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第七話、暗転と亀裂

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「物部アマタケを生き返らせろ」
「嫌だ」
「そう言うと思っていたよ」
「やるんならてめえ一人でやれよ。用足しも一人で出来ねえガキは家帰って寝てろ」
 鳩尾に衝撃が走り、ゲホゲホと咳き込む。朝陽の視界が歪んだ。
「連れてって」
 答えは分かっていたような顔で物部が背後にいた男たちに声をかける。
 咄嗟に霊力を込めようとしたが、普段通りに扱えなくて目を瞠る。
 ——霊力が練れない?。 昨日のあの玉のせいか⁉︎
 五人分の治癒玉の副作用は大きかった。いつ復活するのかも皆目見当もつかなかった。
「もっと抵抗してくるかと思ったんだけど拍子抜けだね。まぁいいか」
 その内の一人に担がれて朝陽は場所を移動させられる。
 黒いシーツを被せた祭壇の上にうつ伏せで転がされ、両手を後ろ手に縄で拘束された。
 男たちは直ぐにどこかへ去っていく。その間に何とか霊力を捻り出そうとするものの、やはり上手く行かない。朝陽の掌に集まりかけた霊力は霧散した。
「そういう事か。お兄さん今ろくに霊力使えないんだ?」
 誰もいなかった空間から突如声が上がり、朝陽の体が大きく戦慄く。無理やり体を起こそうとした瞬間、後ろから思いっきり床に叩きつけられた。
「何の、話だ」
 薄っすら笑みを浮かべて言ってやれば、物部が笑い出す。
「そのまま、普通に殺しちゃえって思ったけど、やーめた。先にお兄さんの精神から殺そうか」
「あ?」
「ここに居る奴らに輪姦されちゃおうよ。その方がアイツらに効率的なダメージを与えられそうだしね」
「ふざけんなっ離せ!」
「たくさん抵抗していいよ? その方が燃えるから」
 物部が喉を鳴らして笑った。
 嗜虐心しか宿っていない声音の後で、薬品の匂いがする布で顔を抑えられる。朝陽の意識はまた遠のいていった。




 再度目を覚ますと朝陽はまだ祭壇の上にいた。先程とは違って仰向けにされていて拘束も解かれている。
 しかし、自分の体の上に男たちが数名群がっているのに気がつき、即座に霊力をぶつけて蹴散らした。が、上手くいかない。やはり霊力は集束しないままだった。
 ——集束しない……?
 ふと思いついた事があり、朝陽は両手を祭壇に押し当てた。
 纏まらない物を無理やり纏めようとするからいけないのではないかと考えたからだ。
 纏めようとはせずに、そこから一気に最大出力で霊力を流し込む。
 雷鳴のような音が轟き、目の前にいた男たちが全員霊力で感電し動きを止める。四方八方から短い呻き声や悲鳴が聞こえ、男たちはやがて消滅した。
 直後、何故か視界がブレたような気がして朝陽は眉間に皺を寄せて目を窄める。
 ——何だ? 気分が悪い……。
 起きたばかりだからか息が上がり頭もふわふわしていた。
「そのまともに霊力が使えない体でよくやるよね」
「うるっせえよ! 誰がアイツら以外に股開くか。てめえがヤラれてろ!」
 さっきと同じ要領で、重なって押し潰そうとしてくる男らの体を、吹き飛ばしながら朝陽がそう言うと物部が嘲笑した。


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