戦国姫 (せんごくき)

メマリー

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151話

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重治の親兄弟は戦渦に巻き込まれ皆殺しにされた。唯一生き残った重治も瀕死の状態だった。

「百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。彼を知り己を知れば百戦して殆うからず。兵は国の大ことにして、死生の地、存亡の地なり。察せざるべからず」

こと切れる寸前の幼子が、弱々しく諳んじる孫子を耳にした源助が、重治を抱きかかえ忍びの里に連れ帰った。

重治は源助が教える、物理工学、電子科学、薬学、鉱石学等々様々な学問を乾いた大地が雨水を蓄えるように吸収していった。

源助はそれまで、摩訶不思議な術として認識されていた忍法を科学として捉え、研究していた。

源助は重治の才を見抜き、忍術科学班上忍頭彦太郎のもとに5つに満たない重治を預けた。

十歳になった重治は他の忍びを抜きん出て、彦太郎の片腕となっていた。

彦太郎はこの才能溢れる子供を実弟のように可愛がった。彦太郎もまた、戦がもたらせた孤児の一人だった。
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