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第一章 物語は落下して始まった
事件勃発というやつです
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「大丈夫? 立てる?」
「え⁉︎ あ、こ、れは……何で……」
「気持ちはわかるよ、僕もさっき腰が抜けて泣き叫んだから」
「あ、れは……あの、本物の……」
「うん、正真正銘、本物の血液であの男はもう死んでるんだ」
そう言って、まだ震えてるその手を伸ばして立たせてくれた目の前の人物もアーデルの一員のようだ。
死体なんて初めて見た俺は、ガタガタと膝の震えが止まらなかった。
あ、まあ、死体を見ることなんて普通に生きてたらないけど……
どうしてそんなに自分が情けないのかの理由は、ゾーイが原因だった。
ゾーイは死体の横に座り込んでじっくりと何かを観察していた。
死体は作業着を着ていて、仰向けになっているから顔が丸出しだった。
あー、絶対に夢に出てくるだろこれ。
すると、意を決したようにゾーイの肩を掴むアーデルの制服を着た人物。
「申し訳ないが、それ以上の詮索は遠慮してもらえるかな?」
「……それって、あたしのこと?」
「君の目を見て話しているのだが?」
「へー、何の権限があるわけ?」
「それは……」
「同じナサニエルの生徒で偶然コックピットを見に来て、遺体を発見したって状況下は発見したのが早いか遅いかはあれど一緒よね? まさかだけど、自分達はアーデルだからだとか、お花畑なことを言うつもりなら笑い飛ばすけど?」
ゾーイは自分の肩を掴んだその人物と向き合って言葉を遮ったかと思えば、そう言い放った。
すると、その人物は図星をつかれたようで言葉を詰まらせてしまう。
何とも言えない気まずい空気だった。
「……クレア? これ以上、部外者を巻き込むのは危険だと言いましたよね?」
「え、ええ……そうなんだけど……」
「その少女が私を投げ飛ばして無理矢理に突破したんだ! クレアに非があるわけではないぞ、モーリス‼︎」
そう叫びながらこっちに向かって猛スピードで下りて来たのはハロルド・早乙女、サトル、望の三人だ。
サトルと望は死体に気が付くとそれぞれの反応を示した、サトルは短く声を発して目を背け、望は目を見開いていた。
モーリス……いつもアーデルで次席の生徒の名前がモーリス・ニコルズだった気がするな。
その人物は左右対称に規律良く整えられた黒髪、眼鏡の奥の少し細い目は冷たさを感じさせるような人物だった。
「そうよ? そこにいる太眉くんの言う通りだから、クレアは悪くないわ」
「ふ、太眉⁉︎ 私にはハロルド・早乙女という立派な名前がある‼︎」
「あー、はいはい! それより問題はこの遺体よね……この男は一見すると清掃員って感じだけど、どこにも掃除用具は落ちてないし、事件に巻き込まれた感じには見えないのよね~? 何より、まだ口から仄かに香るこの匂いは……」
「ご名答。アーモンド臭よ」
ゾーイの見事な推理に感心してる俺の横を通り過ぎて、ゾーイの推理に付け加えるような発言をした人物。
それに続くように五人の男女がゾーイの前に立ちはだかっていた。
何より、揃いも揃って雰囲気がどこか怖いし、ガラが悪いというか……
「苦しんで首元を掻きむしった切り傷が残ってるし、この男の死因は青酸カリで間違いないわ」
「詳しいんだね? 医療科だったり?」
「ううん、育った環境上ってのかな? こういうのには詳しいの」
「信憑性が増しますね~」
「これも、ジェームズの協力あっての見立てだけどね」
「ジェームズ?」
「あそこの金髪のマッシュよ。遺体のことで散々揉めてた時に、あの金髪のマッシュが何か匂いがするとか泣き叫んで場の雰囲気をぶち壊したのよ」
「それで、遺体を観察したら答えにたどり着いたってわけね? えっと……」
「デルタ・レイモンドよ。あんたとは仲良くしときたいわ」
デルタ・レイモンドと名乗ってゾーイと握手を交わした人物は肩まで伸びた赤髪に、艶っぽく露出度が高い服装を身にまとって特に胸を強調している。
背が男と同じくらい高く、とてもハスキーな声が印象に残った。
そして、そのデルタに指を刺されたことに鼻の下を伸ばしてニヤついてる俺を立たせてくれた人物は、どうやらジェームズと言うらしい。
妙に似合う金髪のマッシュ、体型はぽっちゃり系だが、その顔からは優しさと頼りなさが滲み出てるような感じだ。
「見立ては間違いないと思うわよ! 実戦経験豊富だからね!」
「それなら安心しとくって……誰?」
「妹のソニア、仲良くしてあげて」
「よろしくね! ゾーイ!」
「了解、こっちこそよろしく!」
デルタ・レイモンドの腕に抱きついて来た妹のソニアは、デルタと同じ赤髪をショートカットにしており、デルタとは対照的に華奢な体型で、細い腕には蝶のタトゥーが入っていた。
ニコニコと笑う姿は、どこか橘さんに似てるようで何かが違う気がする。
「それで、見たところアーデルじゃなさそうだけど? 何でここに来たわけ?」
「お前も同じ理由じゃないのか」
「あんたが、そこのガラ悪い集団のボスってとこ?」
「質問に質問で返すな」
「さきにやってきたのは君だよ?」
「……お前」
「待った待った‼︎」
「また新しい登場人物⁉︎ 名前、覚え切れないんだけど?」
「悪いな、ゾーイだっけ? せめて、俺とこの男の名前は覚えといてくれよ! 俺はシン・ドンゴンで、こっちはアラン・ロジャーだ」
「え⁉︎ あ、こ、れは……何で……」
「気持ちはわかるよ、僕もさっき腰が抜けて泣き叫んだから」
「あ、れは……あの、本物の……」
「うん、正真正銘、本物の血液であの男はもう死んでるんだ」
そう言って、まだ震えてるその手を伸ばして立たせてくれた目の前の人物もアーデルの一員のようだ。
死体なんて初めて見た俺は、ガタガタと膝の震えが止まらなかった。
あ、まあ、死体を見ることなんて普通に生きてたらないけど……
どうしてそんなに自分が情けないのかの理由は、ゾーイが原因だった。
ゾーイは死体の横に座り込んでじっくりと何かを観察していた。
死体は作業着を着ていて、仰向けになっているから顔が丸出しだった。
あー、絶対に夢に出てくるだろこれ。
すると、意を決したようにゾーイの肩を掴むアーデルの制服を着た人物。
「申し訳ないが、それ以上の詮索は遠慮してもらえるかな?」
「……それって、あたしのこと?」
「君の目を見て話しているのだが?」
「へー、何の権限があるわけ?」
「それは……」
「同じナサニエルの生徒で偶然コックピットを見に来て、遺体を発見したって状況下は発見したのが早いか遅いかはあれど一緒よね? まさかだけど、自分達はアーデルだからだとか、お花畑なことを言うつもりなら笑い飛ばすけど?」
ゾーイは自分の肩を掴んだその人物と向き合って言葉を遮ったかと思えば、そう言い放った。
すると、その人物は図星をつかれたようで言葉を詰まらせてしまう。
何とも言えない気まずい空気だった。
「……クレア? これ以上、部外者を巻き込むのは危険だと言いましたよね?」
「え、ええ……そうなんだけど……」
「その少女が私を投げ飛ばして無理矢理に突破したんだ! クレアに非があるわけではないぞ、モーリス‼︎」
そう叫びながらこっちに向かって猛スピードで下りて来たのはハロルド・早乙女、サトル、望の三人だ。
サトルと望は死体に気が付くとそれぞれの反応を示した、サトルは短く声を発して目を背け、望は目を見開いていた。
モーリス……いつもアーデルで次席の生徒の名前がモーリス・ニコルズだった気がするな。
その人物は左右対称に規律良く整えられた黒髪、眼鏡の奥の少し細い目は冷たさを感じさせるような人物だった。
「そうよ? そこにいる太眉くんの言う通りだから、クレアは悪くないわ」
「ふ、太眉⁉︎ 私にはハロルド・早乙女という立派な名前がある‼︎」
「あー、はいはい! それより問題はこの遺体よね……この男は一見すると清掃員って感じだけど、どこにも掃除用具は落ちてないし、事件に巻き込まれた感じには見えないのよね~? 何より、まだ口から仄かに香るこの匂いは……」
「ご名答。アーモンド臭よ」
ゾーイの見事な推理に感心してる俺の横を通り過ぎて、ゾーイの推理に付け加えるような発言をした人物。
それに続くように五人の男女がゾーイの前に立ちはだかっていた。
何より、揃いも揃って雰囲気がどこか怖いし、ガラが悪いというか……
「苦しんで首元を掻きむしった切り傷が残ってるし、この男の死因は青酸カリで間違いないわ」
「詳しいんだね? 医療科だったり?」
「ううん、育った環境上ってのかな? こういうのには詳しいの」
「信憑性が増しますね~」
「これも、ジェームズの協力あっての見立てだけどね」
「ジェームズ?」
「あそこの金髪のマッシュよ。遺体のことで散々揉めてた時に、あの金髪のマッシュが何か匂いがするとか泣き叫んで場の雰囲気をぶち壊したのよ」
「それで、遺体を観察したら答えにたどり着いたってわけね? えっと……」
「デルタ・レイモンドよ。あんたとは仲良くしときたいわ」
デルタ・レイモンドと名乗ってゾーイと握手を交わした人物は肩まで伸びた赤髪に、艶っぽく露出度が高い服装を身にまとって特に胸を強調している。
背が男と同じくらい高く、とてもハスキーな声が印象に残った。
そして、そのデルタに指を刺されたことに鼻の下を伸ばしてニヤついてる俺を立たせてくれた人物は、どうやらジェームズと言うらしい。
妙に似合う金髪のマッシュ、体型はぽっちゃり系だが、その顔からは優しさと頼りなさが滲み出てるような感じだ。
「見立ては間違いないと思うわよ! 実戦経験豊富だからね!」
「それなら安心しとくって……誰?」
「妹のソニア、仲良くしてあげて」
「よろしくね! ゾーイ!」
「了解、こっちこそよろしく!」
デルタ・レイモンドの腕に抱きついて来た妹のソニアは、デルタと同じ赤髪をショートカットにしており、デルタとは対照的に華奢な体型で、細い腕には蝶のタトゥーが入っていた。
ニコニコと笑う姿は、どこか橘さんに似てるようで何かが違う気がする。
「それで、見たところアーデルじゃなさそうだけど? 何でここに来たわけ?」
「お前も同じ理由じゃないのか」
「あんたが、そこのガラ悪い集団のボスってとこ?」
「質問に質問で返すな」
「さきにやってきたのは君だよ?」
「……お前」
「待った待った‼︎」
「また新しい登場人物⁉︎ 名前、覚え切れないんだけど?」
「悪いな、ゾーイだっけ? せめて、俺とこの男の名前は覚えといてくれよ! 俺はシン・ドンゴンで、こっちはアラン・ロジャーだ」
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