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第2章
ヒロイン失格
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※前話同様、GL(百合百合しい)のが苦手な方は全力回避でお願い致します!
◆◆◆
「フィロス・・おかしいわ。離して・・・・。」
絞り出すように告げた言葉。らしくないフィロスの態度に、動揺が隠せませんわ。嘘?まさか本気で私の事が好きなの?だって、貴女・・ヒロインで、私はヴィクトリア・アクヤックですのよ?それ以前に女ですわ?えっとまって、私、本当にそちらの知識もその気もありませんのよ。
「なーんちゃってね。本気にしちゃった?」
抱き締められていた腕の力が緩み、離される。混乱し狼狽える私。その顔を、クスクスと意地の悪い笑みを浮かべたフィロスが覗き込んでくる。
「ヴィーちゃんったら、私の告白ですらこーなっちゃうんだー。免疫なさすぎ。かわいいー。」
えっと・・・・これって・・・・もしかして・・・・
「フィロス!!私の事、からかいましたわね!!酷いですわ!卑劣よ!こんなタチの悪い冗談!笑えなくってよ!!」
二人きりの部屋、私は怒りの声をあげますわ。
フィロスに翻弄されるだなんて、屈辱ですわ!やだ、目尻に汗が・・・・。これは汗よ!ちょっぴり混乱したからとか、からかわれたのが恥ずかしかったとかででてきた涙とかじゃありませんわ!私、こんな事で泣くような柔な令嬢ではなくってよ!
「うわー。耳まで真っ赤。やばい。なにこれ。かわいすぎ。」
「ちょっと!話を聞きなさい!むぐっ!ふぃろふ(フィロス)!ははひなはひ(離しなさい)!」
また抱き締められましたわ!やだ、フィロスの真っ平らな胸が眼前に!!
「ふがが!苦しい!息がしにくい!私の鼻が潰れる!痛い!痛いから今すぐ解放して!!」
酷いですわ!私の鼻が潰れたらどうしてくれますの!ハンスの匂いがかげなくなってしまいますわ!って別に嗅ぎませんわよ!はしたない!クンカクンカなんて致しませんわ!ってフィロスの匂いはあれですわね。シトラス?柑橘系のいい匂い・・・・。流石ヒロイン、匂いまで完璧ですのね!
・・・・って私また無意識に嗅いでしまっていますわ!どわあああ!私ってば、匂いフェチでしたのね!変態ですわ!ド変態!!ジーザス!なんてこと!ハンスだけじゃなく、ヒロインの匂いまでクンカクンカだなんて!!こんな鼻、もげてしまえ!!!ですわーーー!!!!
「やっぱり、ヴィーちゃんは私のお姫様だよ。」
にこにこと嬉しそうに呟くフィロス。何ですの?嫌味に感じますわ!
「私、お姫様になんて絶対なりませんわ!」
私、そんな柄じゃなくってよ!むしろ貴女の方がそうじゃない!素敵な異性に愛される、可愛らしいお姫様。気の強い私とは、正反対ですわ!
「うーん。なら王子様は?」
「はい?」
「囚われのお姫様を、颯爽と救う金髪ドリルの王子様。男前なヴィーちゃんにぴったりだよね。」
ひとり、うんうんと頷くフィロス。貴女・・・・それ・・・・
「絶対、私の事馬鹿にしてますわよね!?男前って!淑女に言う台詞ではなくってよ!それ褒め言葉ではありませんわ!私、れっきとした女ですのよーーーーーー!!!」
今わかりましたわ!フィロス。貴女、私を男だと思ってるのね!私、中身も外見も女ですわ!前世も含めて女ですのにー!!失礼千万よーーー!!
◆◆◆
「好き。好きだよ。」
思わず吐き出した、身勝手な想い。応えてもらえる筈もないのに。応えられても困るのに。何より彼女は、好きな相手がいるというのに・・・・。抱き締めた彼女の身体は固まり、困惑の色が見える。ワタシの事で困る彼女。悲しい気持ちとともに湧き上がる嬉しい気持ち。鬱屈とした歪んだ感情。
「なーんちゃってね。本気にしちゃった?」
冗談にすればあからさまな安堵が見え、その態度が気に食わない。舌打ちしそうになるのを堪える。いっそこのまま酷い事を・・・・頭を過ぎる黒い想いを必死に振り払う。
自分はどうしたいのだろう。このまま、友達として傍にいて、言葉を交わして、触れ合って、笑いあって、同じ世界を見る事ができれば・・・・それでいいのに。
ヴィクトリアは、あったかい。いや、熱くて眩しい。触れれば嫌でも熱を感じる。抱き締めるとそれがワタシにも伝わり、心にじんわりと熱を灯す。柔らかくて、キラキラしてて、目が離せない。ころころ変わる表情や突拍子もない言動は、見ていて飽きない。見た目は、つんと澄ましたお高くとまったキツめの美少女、中身は、隙だらけで不用心で抜けてて空回りばかりしている残念なご令嬢。そこが可愛い。綺麗なくせに可愛いだなんて本当に反則。
人の好意に慣れてないのか、自分に向けられる気持ちに鈍感な程気付かない。まるで自分が好かれるだなんて思ってない。
君が鈍感だから、私はこうして傍に居られるのに。想いに気付かれちゃいけないのに。気付いて欲しいと願うワタシがいる。赦されるわけないのに。
だから、溢れる気持ちを・・・・薄っぺで凡庸な好きに混ぜてしまおう。毎日たくさん好きだと言って。その中に本音を混ぜ込んで。
「ヴィーちゃん。可愛いね。好きだよー。」
呆れたようにこちらを見る彼女。
「フィロス。貴女、勘違いされますわよ?いい加減私に愛を囁くのはお止めなさい。同性が恋愛対象ではないのでしょう?」
「だから、私はノーマルだって。ヴィーちゃんが可愛いのがダメなんじゃない。」
そう。悪いのは可愛すぎる君。
「私は・・・・可愛くなんてありませんわ!可愛いというのは、貴女やルビアナを言いますのよ!」
ツンとむくれてそっぽをむく横顔。きゅっと結ばれた口元も可愛い。思わず抱き締め、また叱られる。ああ。怒る顔も本当に可愛い。
抱き締めれるのは、私の特権。柔らかくて、いい匂いのするヴィクトリア。このまま腕の中に閉じ込めてしまいたい。
たくさんの嘘を散りばめて、私は今日も彼女を抱き締める。本音に気付いて欲しい。気付かれちゃだめ。薄っぺらい好きをばら蒔いて、好きな気持ちを誤魔化すワタシ。ねぇ。ヴィーちゃん。ごめんなさい。
友達になってといっておいて、邪な気持ちを抱くワタシを許してね?
◆◆◆
「フィロス・・おかしいわ。離して・・・・。」
絞り出すように告げた言葉。らしくないフィロスの態度に、動揺が隠せませんわ。嘘?まさか本気で私の事が好きなの?だって、貴女・・ヒロインで、私はヴィクトリア・アクヤックですのよ?それ以前に女ですわ?えっとまって、私、本当にそちらの知識もその気もありませんのよ。
「なーんちゃってね。本気にしちゃった?」
抱き締められていた腕の力が緩み、離される。混乱し狼狽える私。その顔を、クスクスと意地の悪い笑みを浮かべたフィロスが覗き込んでくる。
「ヴィーちゃんったら、私の告白ですらこーなっちゃうんだー。免疫なさすぎ。かわいいー。」
えっと・・・・これって・・・・もしかして・・・・
「フィロス!!私の事、からかいましたわね!!酷いですわ!卑劣よ!こんなタチの悪い冗談!笑えなくってよ!!」
二人きりの部屋、私は怒りの声をあげますわ。
フィロスに翻弄されるだなんて、屈辱ですわ!やだ、目尻に汗が・・・・。これは汗よ!ちょっぴり混乱したからとか、からかわれたのが恥ずかしかったとかででてきた涙とかじゃありませんわ!私、こんな事で泣くような柔な令嬢ではなくってよ!
「うわー。耳まで真っ赤。やばい。なにこれ。かわいすぎ。」
「ちょっと!話を聞きなさい!むぐっ!ふぃろふ(フィロス)!ははひなはひ(離しなさい)!」
また抱き締められましたわ!やだ、フィロスの真っ平らな胸が眼前に!!
「ふがが!苦しい!息がしにくい!私の鼻が潰れる!痛い!痛いから今すぐ解放して!!」
酷いですわ!私の鼻が潰れたらどうしてくれますの!ハンスの匂いがかげなくなってしまいますわ!って別に嗅ぎませんわよ!はしたない!クンカクンカなんて致しませんわ!ってフィロスの匂いはあれですわね。シトラス?柑橘系のいい匂い・・・・。流石ヒロイン、匂いまで完璧ですのね!
・・・・って私また無意識に嗅いでしまっていますわ!どわあああ!私ってば、匂いフェチでしたのね!変態ですわ!ド変態!!ジーザス!なんてこと!ハンスだけじゃなく、ヒロインの匂いまでクンカクンカだなんて!!こんな鼻、もげてしまえ!!!ですわーーー!!!!
「やっぱり、ヴィーちゃんは私のお姫様だよ。」
にこにこと嬉しそうに呟くフィロス。何ですの?嫌味に感じますわ!
「私、お姫様になんて絶対なりませんわ!」
私、そんな柄じゃなくってよ!むしろ貴女の方がそうじゃない!素敵な異性に愛される、可愛らしいお姫様。気の強い私とは、正反対ですわ!
「うーん。なら王子様は?」
「はい?」
「囚われのお姫様を、颯爽と救う金髪ドリルの王子様。男前なヴィーちゃんにぴったりだよね。」
ひとり、うんうんと頷くフィロス。貴女・・・・それ・・・・
「絶対、私の事馬鹿にしてますわよね!?男前って!淑女に言う台詞ではなくってよ!それ褒め言葉ではありませんわ!私、れっきとした女ですのよーーーーーー!!!」
今わかりましたわ!フィロス。貴女、私を男だと思ってるのね!私、中身も外見も女ですわ!前世も含めて女ですのにー!!失礼千万よーーー!!
◆◆◆
「好き。好きだよ。」
思わず吐き出した、身勝手な想い。応えてもらえる筈もないのに。応えられても困るのに。何より彼女は、好きな相手がいるというのに・・・・。抱き締めた彼女の身体は固まり、困惑の色が見える。ワタシの事で困る彼女。悲しい気持ちとともに湧き上がる嬉しい気持ち。鬱屈とした歪んだ感情。
「なーんちゃってね。本気にしちゃった?」
冗談にすればあからさまな安堵が見え、その態度が気に食わない。舌打ちしそうになるのを堪える。いっそこのまま酷い事を・・・・頭を過ぎる黒い想いを必死に振り払う。
自分はどうしたいのだろう。このまま、友達として傍にいて、言葉を交わして、触れ合って、笑いあって、同じ世界を見る事ができれば・・・・それでいいのに。
ヴィクトリアは、あったかい。いや、熱くて眩しい。触れれば嫌でも熱を感じる。抱き締めるとそれがワタシにも伝わり、心にじんわりと熱を灯す。柔らかくて、キラキラしてて、目が離せない。ころころ変わる表情や突拍子もない言動は、見ていて飽きない。見た目は、つんと澄ましたお高くとまったキツめの美少女、中身は、隙だらけで不用心で抜けてて空回りばかりしている残念なご令嬢。そこが可愛い。綺麗なくせに可愛いだなんて本当に反則。
人の好意に慣れてないのか、自分に向けられる気持ちに鈍感な程気付かない。まるで自分が好かれるだなんて思ってない。
君が鈍感だから、私はこうして傍に居られるのに。想いに気付かれちゃいけないのに。気付いて欲しいと願うワタシがいる。赦されるわけないのに。
だから、溢れる気持ちを・・・・薄っぺで凡庸な好きに混ぜてしまおう。毎日たくさん好きだと言って。その中に本音を混ぜ込んで。
「ヴィーちゃん。可愛いね。好きだよー。」
呆れたようにこちらを見る彼女。
「フィロス。貴女、勘違いされますわよ?いい加減私に愛を囁くのはお止めなさい。同性が恋愛対象ではないのでしょう?」
「だから、私はノーマルだって。ヴィーちゃんが可愛いのがダメなんじゃない。」
そう。悪いのは可愛すぎる君。
「私は・・・・可愛くなんてありませんわ!可愛いというのは、貴女やルビアナを言いますのよ!」
ツンとむくれてそっぽをむく横顔。きゅっと結ばれた口元も可愛い。思わず抱き締め、また叱られる。ああ。怒る顔も本当に可愛い。
抱き締めれるのは、私の特権。柔らかくて、いい匂いのするヴィクトリア。このまま腕の中に閉じ込めてしまいたい。
たくさんの嘘を散りばめて、私は今日も彼女を抱き締める。本音に気付いて欲しい。気付かれちゃだめ。薄っぺらい好きをばら蒔いて、好きな気持ちを誤魔化すワタシ。ねぇ。ヴィーちゃん。ごめんなさい。
友達になってといっておいて、邪な気持ちを抱くワタシを許してね?
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