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157話
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源助はかしこまって、謙信の前でひれ伏している。
普段着から正装に着替え、謙信が上座で胡坐をかいている。
「晴信様よりの伝言で御座います。一度謙信公と会見いたしたいとのこと。晴信様は、駿河、遠江、三河へと兵を進める所存、後方の謙信公と講和を結び、京都へ向かわれる御つもりで御座います」
「晴信は京を目指すか。天下人にでもなるつもりか」
神五郎がぼそりと零す。謙信は神五郎を手で制する。
「謙信公に置かれましては、親方様は、共に天下をと、申されておりました」
「私は、朝廷より関東管領職を頂いておる。北条氏とのいくさを控えており、天下を望むなど考えたことも無いわ」
「晴信公との会見の件何卒!」
源助が畳に額を押し付ける。
「まぁよい。晴信公との会見の件は後日連絡いたす」
源助は畳に額を付けて一礼。義足を立てて立ち上がり、大仰に体を捻って謙信に背を向けた。
「源助殿」
謙信は源助に近づき、眼帯を嵌めた戦傷だらけの顔をそっと撫で
「戦人(いくさびと)の良い顔じゃ。神の加護がありますように」
神仏に祈るように両手を合わせた。
普段着から正装に着替え、謙信が上座で胡坐をかいている。
「晴信様よりの伝言で御座います。一度謙信公と会見いたしたいとのこと。晴信様は、駿河、遠江、三河へと兵を進める所存、後方の謙信公と講和を結び、京都へ向かわれる御つもりで御座います」
「晴信は京を目指すか。天下人にでもなるつもりか」
神五郎がぼそりと零す。謙信は神五郎を手で制する。
「謙信公に置かれましては、親方様は、共に天下をと、申されておりました」
「私は、朝廷より関東管領職を頂いておる。北条氏とのいくさを控えており、天下を望むなど考えたことも無いわ」
「晴信公との会見の件何卒!」
源助が畳に額を押し付ける。
「まぁよい。晴信公との会見の件は後日連絡いたす」
源助は畳に額を付けて一礼。義足を立てて立ち上がり、大仰に体を捻って謙信に背を向けた。
「源助殿」
謙信は源助に近づき、眼帯を嵌めた戦傷だらけの顔をそっと撫で
「戦人(いくさびと)の良い顔じゃ。神の加護がありますように」
神仏に祈るように両手を合わせた。
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