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第一章 物語は落下して始まった
全館放送やってみた
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「あ、他の生徒達にアナウンスなどは行わないのか?」
「バカか! そんなもんしたら、途端にパニックだろうが!」
「心苦しいけど……今は目の前のことに集中しましょう」
「そ、そうだな! 心得た!」
ハロルドの提案に望が噛み付くように言い返した。
言い方ってものがあるだろ……
それをフォローするかのようにクレアは控えめにハロルドに告げる。
まあ、今の状況で全生徒に地上にナサニエルは不時着しますなんて知らせようものなら、暴動が起きるかもな。
そうなったら、上手くいくものも失敗しそうだ。
「あ、待って! 明確なことは伏せておくとしても、揺れるから掴まっておいてくらいの注意はアナウンスしてもバチは当たらないんじゃないかな?」
「一理ある! 着陸は成功だけど、怪我人が大量発生なんてことになったら、意味ないしね~?」
しかし、サトルとゾーイは他の生徒へのアナウンスの有無に待ったをかける。
確かに、それはもっともだ。
地上に着陸することで、ナサニエルがどうなってしまうのかなんて、この場の誰もわからない。
どうやら、それぞれみんなも二人の意見で思うことはあったみたいだ。
少しズルいけど、注意を促す内容のアナウンスは流そうということになった。
「そしたら、アナウンスはハロルドが担当ね?」
「え、え、ええ!?」
「あれ、不満だった? それなら……」
「待て待て、待ってくれ! やはりだ!この状況で他の生徒達の不安を煽ることなく安心感を与える。それができるのはこの中では私しか……!!」
ゾーイが迷わずハロルドを指名したことで、一番驚いたのは本人だ。
しかし、ハロルドはすぐさま調子を取り戻したと思えば、それはそれは饒舌に語り始める。
「お前の演説なんか興味ねえよ!!」
「時間の無駄だ。三秒以内にアナウンスをしろ」
そして、すぐに望とアランから言葉の鉄拳が落ちる。
『全生徒に告ぐ! しばらく、激しい揺れが続くと思うが、焦らずに落ち着いて行動してもらいたい! 我々アーデルは、既に原因を突き止めているということも合わせて報告する!』
大慌てでハロルドはナサニエル全体に館内放送を流した。
「よし、上出来! これで後で文句言われても事前に言ったから聞いてないのが悪いって逃げられるわね?」
待って、ゾーイそれが目的なの?
そんなことをわざわざ質問するのも面倒だと思ったのだろう、誰もゾーイに声をかける人間はいなかった。
視線は全員がゾーイだったけど。
「……着陸できる場所を探すか」
「そのためにはまず、ある程度地上の様子とかを見たいよね……」
「シエロとの切り離し作業の時に使うカメラがあります。それを最大限下向きにして使用しましょう」
アランの気だるそうな提案をサトルが拾って、モーリスが答える。
すると、コックピットの巨大なスクリーンには地上の様子が映し出される。
けど、その光景は少し遠くてよくは見えなかったけど、お世辞にも綺麗とは言えないものだった。
「さてと、どこに着陸する?」
「空島を着陸させるには、とりあえず広くて周りに何もない場所だろうね」
「どこにあるんだ? 見渡す限りガラクタの山にしか見えないが」
ゾーイとサトルの言葉に、アランが嫌味で返す。
けど、アランの言う通り巨大なスクリーンに映し出されるその光景は、すっかり荒れ果てていて瓦礫の山。
空島を着陸させられるような広くて周りに何もない場所なんて……
「待て、あれは何だ!? 水があんなに大量に……!!」
すると、ハロルドがオーバーなリアクション付きで叫ぶように声を上げた。
「……あれは多分、海ですね」
「それぐらいわかれ。古い映画で見たことぐらいあるだろうが」
「あ、ねえ! その海にナサニエルを着水させるのはどうかしら!?」
モーリスが冷静に答え、あいかわらず望は呆れたように吐き捨てる。
けど、その後でクレアが閃いたとばかりに声を上げ、全員に視線を送る。
え、待ってくれ、海に着水って……
「バカか! そんなもんしたら、途端にパニックだろうが!」
「心苦しいけど……今は目の前のことに集中しましょう」
「そ、そうだな! 心得た!」
ハロルドの提案に望が噛み付くように言い返した。
言い方ってものがあるだろ……
それをフォローするかのようにクレアは控えめにハロルドに告げる。
まあ、今の状況で全生徒に地上にナサニエルは不時着しますなんて知らせようものなら、暴動が起きるかもな。
そうなったら、上手くいくものも失敗しそうだ。
「あ、待って! 明確なことは伏せておくとしても、揺れるから掴まっておいてくらいの注意はアナウンスしてもバチは当たらないんじゃないかな?」
「一理ある! 着陸は成功だけど、怪我人が大量発生なんてことになったら、意味ないしね~?」
しかし、サトルとゾーイは他の生徒へのアナウンスの有無に待ったをかける。
確かに、それはもっともだ。
地上に着陸することで、ナサニエルがどうなってしまうのかなんて、この場の誰もわからない。
どうやら、それぞれみんなも二人の意見で思うことはあったみたいだ。
少しズルいけど、注意を促す内容のアナウンスは流そうということになった。
「そしたら、アナウンスはハロルドが担当ね?」
「え、え、ええ!?」
「あれ、不満だった? それなら……」
「待て待て、待ってくれ! やはりだ!この状況で他の生徒達の不安を煽ることなく安心感を与える。それができるのはこの中では私しか……!!」
ゾーイが迷わずハロルドを指名したことで、一番驚いたのは本人だ。
しかし、ハロルドはすぐさま調子を取り戻したと思えば、それはそれは饒舌に語り始める。
「お前の演説なんか興味ねえよ!!」
「時間の無駄だ。三秒以内にアナウンスをしろ」
そして、すぐに望とアランから言葉の鉄拳が落ちる。
『全生徒に告ぐ! しばらく、激しい揺れが続くと思うが、焦らずに落ち着いて行動してもらいたい! 我々アーデルは、既に原因を突き止めているということも合わせて報告する!』
大慌てでハロルドはナサニエル全体に館内放送を流した。
「よし、上出来! これで後で文句言われても事前に言ったから聞いてないのが悪いって逃げられるわね?」
待って、ゾーイそれが目的なの?
そんなことをわざわざ質問するのも面倒だと思ったのだろう、誰もゾーイに声をかける人間はいなかった。
視線は全員がゾーイだったけど。
「……着陸できる場所を探すか」
「そのためにはまず、ある程度地上の様子とかを見たいよね……」
「シエロとの切り離し作業の時に使うカメラがあります。それを最大限下向きにして使用しましょう」
アランの気だるそうな提案をサトルが拾って、モーリスが答える。
すると、コックピットの巨大なスクリーンには地上の様子が映し出される。
けど、その光景は少し遠くてよくは見えなかったけど、お世辞にも綺麗とは言えないものだった。
「さてと、どこに着陸する?」
「空島を着陸させるには、とりあえず広くて周りに何もない場所だろうね」
「どこにあるんだ? 見渡す限りガラクタの山にしか見えないが」
ゾーイとサトルの言葉に、アランが嫌味で返す。
けど、アランの言う通り巨大なスクリーンに映し出されるその光景は、すっかり荒れ果てていて瓦礫の山。
空島を着陸させられるような広くて周りに何もない場所なんて……
「待て、あれは何だ!? 水があんなに大量に……!!」
すると、ハロルドがオーバーなリアクション付きで叫ぶように声を上げた。
「……あれは多分、海ですね」
「それぐらいわかれ。古い映画で見たことぐらいあるだろうが」
「あ、ねえ! その海にナサニエルを着水させるのはどうかしら!?」
モーリスが冷静に答え、あいかわらず望は呆れたように吐き捨てる。
けど、その後でクレアが閃いたとばかりに声を上げ、全員に視線を送る。
え、待ってくれ、海に着水って……
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