147 / 257
第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
ダイヤルを回そうか
しおりを挟む
「どうなってんだよ!? これ、もうあと数時間で、夜明けるぞ!?」
「そんなことわかってるわよ!」
「二人とも、少し落ち着け! 今俺達が揉めてどうすんだ!」
真っ青な顔でシンが叫んで、それを咎めるようにソニアが怒鳴る。
またさらにそれをデルタが怒鳴り、途端に二人はバツの悪そうな顔をした。
談話室の中の空気は最悪だった……
「無線機はどうだ!?」
「ダメ……全然繋がらないわ」
右へ、左へ、レオは落ち着きのない様子で談話室を歩き回り、モカに何度目かわからない質問を投げかけるが……
モカは毎度の如く、浮かない表情で首を振るだけだった。
クレア達は日の出とともにに、ここを出発した。
そして今は、シンが言う通りにあと少しで太陽が上ろうとしてる時間。
どんなに遅くなっても、今頃とっくに帰って来てなきゃおかしい時間だ……
「もしかして……途中で、動物の群れに襲われたとか!?」
「いや、コタロウがついてて、それはねえだろな……」
真由の問いかけに望は考え込むように首を振るながら、そう答える。
そう、ここに来たばっかの時みたいに俺達だけでは、また動物に襲われて終わりだとは思うが、今回はコタロウ率いる兵団がついているんだ。
道中で何かあるとは考えにくいし……
あと、考えられるのは、ナサニエルで何かあったってことだけだけど……俺はそう頭を捻り、サトルに意見を聞こうとした時だった……
「サトル?」
「……え? あ、どうした?」
「いや、珍しくボーッとしてるから?」
「あ、ああ、クレア達が心配で……」
サトルは俺の声によって、たった今我に返ったような顔をした。
そして、俺から慌てて目を逸らした。
多分だけど、俺の疑っている視線に気付いたのかもしれない……
ほぼ確実にサトルは、俺達に何かを隠している……俺はそう思って、サトルに質問しようとしたその時……
「ゾーイ、聞いていいか」
「何、アランくん?」
タイミングの悪いことに、アランに先を越されてしまった。
けど、アランが質問したのはサトルではなくて、ゾーイだ。
まるで茶化すように、含み笑いで返事をしたゾーイ……
「お前、どこまで予想してるんだ?」
そんなゾーイに、アランはものすごく曖昧で、この場の誰もが知りたかった質問を投げかけた。
しかし、ゾーイはその質問に答えることはなく……
「無線機、貸して?」
「え? あ、うん……」
おもむろに立ち上がると、レオに無線機を貸すように告げた。
困惑した様子のレオは、促されるままに無線機を渡したのだけど……
「ゾーイ、何をしてるのよ!? 今番号を変えたら……!!」
「大丈夫。クレア達に持たせた無線機の番号は覚えてる」
モカは、焦ったようにゾーイに叫ぶ。
地上時代の人類の連絡手段である携帯電話というものを、シンは無線機に改造してくれた。
シン曰く、全ての通信機には番号があり、それぞれの番号を入力することで通信が可能になるのだとか。
それを利用して、携帯電話を無線機に改造して、クレア達に持たせたのだ。
俺達の無線機は、常に充電してクレア達に繋がるように番号を入力して、繋ぎっぱなしにしていたのだが……
ゾーイは無線機を受け取ると、誰も止める間もなく、その番号を消して、違う番号を入力し始めたのだ。
「え、じゃあ、これは何の番号?」
けど、俺達が知っているのは、クレア達の無線機の番号だけだ。
だから、モカはすごく困惑した様子でゾーイに問いかけたのだが……
「……ナサニエルの番号よ」
淡々と話すゾーイに空気が固まり、静まり返った。
そして、ゾーイの番号を打つ機械音だけが、その場に響く。
そんな状況で誰が最初に言葉を発するのか、俺達はそれぞれにお互いの様子を伺っていたのだが……
「あー、あー、聞こえてる?」
それよりも早くに、ゾーイが入力した番号が繋がってしまったようだった。
「聞こえてるんでしょ? 名前を呼ばなきゃ返事もしない?」
ゾーイはほぼほぼ喧嘩腰で、無線機に話しかける。
言いたいことは山ほどにある……どうして、ナサニエルの番号を把握しているのかとか……君には、聞きたいことが本当にいっぱいある。
「ゾーイ? やっぱり、急には……」
「答えな。モーリス・ニコルズ」
しびれを切らして、サトルがゾーイの呼びかけを遮ろうとした時……
そのゾーイが発した名前に、一瞬でサトルの顔が強ばった。
というより、その場の空気そのものにヒビが入ったような感覚だった。
今、ゾーイは、誰の名前を呼んだ?
「……お見事です。さすが、ゾーイ・エマーソン」
どうか答えないでくれと願ったが、それは簡単に打ち砕かれてしまったのだ。
「そんなことわかってるわよ!」
「二人とも、少し落ち着け! 今俺達が揉めてどうすんだ!」
真っ青な顔でシンが叫んで、それを咎めるようにソニアが怒鳴る。
またさらにそれをデルタが怒鳴り、途端に二人はバツの悪そうな顔をした。
談話室の中の空気は最悪だった……
「無線機はどうだ!?」
「ダメ……全然繋がらないわ」
右へ、左へ、レオは落ち着きのない様子で談話室を歩き回り、モカに何度目かわからない質問を投げかけるが……
モカは毎度の如く、浮かない表情で首を振るだけだった。
クレア達は日の出とともにに、ここを出発した。
そして今は、シンが言う通りにあと少しで太陽が上ろうとしてる時間。
どんなに遅くなっても、今頃とっくに帰って来てなきゃおかしい時間だ……
「もしかして……途中で、動物の群れに襲われたとか!?」
「いや、コタロウがついてて、それはねえだろな……」
真由の問いかけに望は考え込むように首を振るながら、そう答える。
そう、ここに来たばっかの時みたいに俺達だけでは、また動物に襲われて終わりだとは思うが、今回はコタロウ率いる兵団がついているんだ。
道中で何かあるとは考えにくいし……
あと、考えられるのは、ナサニエルで何かあったってことだけだけど……俺はそう頭を捻り、サトルに意見を聞こうとした時だった……
「サトル?」
「……え? あ、どうした?」
「いや、珍しくボーッとしてるから?」
「あ、ああ、クレア達が心配で……」
サトルは俺の声によって、たった今我に返ったような顔をした。
そして、俺から慌てて目を逸らした。
多分だけど、俺の疑っている視線に気付いたのかもしれない……
ほぼ確実にサトルは、俺達に何かを隠している……俺はそう思って、サトルに質問しようとしたその時……
「ゾーイ、聞いていいか」
「何、アランくん?」
タイミングの悪いことに、アランに先を越されてしまった。
けど、アランが質問したのはサトルではなくて、ゾーイだ。
まるで茶化すように、含み笑いで返事をしたゾーイ……
「お前、どこまで予想してるんだ?」
そんなゾーイに、アランはものすごく曖昧で、この場の誰もが知りたかった質問を投げかけた。
しかし、ゾーイはその質問に答えることはなく……
「無線機、貸して?」
「え? あ、うん……」
おもむろに立ち上がると、レオに無線機を貸すように告げた。
困惑した様子のレオは、促されるままに無線機を渡したのだけど……
「ゾーイ、何をしてるのよ!? 今番号を変えたら……!!」
「大丈夫。クレア達に持たせた無線機の番号は覚えてる」
モカは、焦ったようにゾーイに叫ぶ。
地上時代の人類の連絡手段である携帯電話というものを、シンは無線機に改造してくれた。
シン曰く、全ての通信機には番号があり、それぞれの番号を入力することで通信が可能になるのだとか。
それを利用して、携帯電話を無線機に改造して、クレア達に持たせたのだ。
俺達の無線機は、常に充電してクレア達に繋がるように番号を入力して、繋ぎっぱなしにしていたのだが……
ゾーイは無線機を受け取ると、誰も止める間もなく、その番号を消して、違う番号を入力し始めたのだ。
「え、じゃあ、これは何の番号?」
けど、俺達が知っているのは、クレア達の無線機の番号だけだ。
だから、モカはすごく困惑した様子でゾーイに問いかけたのだが……
「……ナサニエルの番号よ」
淡々と話すゾーイに空気が固まり、静まり返った。
そして、ゾーイの番号を打つ機械音だけが、その場に響く。
そんな状況で誰が最初に言葉を発するのか、俺達はそれぞれにお互いの様子を伺っていたのだが……
「あー、あー、聞こえてる?」
それよりも早くに、ゾーイが入力した番号が繋がってしまったようだった。
「聞こえてるんでしょ? 名前を呼ばなきゃ返事もしない?」
ゾーイはほぼほぼ喧嘩腰で、無線機に話しかける。
言いたいことは山ほどにある……どうして、ナサニエルの番号を把握しているのかとか……君には、聞きたいことが本当にいっぱいある。
「ゾーイ? やっぱり、急には……」
「答えな。モーリス・ニコルズ」
しびれを切らして、サトルがゾーイの呼びかけを遮ろうとした時……
そのゾーイが発した名前に、一瞬でサトルの顔が強ばった。
というより、その場の空気そのものにヒビが入ったような感覚だった。
今、ゾーイは、誰の名前を呼んだ?
「……お見事です。さすが、ゾーイ・エマーソン」
どうか答えないでくれと願ったが、それは簡単に打ち砕かれてしまったのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる