戦国姫 (せんごくき)

メマリー

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208話

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「ケケケケ」

背中越しに奇声が聞こえ、振り返った瞬間、穣姫の首が犬歯を剥き出しにして謙信を襲っていた。

謙信は体をひるがえして首をよけて、脇差で渾身の一閃を放った。

穣姫は括目したまま死に絶えた。

息を荒げ、へたり込むようにして穣姫の生首を眺めていると、穣姫の貌は憑き物が取れたように穏やかさを取り戻すと、ぐにぐにと表皮、顔面筋が蠢き、相貌がみるみる変わっていった。

息を呑んで穣姫をただただ黙視していた、謙信の目が見開き、顔が歪む。

変化しきった穣姫の顔は、謙信の母、虎御前そのものだった。

「母上」

いざって、謙信が生首に近づこうとしたとき

 突然、がらがらと洞窟壁の一部が崩れ瓦礫が四方八方に飛び散った。

崩れた壁に大穴があき、後光が差す。光を遮るように手を翳す謙信の目に、人影が映った。


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