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終幕

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「空良、可愛いね。——私の上においで?」
 白月の言葉に酔わされて頷く。言われるままに胡座をかいて座っている白月の上にゆっくり腰掛けると、そのまま後孔に白月の陰茎が入り込んできた。
 体に快感という名の衝撃が走り、弓なりに背がしなる。
「あああ、ん、中、きもち……いい」
「ちゃんと私を呑み込めて良い子だね、空良。もっと気持ち良くなろうか? ——思っている事全部教えて?」
「ん、なる……。気持ち良く……なるっ、白月、動いて欲しい……っ、白月、もっと……突いて」
 自分から腰を揺らめかせると、下からも突かれてまた視界が白く霞んで飛んだ。
「あ、ああっ、あ、ん、白月……ッしらつきぃ、これ、気持ち良い」
 浮き上がるくらいに突かれて最奥まで白月を呑み込む。一瞬意識が飛んでは律動で引き戻された。
「ああん、ァああ、ん、気持ちイイ……白月……ッ、奥……気持ちイイ、もっと、奥に欲し……っい、あん、ふ、ァ……っ、あん」
「私もッ、気持ち良いよ。ちゃんと言えて良い子だね空良。ご褒美に空良の好きな奥たくさん突いてあげる」
 煽情的な白月の声音にまで感じてしまい、腰に力を入れてしまった。
 幾度となく互いの皮膚を打つ音が響き渡っていく。目の前で火花が散っている感覚に襲われ、ほぼ同時に欲を吐き出した。


「あれ……何で僕、裸なの?」
 起きたら布団の中で白月に抱きしめられたまま寝ていた。
 自分どころか白月まで全裸で寝ているのが分かって、起きた瞬間から空良は頭をフル回転させる事になった。
 記憶を辿るも断片的なものしか思い出せない。
 それだけならまだ良い。消えていて欲しい記憶だけ鮮明に覚えているので、恥ずかしくて地に埋まりたくなった。
 ——一生分って言っていいくらいに恥ずかしいセリフをたくさん言った気がする。
 しかも自分から淫らに白月を求めてしまった。
「空良? 起きたの?」
 白月の声にビクリと身を震わせた。
「ああ、そういう事。積極的な空良も可愛かったよ。我慢出来なくて五回も付き合わせちゃってごめんね」
「うー……、白月。お願い、それはもう言わないで」
 両手で顔を覆った。
「何度も奥まで開いちゃったけど腰大丈夫?」
「~~ッ」
「奥でたくさんイったもんね?」
 腰をさすられた後で下っ腹も撫で上げられると、昨夜の快感を思い出してしまい、息を呑んだ。ゾクゾクとした悪寒めいた快感が蘇ってきて背筋を駆け巡る。
「や、嘘……っ、なに……これ、あん、んんんーー!」
 小刻みに体が震えて止まらなくなった。
「え、触れただけでイっちゃった?」
 さすがに驚きを隠せない様子の白月からの問いかけに答えられずに俯く。とても恥ずかしかった。
「ごめ、なさい。あの……僕……っ」
 布団も汚してしまった。
 気まずい。泣きたい。逃げ出そうとすると、白月の長い腕に捕らわれてしまい抱きしめられる。
「白月、離してっ」
「え、もしかしてそんなやらしい顔したまま帰るつもり? 襲われたらどうするの? 帰さないに決まっているでしょう。こんな可愛くてやらしい空良を見れるのは私だけだよ。自分から腰振りまくって喘いで奥に入れてっておねだりする空良めちゃくちゃ可愛かった。またおねだりして欲しい。今度はどんなプレイしようか?」
 輪をかけて恥ずかしさを追加してくる白月の腕の中で、人生最大規模の辱めを受ける事になり、空良は呼吸を止めて瞑目するように目を閉じた。


 *


 神楽が十分な復讐が出来たからと伊藤たちを解放したとの知らせを聞いて、空良は身の回りを厳重警戒していたのだが、杞憂におわった。
 会社で顔を合わせる事もなく、伊藤は会社を辞めていた。というよりも、傷害罪や暴行罪その他色々な罪状で警察に逮捕されたと会社内で噂が持ちきりになっている。
 神楽が連れて行った男たちはそれぞれ全員自首したらしい。異界という所で何があったのか、神楽は一切教えてくれなかった。
 会社帰りにいつものように白月のとこへ行き、その話を持ち出した。
「神楽も一応神格化した妖だからね。命までは取らないよ。逆に神の座からは堕とされたけどね。本人は気にもしていなかったけど」
 袖で口元を隠しながら白月が言った。
「そうなんだ」
 これまでの白月との会話を思い出すと、それが何を意味するのか大方見当はつく。それでも遣る瀬無い気持ちになった。
 少ししんみりしてしまった空気を割くように白月に腕を引かれて抱きしめられる。
 頬と唇に触れるだけの口付けを落とされた。
「ところで空良、今度はいつプレイしてくれるの?」
 一気に心音が跳ね上がる。
「え……、その……最近特訓してないし特訓でもいいかなと思ってるんだけど……」
 何だか断る言い訳じみたセリフになってしまい、ソッと視線を流す。
 白月とのプレイは気持ち良過ぎて、毎回サブスペースに入ってしまう。何も分からなくなるまで翻弄されるのはまだ少しだけ怖い。
 否、白月が相手ならばいいのだが、自分が正体を無くして白月を求めてしまうから、それが堪らなく気恥ずかしい。
「あの男とやり合ってあそこまで耐えれたんだからもう必要ないと思うんだけど?」
「でも……その、ね。僕にとっては護身術みたいなものだし……」
「ねえ、空良。私もう我慢するのやめたいな」
 しゅんと項垂れたように言われると、嫌だと言えなくなった。
 ——うぐ、可愛い……っ。
 ここの所、白月は姑息な手段を覚えたようで、逃げようとする度にこうして迫ってくる。嫌な気持ちにならないのは、惚れてしまった弱みだろうか。
「空良、駄目?」
 小さな声で「泊まっていく」と答えると、口付けの嵐を送られた。
「ありがとう、空良。大好き。愛してるよ」
 何だか手懐けられた気分になるものの、白月の喜ぶ顔を見るのはやはり嬉しくて、諦めたように笑ってしまった。


【了】

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