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第2章
流行り病
しおりを挟む麗らかな日差し。授業終わりの放課後。誰もいない教室で、んっ。と背伸びをし鋭気を養いますわ。あー。今日も一日よく頑張りましたわ。私。ハンスやルビアナも、特別授業も終わりましたし、BMRに来るかしら?最近二人とあまり話ができていないのよね。
「・・・・動悸。ため息。軋む胸。虚ろな瞳に、火照る頬。食欲不振に眠れぬ日々。」
ブツブツと呟く声に、思わずそちらを見ますわ。
「それ、何かの病気の事ですの?ルーファさん。」
「・・・・そうだネ。コレは病気の事だネ。ヴィクっち。そしてオレも結構な重症なんだよネ。」
ふよふよと教室を漂うルーファさん。糸目を更に細め、眉尻を下げ話ますわ。あら、ルーファさん病気ですの?体調が悪いようには、見えませんけれども。そういえば、レクリエーションから、ため息を吐く者、目の下にクマができた者、虚ろな瞳の者が増えた気がしますわね。ハンスや、ルビアナもそのうちの一人よ。
「その症状の者、何人か居ますわ。レクリエーションをきっかけに、病気が流行ってしまったのかしら。」
「そーだネ。結構な奴がかかってるみたいだョ。レクリエーションが原因だネ。あれがきっかけなのは間違いないョ。」
ヴィクっち、よく気付いたね。っとルーファさんは顎に手をあて関心していますわ。少し考えればわかりますわ。レクリエーションで疲弊し免疫力が衰えた所を、その病気にかかってしまった人が多いのですわね。
「流行ってしまう前に、なんとかしなければいけませんわね。薬か何かありますの?ルーファさんも寮に戻って休まれては?」
私の言葉に、ルーファさんは目を丸く(多分。糸目なので変化が分かりにくいですけれど。)させ、吹き出しましたわ。あら?私、何か変な事言ったかしら。
「ヴィクっち。この病気に薬は効かないョ。」
「え?そうですの?」
ハンスやルビアナは、大丈夫かしら。食欲のないルビアナ。ため息ばかりつくハンス。おかしいなと感じてましたけれど、あれはルーファさんと同じ病気でしたのね。なるべく早く良くなって欲しいのだけれど・・・・・・。私に何かできる事ってないかしら。二人に元気がないと、私も落ち着きませんわ。
「その病気って何ですの?治るものですの?薬が効かないなら、何をすれば治りますの?」
思案する私に、ルーファさんは私の前へと降り立ち、机に肘をつけ笑いましたわ。
「治すとしたら、想いを告げるか諦めるかしかないんじゃないかナ?」
「え?」
病気を治すのに、告げる?諦めるだなんてそれで完治しますの??諦めたら、そこで終わりですわよ?それこそ、悪化してしまいません?
疑問を抱き見つめる私に、ルーファさんは悪戯っぽい笑みを浮かべましたわ。
「ヴィクっち。コレはただの病気じゃないョ。」
静かな教室に、くすくすと笑う声が・・・・。柔らかな風が、ルーファさんの少し赤みかかった金色の髪を撫でていきますわ。
「ただの、病気じゃ・・ない?」
「そ。コレは誰もが突然かかる病・・・・。」
「恋の病さ。」
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