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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
喧嘩の強さは折り紙つき
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血相を変えて飛び込んで来たデルタとソニア。
その言葉を聞くや否や、すぐに俺達は外に飛び出した。
もう夜だったから辺りはすっかり闇に包まれていたけど、目的地は松明の火で明るかったこともあり、皮肉にもすぐに俺達はたどり着くことができた。
「レオ! コタロウ!」
「あ、みんな……」
「まあ、来ちゃうよな……」
既にかなりの人集りというか、犬猫集りがそこにはできていた。
その中からすぐに知っている後ろ姿を見つけて、俺は名前を呼んだ。
振り返ったレオとコタロウは、困ったような、気まずそうな、暗い表情を浮かべていた。
その二人の表情で、絶対にいい展開が待っていないことだけはわかった。
「真っ暗闇でご苦労さま。それで、今度は何があったの?」
まあ、そんなことゾーイにはまったく関係ないみたいだけど……
「はあ……お前のことを見てると、何か気が抜けるんだよな」
「え? ダメじゃんよ。もっと緊張感を持っていかないと」
「それ、ゾーイが言うんだね……」
力が抜けたようにため息をつくコタロウに、ゾーイは謎の喝を入れる。
その後のレオの言う通り、ゾーイにだけは緊張感を持とうって言葉は言われたくないよね……
「まあ、いいや……お前ら、今回のことどこまで聞いたんだ?」
「あ、それが……アランが何か……」
気を取り直したように、すぐにコタロウは真剣な顔になり、そう問う。
すると、その質問にサトルは恐る恐る答えた。
「まあ、簡単に言えば、六対一でやり合ったらしいな」
「は……? 六対一で!?」
耳を疑った数字に、予想以上に大声が出てしまった俺だけど、みんなも途端にザワつき始める。
「ああ。被害状況は俺も少ししか見てねえからあれだけど、あれは骨の二、三本は折れてるだろうな」
「ほ、骨って……」
「コタロウ! アランは、アランは今はどこにいるんだ!?」
すると、珍しいことにサトルの声を遮り、真っ青な顔でコタロウに詰め寄ったのはシンだった。
「は?」
「医務室か!? 今は治療中なのか!?」
「待て、話を聞けって!」
今まで見たことないシンの慌てふためく姿に、俺達を始めとしてコタロウは若干勢いに押されていた。
けれど、その時のシンは本当に必死だったと思う。
「勘違いするな! 怪我したのは六人の犬族と猫族で、アランは無事だ!」
「そうか、無事……え?」
「僕も確認したけど、アランはかすり傷ぐらいだったよ」
コタロウの、ほとんど叫ぶような言葉にシンは止まった。
そして、それに続くレオの苦笑い交じりの言葉に、さらにその場の空気全体が止まることになった。
え、アランがかすり傷ってことは……
「つまり、アランが六人の骨をご丁寧に二、三本ずつバキバキ折ったってことでしょ?」
「他にもっと、言い方ねえのかよ……」
ゾーイがサラリと、衝撃的な事実をその場で告げた。
まあ、すぐさま、そのゾーイの言葉にはコタロウから指摘が入ったけど……
バキバキって……うん。
そのあっけらかんとした物言いに、コタロウとレオは苦笑いで頷いた。
まあ、ナサニエルの入学式の伝説的な事件もあったし、強いんだろうなとは思ってたけど……
六対一で勝ったってことだよな?
「じゃ、じゃあ、アランは……」
「……そこだ」
そして、不安そうにしてるシンからの質問に、コタロウは気まずそうに答えて指を差す。
そこには、三人の犬族と猫族の兵士に取り押さえられているアランがいた。
「アラン! どうして!? 何で、そんな骨を折るなんて……自分がしたことわかってるの!?」
「く、クレア! 一旦、深呼吸だ!」
アランを見つけるや否や、クレアは大激怒で声を荒らげる。
それを、ハロルドが宥めていた。
けど、クレアが声を荒らげてしまうこともしょうがないと思う、だって……
「全員、今すぐ檻にぶち込め!」
「野放しにしてたら、次は我が身よ!」
「人間はやっぱり、野蛮なんだ!」
ここに着いた時から薄らと聞こえてはきていた、俺達への批判。
けど、アランの姿を確認すると、その批判ははっきりとした声になり、犬族と猫族は俺達のことを取り囲んだ。
そして、四方八方から、俺達への批判を飛ばしている。
あまりの批判の嵐に、俺は望や真由を背に守るぐらいしかできず、どうするかとサトルと目を合わせた時だ……
「お、おい! 待てコラアアアア!」
「奴が逃げた! 捕まえろ!」
アランは取り押さえていた兵士三人を振り切って、逃走したのだ。
その言葉を聞くや否や、すぐに俺達は外に飛び出した。
もう夜だったから辺りはすっかり闇に包まれていたけど、目的地は松明の火で明るかったこともあり、皮肉にもすぐに俺達はたどり着くことができた。
「レオ! コタロウ!」
「あ、みんな……」
「まあ、来ちゃうよな……」
既にかなりの人集りというか、犬猫集りがそこにはできていた。
その中からすぐに知っている後ろ姿を見つけて、俺は名前を呼んだ。
振り返ったレオとコタロウは、困ったような、気まずそうな、暗い表情を浮かべていた。
その二人の表情で、絶対にいい展開が待っていないことだけはわかった。
「真っ暗闇でご苦労さま。それで、今度は何があったの?」
まあ、そんなことゾーイにはまったく関係ないみたいだけど……
「はあ……お前のことを見てると、何か気が抜けるんだよな」
「え? ダメじゃんよ。もっと緊張感を持っていかないと」
「それ、ゾーイが言うんだね……」
力が抜けたようにため息をつくコタロウに、ゾーイは謎の喝を入れる。
その後のレオの言う通り、ゾーイにだけは緊張感を持とうって言葉は言われたくないよね……
「まあ、いいや……お前ら、今回のことどこまで聞いたんだ?」
「あ、それが……アランが何か……」
気を取り直したように、すぐにコタロウは真剣な顔になり、そう問う。
すると、その質問にサトルは恐る恐る答えた。
「まあ、簡単に言えば、六対一でやり合ったらしいな」
「は……? 六対一で!?」
耳を疑った数字に、予想以上に大声が出てしまった俺だけど、みんなも途端にザワつき始める。
「ああ。被害状況は俺も少ししか見てねえからあれだけど、あれは骨の二、三本は折れてるだろうな」
「ほ、骨って……」
「コタロウ! アランは、アランは今はどこにいるんだ!?」
すると、珍しいことにサトルの声を遮り、真っ青な顔でコタロウに詰め寄ったのはシンだった。
「は?」
「医務室か!? 今は治療中なのか!?」
「待て、話を聞けって!」
今まで見たことないシンの慌てふためく姿に、俺達を始めとしてコタロウは若干勢いに押されていた。
けれど、その時のシンは本当に必死だったと思う。
「勘違いするな! 怪我したのは六人の犬族と猫族で、アランは無事だ!」
「そうか、無事……え?」
「僕も確認したけど、アランはかすり傷ぐらいだったよ」
コタロウの、ほとんど叫ぶような言葉にシンは止まった。
そして、それに続くレオの苦笑い交じりの言葉に、さらにその場の空気全体が止まることになった。
え、アランがかすり傷ってことは……
「つまり、アランが六人の骨をご丁寧に二、三本ずつバキバキ折ったってことでしょ?」
「他にもっと、言い方ねえのかよ……」
ゾーイがサラリと、衝撃的な事実をその場で告げた。
まあ、すぐさま、そのゾーイの言葉にはコタロウから指摘が入ったけど……
バキバキって……うん。
そのあっけらかんとした物言いに、コタロウとレオは苦笑いで頷いた。
まあ、ナサニエルの入学式の伝説的な事件もあったし、強いんだろうなとは思ってたけど……
六対一で勝ったってことだよな?
「じゃ、じゃあ、アランは……」
「……そこだ」
そして、不安そうにしてるシンからの質問に、コタロウは気まずそうに答えて指を差す。
そこには、三人の犬族と猫族の兵士に取り押さえられているアランがいた。
「アラン! どうして!? 何で、そんな骨を折るなんて……自分がしたことわかってるの!?」
「く、クレア! 一旦、深呼吸だ!」
アランを見つけるや否や、クレアは大激怒で声を荒らげる。
それを、ハロルドが宥めていた。
けど、クレアが声を荒らげてしまうこともしょうがないと思う、だって……
「全員、今すぐ檻にぶち込め!」
「野放しにしてたら、次は我が身よ!」
「人間はやっぱり、野蛮なんだ!」
ここに着いた時から薄らと聞こえてはきていた、俺達への批判。
けど、アランの姿を確認すると、その批判ははっきりとした声になり、犬族と猫族は俺達のことを取り囲んだ。
そして、四方八方から、俺達への批判を飛ばしている。
あまりの批判の嵐に、俺は望や真由を背に守るぐらいしかできず、どうするかとサトルと目を合わせた時だ……
「お、おい! 待てコラアアアア!」
「奴が逃げた! 捕まえろ!」
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