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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス

醤油買ってこい的なノリ

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「それで? 我らが女王様は、今度は何を思いついたんだ?」
「……シン、それ本人に言ってみろよ」
「言えるわけねえだろ? 言った瞬間に俺の明日は消え去るからな……」


 談話室に入った瞬間、シンとデルタのそんな会話が聞こえてきた。
 俺、望、真由は、あれからゾーイの指示通りにみんなの部屋を回って、緊急招集がかかったと知らせに行った。
 その知らせを聞いた時のみんなの顔はそれぞれだったけど、ほとんどが絶望に染まった顔で、俺も当事者なわけだけど気の毒になったものだ……
 集まった今だって、ハロルドとジェームズなんて、ほぼ寝てるしな。


「ほら、まだ夜は続くわよ~? 寝てるってわかった奴は、紐で括りつけて自動車で夜通し引きずり回すからね?」


 すると、そんな時にドアを開け放って君は恐ろしい言葉を淡々と告げて、登場したわけだ。
 そんなテンションで言うことかな!?
 それを聞くとそれぞれが、自分の頬を叩いたり、近くのやつを必死に起こしたりしていた。
 そりゃあね? だって、ゾーイなら本当にやりかねないからね……


「あれ、サトルとモーリスは?」


 そんな独裁国家万歳の真っ只中で、全員の前に立ったゾーイは、ここに姿が見えない人物達の存在に気付き、問う。


「あ、二人は部屋にいなかったんだ。捜したんだけど、見当たらなくて……」
「……オーケー」


 俺が理由を説明すると、少しゾーイは何かを考えてから、煮え切らない返事をしていた。
 何だ? 君はまた何を抱えてるんだ?


「それで、ゾーイ? 一体、こんな夜中に今度はどうしたの?」


 もう寝るところだったのだろう、普段とは違って髪を下ろしたクレアが疲れきったような、呆れた表情で、そうゾーイに問いかけた。
 けど、君は本当に俺達の度肝を抜く天才だと思う……悪い意味でね?


「単刀直入に言っちゃうと、明日からクレア、ハロルド、ジェームズ、モーリスのアーデルメンバーに、コタロウ率いる兵団とナサニエルに行ってほしいの」


 思ってもいなかった提案に、俺は呼吸をすることを忘れてしまった。


「ナサニエルって、お前らが乗ってきた宇宙船だったっけか?」
「いや、コタロウ……ゾーイ達は、別に宇宙人じゃないよ」
「そうよ。人を勝手に謎の生命体的な感じで言わないでくれる? もう一度言うけど、あたし達は空から落ちてきたの」


 固まっていた俺達を他所に、コタロウとレオとゾーイで話が進んでいく。
 というか、コタロウ? 俺達のことを何だと思ってたのさって……違う!


「……お前のことだ、考えなしにそんな無茶言わないだろ。訳を話せ」


 すると、いち早く意識を取り戻したアランが、ゾーイを見つめながら、静かにそう問いかけた。


「クレア。あのこと、話して」
「え? 話していいのっていうか、急にナサニエル行くって、それが原因?」
「まあまあ、とにかく話してよ」


 そんなアランの質問に対し、ゾーイはクレアに説明を頼んだ。
 その瞬間、話を振られたクレアは目を見開き驚いたような、全ての謎が解けたような、妙な顔をゾーイに向けた。
 待って? クレア、何か知ってるの?
 一気に注目の視線がクレアに移ったことで、ゾーイはクレアにあとは任せたと言わんばかりに笑顔で椅子に座る。
 それを見たクレアは、仕方ないなと言わんばかりに、ため息をついた。


「実は……ナサニエルのアーデルのメンバーと、二週間ぐらい前から連絡がつきにくい状況が続いてるの」


 クレアは緊張した面持ちで、その場に立ち上がって、俺達に話し始めた。
 気付けば、俺達がナサニエルを離れてレオ達に出会ってから、半年の月日が経っていた。
 ナサニエルを出てからずっと、毎日クレア達アーデルは、昼の十二時に、ナサニエルの方から連絡を入れてもらって報告をし合っていた。
 ずっと約束は守られてたと思っていたのだが、どうやらここ二週間ほど、昼の十二時に連絡が取れないということが多発するようになったのだとか……
 しかも、さらにひどい時には三日ほど経ってから忘れていたと、連絡がくることもあったようだ。


「えー? 何で、そんな気になること早く言ってくれなかったの?」
「私も知らなかったぞ! アーデルの実習班長として……」
「俺もだ。聞いてないぞ」
 

 ソニアの不満そうな声に続き、その場に立ち上がって抗議するハロルド。
 まあ、アランに綺麗に遮られていたわけだけどね?


「ごめんなさい、みんな! 話そうとは思ったんだけど……」
「クレアを責めないの。黙っとくように指示したのは、あたしなんだから」


 謝るクレアと、謝る気のないゾーイ。
 どうやら、この話は本当にこの二人以外は知らなかったようだけど……


「何で、このタイミングで話したの?」


 俺は恐る恐る、ゾーイを見据えてそう問いかけた。


「あー、直感? まあ、とにかく、明日出発だから! 準備してよ?」


 けど、ゾーイは言葉を濁して、俺の質問に答えてくれることはなかった。
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