戦国姫 (せんごくき)

メマリー

文字の大きさ
上 下
190 / 227

188話

しおりを挟む
所かわって躑躅ヶ崎(つつじがさき)館(やかた)。晴信と勘助が二人っきりで対峙している。晴信は思慮深げにうつむき、額に人差し指を押し立てて、眉根を寄せている。

「んーーーん」

「どうかしたのですか?」

心配そうに晴信の顔をのぞき込む勘助。

「んーーーん」

「親方様」

晴信がぱっと顔を上げた。

「やっぱ。謙信ちゃんかわいいかったなぁ。なぁ勘助」

「はぁ」

妙なテンションの晴信に、当惑を隠せない勘助。

「なんかさぁこう強がってる曲に、なんか、かわいらしいとこ有るじゃない。有るじゃない。そう言うとこが、たまんないのよねえ」

「はぁ」

「一目惚れってやつかな?二回会ったから、二目惚れ。きゃー!何言わせんだ!!」

バシバシと勘助の肩を叩いて晴信が照れる。

「殿、謙信殿は、女の身なれど、最上、北条とのいくさに於いて確実に勝利し、領土を拡大せしめているのです。何か裏があるのやも」

「勘助ちゃん深読みしすぎよ。謙信ちゃん見たでしょ」

「は!」

「まさしく、菩薩って感じじゃない。「神のご加護を」って感じじゃない」

「しかし、それは、奴の戦略やも」

「勘助!!」

晴信は毛を逆立てて声を荒げ、がしりと勘助の肩を掴んだ。ゴクリと固唾を呑む勘助。

勘助を睨みつける晴信の目がふにゃりと溶け、晴信は勘助の顔を両手で挟み込んだ。

「目が曇ってるよ~。腐りきっちゃってるよ~。勘助。違うんだって。俺らとは、こう騙したり、騙されたり。騙されたりしてさ~。こう人の温もりとかさ~。慈愛みたいなものから、遠ざかってたからさぁ。メロメロッと来ちゃったんだよね~。おいら」

「殿は騙される方が多いんですから」

「今回は違うって。信用なさい!」

凛と胸を張る晴信。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【武田家躍進】おしゃべり好きな始祖様が出てきて・・・

宮本晶永(くってん)
歴史・時代
 戦国時代の武田家は指折りの有力大名と言われていますが、実際には信玄の代になって甲斐・信濃と駿河の部分的な地域までしか支配地域を伸ばすことができませんでした。  武田家が中央へ進出する事について色々考えてみましたが、織田信長が尾張を制圧してしまってからでは、それができる要素がほぼありません。  不安定だった各大名の境界線が安定してしまうからです。  そこで、甲斐から出られる機会を探したら、三国同盟の前の時期しかありませんでした。  とは言っても、その頃の信玄では若すぎて家中の影響力が今一つ足りませんし、信虎は武将としては強くても、統治する才能が甲斐だけで手一杯な感じです。  何とか進出できる要素を探していたところ、幼くして亡くなっていた信玄の4歳上の兄である竹松という人を見つけました。  彼と信玄の2歳年下の弟である犬千代を死ななかった事にして、実際にあった出来事をなぞりながら、どこまでいけるか想像をしてみたいと思います。  作中の言葉遣いですが、可能な限り時代に合わせてみますが、ほぼ現代の言葉遣いになると思いますのでお許しください。  作品を出すこと自体が経験ありませんので、生暖かく見守って下さい。

弟がヒーローになりました

アルカ
キャラ文芸
草薙円奈(くさなぎまどな)高校二年生。この春から弟がヒーローになりました。怪獣と必殺技を持つヒーローのいる世界で、姉は今日も美味しいお肉(怪獣)を持ち帰ってくる弟を応援する。そんな円奈と周りの人々のお話。 ◆小説家になろうさんで連載していたものです。

聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。 ――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる 『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。 俺と俺の暮らすこの国の未来には、 惨めな破滅が待ち構えているだろう。 これは、そんな運命を変えるために、 足掻き続ける俺たちの物語。

画中の蛾

江戸川ばた散歩
キャラ文芸
昭和29年、東京で暮らす2人の一見青年。 そこにもちこまれた一幅の掛け軸。 中に描かれたのは蛾。 だがそれは実は…… 昔書いた話で、ワタシの唯一の「あやかし」です。はい。 全5話。予約済みです。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

猫の神様はアルバイトの巫女さんを募集中──田舎暮らしをして生贄になるだけのカンタンなお仕事です──

春くる与
キャラ文芸
生まれた時に『この子は偉い神様の加護をいただく』と予言された私、塚森里。 就職に失敗し、住んでいた家を火事で焼け出され。 右肩下がりの人生の果てに、流れ着いたのは亡くなった祖母が暮らしていた田舎の村。 そこで出会ったのは、謎のイケメン神主さん。 不思議なことが起こる神社。 悪いこと続きだった人生は、穏やかな田舎暮らしに癒されていく。 村に住む人々は、みな温かい。 料理上手なお隣のおばあちゃん。 ちょっとノリの軽いオネエ口調の世話人さん。 けれど、のどかな里山には働き口などないと諦めていた。 そこに仕事の話が舞い込む。 猫の神様を祀った神社で巫女のアルバイト。 だけど仕事の内容が神様の生贄になることって、それは時給いくらの仕事なの。 ちょっと不思議な田舎の村暮らし。 穏やかだけど、ドタバタと様々なことが起こる日常の物語。

処理中です...