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第二章 未知の世界への移住

第一印象は詐欺ってこと

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 俺達はナサニエルに残るアーデルのメンバーに見送られて、出発した。
 俺は、再び外に出たのだ。
 初めて地上に下り立った面々は、ありのままの自然や動物にテンション上がりまくりだった。
 隣を歩く真由も目に映る初めてばかりのものに、目を輝かせている。
 一方で、前の探索の時に俺と一緒に外に出た、サトル、ハロルド、アラン、望は落ち着かない様子だ。
 あのゾーイでさえ、視線が左右に動き回っている。
 落ち着かないのは俺もだけど……
 きっと、俺と同じように元代表組は、森であの日に出くわしたライオンなどの猛獣を警戒しているのだろう。
 とりあえず、俺達は森を抜けてこの前の探索の時に見つけた荒廃都市に行くことになった。
 そこに向かうついでに、今晩の食料や水を、資源豊富な森から集めていく。


「ほらほら、珍しいからってそこら中の緑に見惚れていないで、さっさと食料集めてよ。食べなきゃ死ぬよ~?」


 ゾーイの言うことは若干どころかほぼ脅しだけど、その明らかにダルいというような口調のせいで、どうも緊張感に欠けるものがある。
 まあ、結果それぞれが動き出しているし、それでもいいんだろうけど……
 俺も前後左右、あらゆる場所を自分の食料確保のために探す。
 すると、行った先にはソニアがいた。


「ソニア!」
「あ、昴じゃん」
「何か見つけたの?」
「いやまあ、見つけたには見つけたんだけど……」
「あれ、どうかした?」


 ソニアは、俺の質問に無言で足元を指差した。
 そこを覗き込むと、何とも色鮮やかなキノコが軒並み揃っていた。


「……状況は理解したよ」
「そうでしょ!? ねえ、これのことどう思う!?」
「どうって……うん」
「食べられると思う!?」
「別に平気じゃないの?」
「え……うわっ!?!?」
「ぞ、ゾーイ……脅かさないでよ……」


 本当にいつの間にそこにいたのか、俺とソニアの真後ろにゾーイはいた。
 気配とか、足音とか、全然気付かなかったんだけど……
 思わず、叫びながら飛び上がった俺は悪くないはずだ。
 隣のソニアだって、心臓の辺りを手で抑えながら落ち着こうとしているしな。


「とにかく、それ根こそぎ収穫!」
「本気!?」
「大丈夫だってば! ほら、そこのキノコとか食べかけの状態でしょ? 動物か虫が食べたんだよ」
「え、だから?」
「虫が食べてるなら、食べられるだろよって話」
「そんな無茶苦茶な……」


 ソニアの鋭いツッコミや俺の呆れを通り越して怯えた感想もスルーして、ゾーイはさっさと色鮮やかなキノコを次々と収穫していく。
 それはまた効率よくテキパキと。
 宣言通りに根こそぎキノコを収穫し終わった頃に、少し先の方からサトルが集合をかける声がして、俺達は声のした方に向かった。
 その道すがらも、ゾーイは次々と本当に大丈夫なのかと問いたくなるような木の実や果物を収穫していく。
 そんな止まらないゾーイを、俺とソニアで止められるわけもなかった。
 集合して、そのゾーイが収穫した食料を見て、望にキレられて、アランに睨まれて、問いただすハロルドの口にその色鮮やかなキノコを突っ込む未来まで、あと五分というところだ。


 ***


「人間と同じで、何事も見た目だけで判断しちゃいけないのよ」
「それはゾーイでわかってたけど……」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ……」


 ゾーイがハロルドの口に色鮮やかなキノコを突っ込んだ次の瞬間に、その場でハロルドは倒れた。
 けど、すぐに起き上がり、ハロルドが「美味いぞ!」と、ほぼ悲鳴のような声を上げた。
 そんな一連の流れがあった上で、隣でゾーイは得意げにそう言った。


「さあさあ、諸君! 元気よく、今日の寝床を探そうではないか!」
「何が元気だ!? さっきまで、泡吹いて倒れてただろうが!」
「あ、泡など吹いてはいないぞ!?」


 そんな会話をしながら俺とゾーイの前を歩くのは、すっかり元気で上り調子のハロルドとそれを煙たそうに距離をとる望の二人だ。
 俺達は、荒廃都市にやって来た。
 そこら中に散らばっている瓦礫やガラスを避けながら、進んで行く。
 あれから、何人かのグループに別れて今日の寝る場所を探そうということになり、俺、ハロルド、望、ゾーイの四人で探しているというわけだ。
 そうこうしている間に、俺達は大きなショッピングモール? のような場所に入ることになった。


「うわああああ!?!?」
「ハロルド!?」
「何だ、何があった!?」


 すると、突然ハロルドが叫び、それぞれで中の様子を伺っていた俺達は、すぐさまハロルドのいる場所に集合した。


「誰だ……誰だそこにいるのは!?」
「は? 人がいたのか!?」
「俺達以外に人がいるなんて……」
「けど、確かにそこに!」
「一応聞くけど、その人影ってこのマネキンのことじゃないわよね?」


 ゾーイがその場でただ一人冷静にそう指摘して、マネキンを蹴り飛ばす。
 途端にハロルドの目は尋常じゃないほどに泳ぎまくっていた。


「クソほど時間の無駄だ!! 空島にもマネキンぐらいあるだろが!!」
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