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キングダム・レボリューション 開幕(シックザール学園 第四章)

天国か地獄かはたまた

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 プカプカと水に浮かぶ感覚だ、ここはどこだろう。
 体が重い気がする、今は何時か、どれくらい私は寝ていたのだろう。
 ゆっくりと私は体を起こして、眩しさに必死に目を凝らす。


「ここは、天国か何か……?」


 ようやく目が慣れてからぐるりと辺りを見渡すと、とても幻想的な景色が広がっていた。
 雲よりも高いその場所に緑に囲まれた山や谷がどこまでも続いており、その尾根の一角に私は立っていた。
 まるで、太陽がそこにあるようだ。
 空は澄み渡り、どこから風で運ばれて来たのか色とりどりの花びらが宙を舞っている。
 そして、私は白い少しサイズが大きめのワンピースを着ていた。
 私の足元にはたくさんの緑と、私の瞳の色とよく似ている青紫の花が辺り一面に咲いていた。
 何て花だっけ? 確か、学園の……


「学園って……あー!! 私、みんなのとこに帰らなきゃ! いや待って、帰るって言ってもここどこよ!? そうだ、人よ! まずは人を……!!」
「お目覚めになりましたか」
「え!? そうです! お目覚め……」


 私は帰らなければいけないと思った。
 両親が、みんなが、大切な人がきっとものすごく心配してるから。
 そして、後ろから話しかけられて天の助けださすが天国なんて考えながら振り向くと、私は息をするのを忘れた。


「どこか違和感はありませんか?」
「え? ま、待って……あなたは……」
「スピカ・アルドレードですよね?」
「な、んで……」
「スピカ・アルドレード、私はあなたにお話があります」


 そこには私と生き写しの、もう1人のスピカ・アルドレードが立っていた。


「整理させて? 今の私は文字通りに大混乱っていうか……」
「残念ですが、あなたに残された時間はあまり残っていないのです」
「いや、それでも! ここはどこ!?」
「まず、ここは天国ではありません」
「じゃあ……え、まさかの地獄?」
「どちらも違います、ここは天国と現実の狭間で魂が集う場所、私は勝手にレプリカと呼んでいます」
「レプリカ?」


 もう一人のスピカ・アルドレードは他にも詳しく話してくれた。
 ここ、レプリカは人間として生まれる前に過ごす場所、死んで魂が戻ってくる場所でもあるらしい。
 やがて、順番が回ってくると私達はそれぞれの世界に振り分けられていく。
 誰もが何度も生まれ変わる、転生を繰り返して世界は成り立っていて、生を受けると自然と前世の記憶はなくなる。


「ちょっと待った! だとしたら、前世を覚えて生まれた私は? 何なのよ」
「……全て私の行いが招いた結果です」
「え? ねえ……あなたは誰なの?」
「私は、スピカ・アルドレードとして生まれるはずだった魂です」


 予感はしてた、予感はしてたけど覚悟は出来てなかった。


「本当にすみませんでした!!」
「え!? あ、あの! 何で、あなたが謝るのですか!?」
「私はあなたの人生を奪った! 経緯は覚えてなくて申し訳ないけど、取り返しのつかないことをしてしまいました!」
「誤解です! 待ってください!」
「謝って済むことじゃないけれど、本当にすみませんでした!!」


 私はその場で、地面に額をつけながら必死に謝った。
 けど、彼女は私の頭を力ずくで上げさせる。
 ああ、そりゃそうだ、許してなんてくれるわけないよね…
 もう一度、しっかり目を見て謝ろうと目を合わせると、彼女の無表情のその瞳には底知れぬ悲しみが浮かんでいた。


「謝らなければいけないのは、あなたではなく私の方です……」
「どういうこと?」
「私はあなたに、私の運命を押し付けて運命から逃げたのです……」 


 彼女は弱々しく話し出した。
 もうすぐ順番が回ってくるという時に彼女は誤って足を滑らせ、この尾根から谷底に落ちたらしい。
 レプリカに死はないから、すぐに魂は戻って来たけど、彼女はそれをきっかけに夢を見るようになったと言う。
 断片的だが、間違いなくそれは彼女が生を受けてから送るはずの人生だった。
 彼女の人生は、人を信じられず孤独と共に生涯を終えるような人生だったと。
 両親に壁を隔てられ、友人を得ることもなく、人を愛することを知らぬまま空っぽで残酷な人生だったと。


「そんなこと、たかが夢よ! 全ては生まれてみなきゃ分からないじゃない!」
「……あなたは本当強いですね、そんなあなただから私は選んだのです」
「選んだ? まさか……!?」
「そう、私はあなたを身代わりにして順番を偽装しました……覚えてないでしょうけど、あなたはここレプリカでも笑顔を忘れませんでした、あなたは前世でも楽しく生きたのだろうと容易に想像が出来て、きっと羨ましくて妬ましかったのでしょうね……だから、あなたが謝る必要はまったくないのです」
「……あなたは」
「はい?」
「あなたは! 本当の、本当の本当にこれで良かったの!?」
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