128 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド
才色兼備な彼女の秘密
しおりを挟む
「え? え? なっ、何を!? ぞぞぞぞぞぞっ、ゾーイ! 君は、何をいきなり根も葉もないようなことを……はははははははははっ!」
「そういうのいいから。面倒だし、根と葉しかないから。早く話せ」
満月の光に照らされたハロルドは、首まで真っ赤で、大量の汗と、身振り手振りが大きくなるという事態。
そんなハロルドの動揺というよりも壊れっぷりは、見てるこっちが気の毒になってしまうほどだった。
けど、またゾーイはデリカシーとか相手を気遣うとか関係なく、ハロルドを真正面から叩きつけていった。
ごめん、ハロルド……何もできない俺を許せ。
「そもそも! そもそもだ! なぜ、この私が、クレアを……その、あー、クレアのことを、すすすすすっ、すう……恋焦がれているなんて!」
「好きは言えなくて、恋焦がれてるは言えるとか意味わからんわ。よっぽど、その方が恥ずかしいでしょうよ」
ごめん、ハロルド……俺もゾーイと同じことを思ったよ。
けど、もしそうは思っても、普通はゾーイみたいに言葉にしないけどね……
「あのね? クレア含めてナサニエル組は全員あんたの気持ち知ってるの。死ぬほどわかりやすいもん」
「……え?」
「あの、ゾーイ?」
「というか、下手すりゃ王国全体に筒抜けだから、まあ安心しろ。オーケー?」
「……え?」
「ゾーイ!? もうやめてあげて!」
俺の必死の叫びが届くはずもなく、ゾーイは残酷なことを話し続け、ハロルドはすっかり放心していた。
全部言った、全部言ったよ!? 本人にズバッと言っちゃったよ!?
あまりの容赦のなさにびっくりだよ!?
事実しかないけど、安心とオーケーの要素皆無だよ!?
そんな地獄のような俺達のやり取りがしばらく続いて、ハロルドは泣く泣く現実を無理矢理受け入れさせられた。
「逆に、あんなにあからさまな状態で隠してるつもりだったのが、驚きよ」
「そそっ、そうなのか……ああ……」
ゾーイのトドメの言葉に、ハロルドはしっかりと落ち込み、頭を抱えた。
「ハロルド! 大丈夫だぞ! 自分の気持ちを素直にさらけ出すのは、何も別に悪いことじゃないし!」
「昴くん、ありがとう……」
とてもじゃないけど、ハロルドがあまりに不憫で、我ながら必死にハロルドのことを慰めた。
「それで? どうして好きになったのだよ! 太眉くん? あ、これ久しぶりに言ったわ」
しかし、ゾーイはどこまでもゾーイだった。
ハロルドは観念したように、自分がクレアに恋をしたきっかけを、満天の夜空の下で話し始めたのだ。
そして、俺とゾーイは、ハロルドのことを真ん中にして、静かに聞いていた。
「実を言うと、私は最初の頃クレアをあまり良くは思っていなかったんだ」
「え? そうなのか?」
俺は思わず、ハロルドの言葉に聞き返していた。
クレアは誰がどう見ても美人だ。
ハロルドはてっきり、クレアのその美貌に一目惚れをしたのだろうと、俺は思っていたから、少し意外だったのだ。
「クレアは特待生で入学し、初めから目立っていただろう? それに優秀な彼女は当然のように同じくアーデルに入り、そのおかげで自然と注目を集める彼女のことをよく目にはしていたが……当時の私は、どうも気が強そうで近寄り難いクレアとは距離を測りかねていた」
「へー、ハロルドって苦手意識って感情あるんだ? 今日一番の驚きだわ」
「ゾーイ……あの、一体それはどういう意味だろうか……?」
「ハロルド? やめておけ、無駄に傷付くだけだぞ」
次から次へと出てくるハロルドからの本音は意外なことばかりで、ゾーイと同じように驚いていた……けど、ゾーイ?
さすがに正直が過ぎるってば……
そんなゾーイからの正直すぎて遠慮皆無な言葉に、ハロルドは困惑マックスでゾーイに問いかける。
けど、やんわりと俺はそれを止めた。
傷付く未来が見えまくってるここで止めなきゃ、俺達は仲間ではないと思う。
「ま、まあ、とにかく! すぐに、私はアーデルの実習班長として重要な責任を背負ったわけだ! そんな私が、差別は良くないと思ってな! 同時に三年間苦楽をともにするアーデルのメンバーのことを知らねばと思って、自らクレアに話しかけたんだ!」
珍しく、ハロルドは俺の言葉の意味を汲み取ったのか、すぐに話題転換することに成功していた。
きっと、今までのゾーイに関する安心と信頼の実績から学んだのだろう。
「すると、話してみてクレアのことを誤解していたのだと……私は思い知った。彼女は、長女で下に弟と妹が六人もいる大家族らしいんだが……」
「待て! し、下に六人も!?」
「わお、稀に見る大家族ね」
途中で遮って申し訳ないけど、さすがにこれは指摘しないわけはないだろう。
空島には子どもは何人までなんて法律は特にないが、基本的に空島では最大で子どもは三人までがセオリーだ。
六人は見たこともないし……さすがのゾーイも、そこそこ驚いているようだ。
「私も聞いた時は驚いた。そして、それに比例するかのように、生活もあまり裕福ではないようで……ご両親は、仕事を掛け持ちして朝から晩まで働き、必死に子ども達を育ててたそうだ。そんなご両親の背中を見て、クレアは自分が家族を守ると、必死に勉強して特待生の地位を手に入れたのだと」
それを聞いて俺は、今にも涙が溢れ出してしまいそうだった……
「そういうのいいから。面倒だし、根と葉しかないから。早く話せ」
満月の光に照らされたハロルドは、首まで真っ赤で、大量の汗と、身振り手振りが大きくなるという事態。
そんなハロルドの動揺というよりも壊れっぷりは、見てるこっちが気の毒になってしまうほどだった。
けど、またゾーイはデリカシーとか相手を気遣うとか関係なく、ハロルドを真正面から叩きつけていった。
ごめん、ハロルド……何もできない俺を許せ。
「そもそも! そもそもだ! なぜ、この私が、クレアを……その、あー、クレアのことを、すすすすすっ、すう……恋焦がれているなんて!」
「好きは言えなくて、恋焦がれてるは言えるとか意味わからんわ。よっぽど、その方が恥ずかしいでしょうよ」
ごめん、ハロルド……俺もゾーイと同じことを思ったよ。
けど、もしそうは思っても、普通はゾーイみたいに言葉にしないけどね……
「あのね? クレア含めてナサニエル組は全員あんたの気持ち知ってるの。死ぬほどわかりやすいもん」
「……え?」
「あの、ゾーイ?」
「というか、下手すりゃ王国全体に筒抜けだから、まあ安心しろ。オーケー?」
「……え?」
「ゾーイ!? もうやめてあげて!」
俺の必死の叫びが届くはずもなく、ゾーイは残酷なことを話し続け、ハロルドはすっかり放心していた。
全部言った、全部言ったよ!? 本人にズバッと言っちゃったよ!?
あまりの容赦のなさにびっくりだよ!?
事実しかないけど、安心とオーケーの要素皆無だよ!?
そんな地獄のような俺達のやり取りがしばらく続いて、ハロルドは泣く泣く現実を無理矢理受け入れさせられた。
「逆に、あんなにあからさまな状態で隠してるつもりだったのが、驚きよ」
「そそっ、そうなのか……ああ……」
ゾーイのトドメの言葉に、ハロルドはしっかりと落ち込み、頭を抱えた。
「ハロルド! 大丈夫だぞ! 自分の気持ちを素直にさらけ出すのは、何も別に悪いことじゃないし!」
「昴くん、ありがとう……」
とてもじゃないけど、ハロルドがあまりに不憫で、我ながら必死にハロルドのことを慰めた。
「それで? どうして好きになったのだよ! 太眉くん? あ、これ久しぶりに言ったわ」
しかし、ゾーイはどこまでもゾーイだった。
ハロルドは観念したように、自分がクレアに恋をしたきっかけを、満天の夜空の下で話し始めたのだ。
そして、俺とゾーイは、ハロルドのことを真ん中にして、静かに聞いていた。
「実を言うと、私は最初の頃クレアをあまり良くは思っていなかったんだ」
「え? そうなのか?」
俺は思わず、ハロルドの言葉に聞き返していた。
クレアは誰がどう見ても美人だ。
ハロルドはてっきり、クレアのその美貌に一目惚れをしたのだろうと、俺は思っていたから、少し意外だったのだ。
「クレアは特待生で入学し、初めから目立っていただろう? それに優秀な彼女は当然のように同じくアーデルに入り、そのおかげで自然と注目を集める彼女のことをよく目にはしていたが……当時の私は、どうも気が強そうで近寄り難いクレアとは距離を測りかねていた」
「へー、ハロルドって苦手意識って感情あるんだ? 今日一番の驚きだわ」
「ゾーイ……あの、一体それはどういう意味だろうか……?」
「ハロルド? やめておけ、無駄に傷付くだけだぞ」
次から次へと出てくるハロルドからの本音は意外なことばかりで、ゾーイと同じように驚いていた……けど、ゾーイ?
さすがに正直が過ぎるってば……
そんなゾーイからの正直すぎて遠慮皆無な言葉に、ハロルドは困惑マックスでゾーイに問いかける。
けど、やんわりと俺はそれを止めた。
傷付く未来が見えまくってるここで止めなきゃ、俺達は仲間ではないと思う。
「ま、まあ、とにかく! すぐに、私はアーデルの実習班長として重要な責任を背負ったわけだ! そんな私が、差別は良くないと思ってな! 同時に三年間苦楽をともにするアーデルのメンバーのことを知らねばと思って、自らクレアに話しかけたんだ!」
珍しく、ハロルドは俺の言葉の意味を汲み取ったのか、すぐに話題転換することに成功していた。
きっと、今までのゾーイに関する安心と信頼の実績から学んだのだろう。
「すると、話してみてクレアのことを誤解していたのだと……私は思い知った。彼女は、長女で下に弟と妹が六人もいる大家族らしいんだが……」
「待て! し、下に六人も!?」
「わお、稀に見る大家族ね」
途中で遮って申し訳ないけど、さすがにこれは指摘しないわけはないだろう。
空島には子どもは何人までなんて法律は特にないが、基本的に空島では最大で子どもは三人までがセオリーだ。
六人は見たこともないし……さすがのゾーイも、そこそこ驚いているようだ。
「私も聞いた時は驚いた。そして、それに比例するかのように、生活もあまり裕福ではないようで……ご両親は、仕事を掛け持ちして朝から晩まで働き、必死に子ども達を育ててたそうだ。そんなご両親の背中を見て、クレアは自分が家族を守ると、必死に勉強して特待生の地位を手に入れたのだと」
それを聞いて俺は、今にも涙が溢れ出してしまいそうだった……
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる