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キングダム・レボリューション 開幕(シックザール学園 第四章)

真実の愛を見つけてよ

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「スピカ様、おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「お嬢様のますますのご成長を、心よりお祈りしております」
「ありがとう」
「ようこそ、お越しくださいました」


 今日はこの世界での、私の十六回目の誕生日である。
 例年通りに、朝からアルドレード家は大忙しで走り回っていた。
 友人達は全員出席、今年は恐れ多くもシリウス殿下とガブリエル様がわざわざお越しくださった。
 そして、正式に婚約者となったバルトとエレノア様、ベロニカ、今年からニックとゴードンも加わってくれた。


「ところで、出すぎたことだとは重々把握しておるのですが……」
「……娘の婚約のことでしょうか」


 例年通りに、普通の楽しいだけの誕生パーティーとはいかなかった。
 この国の平均的な婚約者を決める年齢は十五歳で、私はその年齢をいよいよ通り越してしまったのだ。
 アルドレード家はひとり娘で、つまり婚約者は跡を継ぐために婿に入る。
 何かと注目されることが多い我が家の婚約者探しについては最初から注目はされていたようだが、ついにここにきて有力貴族達がお父様に接触してきた。
 けど、私には接触してこなかった。
 その理由は、最高位の家柄を持つ私の友人達が揃いも揃って、未だに婚約者を決めていなかったからだ。
 私の受難を知るわけもなく、目の前で友人達はご馳走を食べていたのだ。

 
(何で、こんなに決まらないのよ……)


「オリオン様! 隣国とのお見合いをお断りになったって聞きましたよ!」
「ああ、そうだが?」
「これで、何回目ですか!?」
「そうは言っても、少しばかり大人しすぎて物足りなかったのだ」
「うるさかったらいいんですか!?」


 相変わらず、オリオン様は全ての婚約の申し込みを断っている。
 しかも、断る理由はよく分からない適当なものばかり。
 けど、国王陛下もシリウス殿下もこの事実を深刻に受け止めておらず、むしろ何か分かっているような含み笑いを返されるだけだった。


「ベル! もういっそのこと、婚約者はクラリーナ様でいかが!?」
「ちょっと、適当すぎるよ!?」
「スピカ? 婚約者はそのように強引に決めるものではありませんわよ?」
「それ、はそうですけど……ああ! ニックはどうだったの!?」
「モンブランを作らせたが、俺が納得出来る味ではなかった!」
「またなの!?」


 ベルは周りから半場押し切られるようにようやく婚約者探しを始めたが、どうもやる気が感じられない。
 引く手数多なのに、婚約者候補のご令嬢とは一回デートするだけ、絶対にそれっきりで何も発展しない。
 クラリーナ様も婚約者候補はバルトの他に会っている様子もなく、婚約者探しは全く進展していないようだ。
 しかも、アリー様もクラリーナ様がお嫁に行かないなら自分だって行かないと言い出してしまったとか。
 ニックは婚約者候補のご令嬢にケーキを作らせては、ダメ出しをするの繰り返しで一向に決まらないし。
 四大貴族、しっかりしてよ!!


「ジェイコブ様は何故かまったく心配はしていないみたいだけど! セドリックはそろそろ安心させてあげなきゃ!」
「また親父と会ったのか?」
「え? まあね……時々騎士団の訓練を見せてもらったりしてるから……」
「はあ!? 聞いてねえぞ!?」
「言ってないし……何で怒ってんの!?」


 セドリックは、騎士団合格と共に元々あった人気が爆発して婚約者候補として名乗りを挙げるご令嬢が急増した。
 どんなに私がジェイコブ様のためにとセドリックに訴えても、その度にセドリックは何故かひどく怒る。
 ジェイコブ様は心配してる様子とかはまるでないが、お父様に家族になったらとか話すのをよく見かけるから、婚約者は欲しいみたいだけど……


「リリー!! このままでは、ロータスとマーガレットに先を越されるわよ!?」
「私は構いませんわ」
「ええ!? あ、リオン? ロゼット様は心配してるわよ!? もしもの時は、私に婚約者になって欲しいって言うのよ!? 相当追い詰められているわよ!?」
「ま、また母上は……」


 愛しのツインズ、ロータスとマーガレットは十一歳になったばかりなのにお茶会などでいい感じになっている相手がそれぞれいるらしい。
 最近の子、進みすぎではなくて!?
 リリーはそのことを大して気にする様子もなく、補佐から外務大臣に正式に就任したキャメロン伯爵を献身的に支えており、婚約者探しはほぼしていない。
 リオンはロゼット様のためにも早く婚約者を見つけて欲しい。
 どうしても見つからなかったらリオンは次男だし、アルドレード家に婿として入ることも厭わないと嘆く。
 けど、それをリオンに話しても顔を真っ赤にしてロゼット様を怒るばかり。


「スピカ、そうやってしつこく聞くお前はどうなんだ?」
「私のことはご心配なく!」
「またそれ? アルドレード家の婚約者探しの情報って、本当にまったく入ってこないけど……」
「しっかり進んでるから、大丈夫よ」


 私のことをみんなはいつも気にしてくれるけど、そうじゃないのよ。
 新学期になったら、乙女ゲームが始まるのよ?
 こんなに美男美女が揃ってて、バルトとエレノア様以外の浮いた話がないってどういうことよ!?
 私のことは本当にどうでもいいのよ?


 あと少しで、私はこの生まれ育った王国を出て行くのだから……
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