戦国姫 (せんごくき)

メマリー

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第152話

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滑車で作動するように細工された鋼鉄製の扉が自動的に開く。源助が地下研究室に雪崩れ込むようにして入ってきた。彦太郎は慌ただしい来訪者に振り向きもせず、治療台上の物体に手を掛けていた。簾のように天井から垂れ下がった、数千本もの配線が治療台上の物体に集中して降り注いでいる。

 「彦太郎!できたか?!」

 彦太郎はふ~。と小さなため息を漏らすと、源助に向きを直して膝をついた。

「お頭、完成いたしました。後は、作動させるだけでございます」

彦太郎は改まった口調で源助に言った。

「ご苦労!皆よくやってくれた」

「は!!」

源助が労いの言葉をかけると、その場にいたすべての忍びたちが膝を折り、源助に頭を下げた。

「配置に就け!!時は、一刻を争う」

源助は興奮で粟立つ腕を大きく振りかぶり、手刀で空を切る。

「は!」

源助以下全ての忍が、色眼鏡を装着し配置に付いた。

「我等影忍の力!科学の結集!森羅万象の神々に抗い給うた、最終忍術!今ここに完成させるのだ!」 

重々しい機械音がコンクリート壁を殴打し、無数の配線や機械から火花が飛び散る。透破衆が慎重にコントロールパネルの調節を行う。台上の物体から閃光が迸った。ウイーンと鈍い機械音と共に、台上の物体が動き出した。四方八方から照射されるレーザー光線が物体に集約される。

「忍法!黄泉帰り!」

源助が騒音の中叫ぶとレーザー光線が集合し、物体の頭上を突き刺した。

人の形をした物体は、無数の配線を引き千切りながらゆっくりと診療台を下り、モーター音を響かせて立ち上がった。ドライアイスとショート寸前の機器から発生した煙幕の中、仁王立ちした物体の目が赤光した。
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