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シックザール学園 第三章

親子喧嘩は時と場合を選ぼう

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「今、何て言った? 俺の娘に対して何を言ったかって聞いてんだよ!!」
「わ、私は……!!」
「国王陛下の前だぞ!!」
「どういう教育? お前らみたいなクソ野郎にはなるなって教育だよ!!」
「無礼だ!!」
「俺の娘の何を知ってる? 確かに、令嬢としてはとても褒められないものだ、命知らずで無鉄砲で周りはいつだって振り回される……けどな、愛情に溢れてて自分より他人を思いやれる、人として大切なものを誰よりも持ってんだ!!」
「何だと……!?」
「俺とミランダの愛そのものだ!! 誰が何と言おうと自慢の娘だ!!」


 ジェイコブ様が私にハンカチを差し出してくれる。
 こんなの反則だよ、お父様。
 泣くななんてそんなこと無理だよ。
 ジェイコブ様がさすが帝王か……とか言ってるのが聞こえたけど、何だ?
 さてと、涙を吹いて、お父様からの素晴らしいパスを受け取りますか!


「自分の母を、愛する人を目の前で奪われる苦しみは、その安全な場所から文句を言うことしか出来ないような人間には一生分かるわけありませんわ!!」
「そ、れは……」
「そのような人間達をまとめてこう言うのです、あなた達は愚か者です!!」


 言ってやった、目を見て言ってやったぞしっかりと。
 満足気な私を呆れた顔で見ていたのは他ならぬお父様だった。
 え、さっきまでの愛溢れる発言は?
 お父様? そんなに変わり身早いことありますか!?


「ハハハッ、お前の娘だな!」
「はあ……性別を間違えたのか、育て方を間違えたのか……」
「お父様!? 言ってることが、あれ?」
「それより、二人とも? ここが国王陛下の前だということは覚えているか?」


 ジェイコブ様に言われて、私とお父様は慌ててこうべを垂れる。
 やっちまったよ、これ終わりだ。
 玉座の間で親子喧嘩とか、おまけに暴言吐きまくったし、笑えないぞ。
 お父様が横で、記憶を失くしたことにすれば……とか言ってる。
 どうしよう、お父様がポンコツだ。


「サイモン? 学生の頃にお前が私に決闘を挑んできたことを思い出した、スピカ嬢は本当にお前にそっくりだな?」
「え?」
「その節は……何と言いますか……」
「娘に目を覚まされたな? サイモン、今のお前ならミランダを助けに行くことを許可出来る」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だ」
「ありがとうございます!」


 いや、いろいろ聞き捨てならないことありまくりだったよ?
 どう消化したらいいのよ、これ?
 あとでジェイコブ様に聞こう! 何か掘ったらいろいろ出てきそう……
 あれ? その前にお父様は同行を許可されたけど……


「国王陛下! 私は……」
「……サイモン、どうするのだ」
「とんでもごさいません! スピカ、お前は家にいなさい!」
「嫌です」
「おまっ……嫌って……お前に何かあればお母様が悲しむ、安全なところでお前は私とお母様の帰りを待っててくれ」
「お父様は助けに行くのに、何故私は行ってはいけないのですか? それに、お父様に何かあれば悲しむのは私だって同じです、大人しく家で待ってるなんて絶対に無理です」
「お前が行くと迷惑になる!」
「足手まといにはなりません、剣も武道も稽古を続けています、何よりもゴードンのことを暴いたのは私です、同行する権利はあります」
「本当に誰に似たんだ……とにかく、お前はダメだ!」
「意地でもついて行きます!」
「ミランダは私の妻で、お前は娘だ! 親の言うことを聞け!」
「妻である前に私のお母様です!」


 その時だった、玉座の間の扉が前触れもなく開いたのは。
 全員が扉の方に視線を移す。
 そこには、ベル、クラリーナ様、リリー、セドリック、リオン、バルト、エレノア様、ニックなどの、私の友人達が揃って立っていた。
 そして、みんなが左右に避けるとその中心からオリオン様が現れた。


(どうして、ここに……?)
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