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Period 1 ならまちを知りましょう。
第33話 思い出せ 後編
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文化祭の準備や練習も着々と順調に進んで、いよいよ休みが明けたら文化祭、というところまで来た。依然として劇の練習では希咲は私と目を合わせてくれず、次第にそれを回りも察するようになって「希咲と春夏は不仲」というものが噂として広まった。変な気を遣わせてしまっているのが申し訳ない。それも耐えて切りぬけた。
今日は朝から紗穂ちゃんの家でお弁当を作っていた。食材はうちから運んで、それでも持ち切れなかった分はお母さんが持ってきてくれた。ただ単にうちのお母さんが秋月家に行きたかっただけだろうけど。時雨先生、歌織さん、おばあちゃん、お母さんがいればもう、誰でも舌鼓を打つような料理が完成するだろう。叶恋も料理は人並みに出来るし、紗穂ちゃんはまだ一人でお弁当を作れないけど、最初から比べると充分に上達している。味見役は健太郎さん。部屋着でボケーっとスマホでユーチューブを見ている。
「作るのはチキン南蛮・鯛めし・肉じゃが・卵焼き。それから……柿の葉ずし。中身はおかかと鮭で。高校に入って初めての希咲のお弁当に入ってたんだ。思いだしてもらえると嬉しいな」
四月のことを思い返す。卵焼きを人質に取られて交換した柿の葉ずし。私は覚えている。
希咲は覚ええいるだろうか。私たちと過ごしたこのありふれた日常を。日常は、失ってから初めてそれは尊いものだったんだと気付く。私は取り戻したい。希咲と過ごしたかけがえのない時間を。私のことは嫌いでもいいから。また希咲が笑ってくれるように。
絶対にこのお弁当で思い出させるんだ。
今日は朝から紗穂ちゃんの家でお弁当を作っていた。食材はうちから運んで、それでも持ち切れなかった分はお母さんが持ってきてくれた。ただ単にうちのお母さんが秋月家に行きたかっただけだろうけど。時雨先生、歌織さん、おばあちゃん、お母さんがいればもう、誰でも舌鼓を打つような料理が完成するだろう。叶恋も料理は人並みに出来るし、紗穂ちゃんはまだ一人でお弁当を作れないけど、最初から比べると充分に上達している。味見役は健太郎さん。部屋着でボケーっとスマホでユーチューブを見ている。
「作るのはチキン南蛮・鯛めし・肉じゃが・卵焼き。それから……柿の葉ずし。中身はおかかと鮭で。高校に入って初めての希咲のお弁当に入ってたんだ。思いだしてもらえると嬉しいな」
四月のことを思い返す。卵焼きを人質に取られて交換した柿の葉ずし。私は覚えている。
希咲は覚ええいるだろうか。私たちと過ごしたこのありふれた日常を。日常は、失ってから初めてそれは尊いものだったんだと気付く。私は取り戻したい。希咲と過ごしたかけがえのない時間を。私のことは嫌いでもいいから。また希咲が笑ってくれるように。
絶対にこのお弁当で思い出させるんだ。
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