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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

トップファイブの笑い話

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「あれ? もしかしてあたしの声、聞こえなかった? これ、な~に~?」


 ゾーイの右手には、小型の黒い拳銃が握られている。


「は? え、拳銃? なっ、何で!?」
「ゾーイ!? 待って、はああ!?」


 気付いたソニアとデルタが、揃って悲鳴のような声を上げる。
 それがきっかけとなったのか、その場全体が一気に騒がしくなる。
 そして、処刑台前はパニックに陥って犬族、猫族、人間達が、四方八方に走り回って逃げ惑う。
 ゾーイと、あの家に行った俺、望、真由、シン、レオ、モカ以外は……


「す、昴? え、どうし……」


 何の反応も示さない俺を不審に思ってサトルが声をかけようとした時……
 ゾーイによって、その拳銃は空に向かって引き金を引かれた。


「ねえ、誰か質問に答えてよ? 無視は良くないと思うよ?」


 そして、無表情で言い放ったその時のゾーイのオーラは、とても言葉で表現できないものだった。
 空気を割って抜けてくような……
 一瞬のことだったが、拳銃の発砲音は辺りに響き渡って余韻を残す。
 しばらくの間は、その場は沈黙に包まれていたが……


「おっ、お前、それ……まさか、勝手に俺の家に入ったのか!?」


 正直、俺は笑いをこらえるのに必死だったんだよね。
 その発言の本人は……さっきゾーイに論破されたばかりのフウタは、自分の発言に気付いた途端に、面白いほど顔が真っ青になっていった。
 他の重症を負わされた五人も、瞬く間にどんどん顔色が悪くなり、小声でしまった……と、聞こえてくる有様。
 一気に処刑台の前は、ザワザワと騒がしくなる。


「あれあれ? おっかしいな? あたし、一言も君の家からこの拳銃を持ってきたなんて言ってないけど?」


 そして、ゾーイは満面の笑みだった。


「本当に俺、ゾーイだけは敵に回したくねえよ……」
「まさか、発砲するとはな……本当に無茶苦茶なんだよな」
「けど、そのおかげで動揺して、自分で言っちゃったんじゃない?」


 俺の隣ではシンが震えながら、望は呆れながら、そして真由はおかしそうに笑って返している。


「計算か天然か……とりあえずは、結果オーライだよな?」


 そして、最後に俺が肩をすくめて軽く言い放ったのだった。
 レオとモカとも、苦笑いでアイコンタクトをとる。
 そう、あの時俺達が最後の家の地下で見つけたのは、五丁の拳銃だった。
 あの時、レオとモカが嗅ぎ分けたのは火薬の臭いだ。
 この王国には、大量の拳銃が眠ってる武器庫がある。
 けど、武器庫は厳重に鍵がかけられており、持ち出しは禁止。
 武器庫の鍵はリーダーのレオがネックレスにして、肌身離さず持っている。


 レオとモカの話では、三年前に初めて拳銃が発見されたのだそうだ。
 けど、拳銃の脅威が判明すると、満場一致で封印しようという結論にいたったのだという。
 大きな理由は、ここら一体を縄張りだと称する荒くれ集団に、拳銃の存在を絶対に知られないため。
 そこで、できる限りの犬族と猫族を集めて拳銃を探し出し、それぞれの国で武器庫を作って頑丈に封印。
 ゾーイから聞いた話ではかつての日本は銃を持たない国だったのだが、警察や裏社会、猟をするための猟銃なんかはあったとのこと。
 そんな話をしたのがつい先日で、そのゾーイの話をもとに、改めて拳銃の大捜索を行ったことがあり、その時に何年ぶりかに武器庫を開けたのだそうで……
 きっと、その時にこいつらはこっそりと忍び込んで、拳銃を盗んだのだろう。


「本当は適当な理由でじわじわ攻めようと思っていたんだけど……まさか、暴露してくれるとは思わんかったよ? あたしの人生でのトップファイブぐらいにはおかしくてたまらない瞬間だったわ。ありがとうね、天才達」


 本当にゾーイのワードセンスとかその他もろもろって、真似しようとしてもできないだろな……
 というか、すっごくいい笑顔だよ。


「た、たとえ……それが事実だからって何だと言うんだ!」


 けど、フウタは拳銃に関しては開き直ったのか、食い下がってきた。
 そう、確かにそこが疑問でもあった。
 この拳銃と、アランのことではどこをどうやったら結びつくのかと……
 そんなことを考えて、ゾーイに視線を移すと……


「あー、その答えは……早く下りて来て説明して!」


 急にゾーイは上を向いて、そんなことを言い出した。
 どういうこと? 誰に言ってるのかと俺は上を見上げるが、そこには葉っぱが生い茂った木しかないわけで……


「ねえってば! これだけお膳立てしてあげたんだから、自分で完結しろ!」


 それでもゾーイは、上を向いて叫ぶことをやめなかった。
 その時だった、真上の木から……










 葉っぱや花を体中にまとったアランが現れたのだ。
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