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目覚めの……

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 白く靄がかかっていた視界が晴れ、どんどん焦点が合ってくるような錯覚を覚えた。
 リュクスが再生能力で啓介を治した所までは覚えている。それから先の記憶が全くない。
 ——あれからどうなった?
 倒れたまま座った覚えもないのに誰かの腕の中にいて、鼻腔を擽ぐる嗅ぎ慣れた香りで、啓介の膝の上にすわっているのだけは分かった。
 数秒おいて体を離す。そこに居たのはやはり啓介だった。
「啓介? 何で俺、お前の上に座っている?」
 向かい合う形で啓介の太ももの上に乗っている。
 ——何故こんな体勢になっているんだ?
 思考を巡らすも、こうなった理由を全く思い出せずに、冷や汗だけが背筋を伝っていった。
「やっと正気に戻ったか?」
「正気? もしかして俺が記憶を飛ばして時間が経っているのか?」
「時間どころじゃないぞ。四日目だ」
「は? 四日!?」
 さすがに驚いた。しかも服を着ていない。裸のまま上からブランケットを羽織らされている。
 同じように啓介までも素っ裸だ。
 ——は? 何だこれ?
「ぼんやりしたまま俺にしがみついて離れないから、服は着用自体が難しくて着させていない。だが、体は冷やすなよ。俺の子がいるからな」
 落ちそうになったブランケットをかけなおされる。
 何か聞き捨てならない事を聞かされた気がして、瞬きもせずに啓介を見つめる。
「子…………ども?」
 少しだけ回り始めていた思考回路がまた停止した気がした。
「お前の意識が飛んでいる間に医療魔法師にも診て貰った。基本的に龍人族は種を残しにくいんだがな。まさか一度のヒートで身籠るとは思わなかったぞ。もしかしたらお前が五年もヒートを止めていたからかもな」
「子ども……。だから再生能力が使えなかったのか」
「リュクスが言うにはそうらしいな」
 ため息をつく。
 ——日比谷が言ってたのは、こういう事か……。
 懐妊中だと再生能力は使えないのを見透かされていた。
 しかも毒付きだと再生能力でも時間がかかる。血管を通して身体中に行き渡る血液を浄化させなければいけないからだ。それに加えてウイルスとなると……。
 レヴイとリュクスが居なければ死んでいた。
 逡巡していると、グッと尻たぶを掴まれて首筋にも口付けを落とされる。
「ちょっと待て……お前何してやがる?」
「この状態でおあずけ喰らわされてたんだ。少しくらい楽しませろ」
「孕んでるんなら当たり前だろ! てめえは我慢を覚えろ!」
「平気だ。奥まで入れなければ卵は潰れん」
「卵!? 龍人族は卵で生まれるのか?」
「そうだ。二ヶ月間は母体の中で卵で育ち、その後取り出して専用の巣に移される。孵化した直後はドラゴンの姿をしているぞ」
 これにも驚かされた。
 感心しているとベッドの上で反転させられていて、覆い被され慌てる。足を閉じようにも啓介の身を割り込まされているので閉じられず、滑りを帯びた指先を後孔に潜り込まされた。
「あ、あ……んぅ」
「満更でもなさそうだな」
「誰かさんに……っ、散々仕込まれてるからだ」
「感度最高な淫乱だからだろ」
「はっ倒すぞ、てめ……ッ、ん、あ! 啓介……そこッ」
 指を増やされ集中的に前立腺を擦られると腰が浮く。声を殺していると邪魔をするかのように、もう片方の手で胸を撫でられてしまい、短い悲鳴が出た。
「ふ……、ぁ、ア!」
 吐精に身を震わせると、指よりももっと肉感のあるモノを押し当てられて息を吐き出す。ゆっくりと内部を開かれていく感覚がもどかしくて自ら腰を振った。
 この体でももう中は啓介の形を覚えている。直腸の奥まで突かれると快感で眩暈がした。それも束の間で、すぐに浅い抽挿へと切り替わっていく。
「んう、ぁ、あ、アア」
 普段よりも甘ったるく優しい動きが逆に欲を煽り、体が熱ってくる。中途半端に高められたままで、決定的な快感とはならずに絶頂へは中々到達出来なかった。
「啓、介」
「しばらくの間は前立腺だけでイけ」
「あ、あっ、無理……だ。啓介……ッ、ん、ぁ、奥に欲しい」
 パツパツと規則正しい動きで肌同士がぶつかる。段々焦れてきて口走れば、啓介がニンマリと笑みを浮かべた。
「駄目だ。ハル、目を閉じろ」
 言われた通りにすると、両手で耳を塞がれ口付けられる。クチュクチュと立つ音が脳内で響いて感度を煽った。
 上顎、歯列と舌で刺激され、舌を絡ませ合う。
 ——これ……ヤバい。
 視覚も聴覚も奪われると興奮度が増していくようだった。
「ん、んう、は、ああ、ア」
 今度は下っ腹を摩られながら、陰茎を扱かれる。
 外部からの刺激だというのに、結腸を犯されている時みたいに腹の奥が蠢いて思いっきり腰を逸らした。
「目は閉じたまま、結腸を犯されてる時の感覚を思い浮かべてみろ」
 奥を犯される刺激と快感を脳が覚えていて、腰が甘ったるく痺れ、想像だけで高みへと追いやられていく。
「んんん、け……っすけ、イク」
 条件反射的に目を見開いた。
 合わせるように浅い部分だけではあるが抽挿が激しくなる。
「あ、ああ、あああ!!」
「っ!」
 ほぼ同時に高みへと上りつめ精を吐き出した。
「くく、脳イキ出来たじゃねえか」
「ハッ……、ハッ。も……最悪」
 どこもかしこもこの男に支配されているのだと知り、何とも言えない気分になる。
「んっ」
 今まではこのまま二回戦三回戦と続いていくというのに、そのまま引き抜かれのでやはり物足りなさを感じてしまう。それが伝わったらしい。啓介が肩を振るわせて笑った。
「二ヶ月は我慢しろ」
 これでは生殺し状態だとため息を吐き出した。
「服、着たい」
「ああ。待ってろ」
 中のモノをかきだされ、腹の上に散った精液も拭われる。甲斐甲斐しく世話を焼く啓介をジッと見つめた。
「日本にいる時は、んな事しなかったくせに」
「俺は本気でお前を孕ませようとしていたからな。言っただろ? 責任は取るって」
 ——あれ本気だったのか……。
 そんな事とは露知らず、悪態ばかりついていた。
 この世界のオメガバースの仕組みが分かっていれば、本気度が分かったかもしれないが。
「このままユロス帝国に行くのか?」
「これから数日もしない内に体調にも変化が訪れる。それに、龍人族の子はすぐに巣に移さなければいけないからな」
 服を着た所で扉のノック音が響いた。
「俺はハルが起きたら教えろと言った筈なんだがな? 一戦交えた後とは言ってない」
 ——バレている……。
 リュクスの一言に撃沈させられた。

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