の時に軽く話をしたりするぐらいで、よく顔を見て話をするというのは、本当に久しぶりだった。
 どうして、そうなってしまったのかと言うと、理由は単純明快、それぞれが忙しかったからだ。
 三か月前の百鬼夜行との全面戦争寸前事件から、俺達の仕事は五倍ぐらいに膨れ上がった。
 それぞれがそれぞれに、重要な役割を他ならぬゾーイから与えられ、それに応えるために必死だったと言った方が、正しいかもしれないな……
 ハロルドとジェームズはアーデルのまとめ役を与えられ、そのアーデルが規律を乱さないようにするための、王国とナサニエル全体の、まるで警察のような役割を与えられていたので、トラブルが起きる度に朝から晩まで二人が走り回る姿は、よく目にしていた。
 本人達も自虐っぽく言ってるし、確かにあの運動量は痩せるよな?
 デルタとソニアの二人の役割は、これは言わずもがな、王国とナサニエル全体の栄養管理全般だ。
 他の調理科のトップに立ち、栄養バランスやそれぞれの要望を叶えつつ、合わせて五百人弱の人間と犬族と猫族達の食事を三食、作り続けていた。
 よく昼食時にナサニエルの食堂に行くと厨房から、デルタかソニアどちらかの怒号が聞こえてたっけな……


「つーか、二人のことは確かにめでてえことだけどよ? 俺達が全員、緊急招集をかけられたってことは、またうちの女王様から、普通の人間が考えるとは思えねえようなぶっ飛びまくった計画が投下されるんだろ?」


 そんな和やかな空気に、水を差すことを申し訳なさそうにしながら告げてきたのは、シンだ。
 そういえばだけど、何だかシンも顔付きが優しくなったよな。
 シンは一人で機械工学科のトップを任され、望とサトルがリーダーを務める建築科とともに、日々ナサニエルの修繕だったり、王国の改革を進めてくれてる。
 おかげで、ナサニエルの止まってた機能は半分近くが動くようになったし、王国は見違えるようだ。
 そのシンの言葉に出てきた、うちの女王様というのは、当たり前だけどゾーイのことであり、この緊急招集の発起人であるが、そのゾーイはまだこのコックピットに来てはいなかった。
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