戦国姫 (せんごくき)

メマリー

文字の大きさ
上 下
133 / 227

第131話

しおりを挟む
秀忠が揺らされた頭を元に戻した瞬間、凄まじい風音が秀忠に吹き付けられた。

ボタン

鬼斬り丸の紫電瞬(またた)き、切り落とされた秀忠の蛇頭が地を這った。

狼の体躯がバターンと音を立てて倒れ、黒煙を上げて炎上し始めた。

「おのれ景虎。我は死なぬ。我は死なぬぞ!!!!!!オレハ・テン。カ・ミ・ナ・ノ・ダ」

全身から放たれる火柱に顔面を焦がしながら、秀忠は息絶えていった。

景虎は秀忠の死を見届けると、段蔵の許へと駆け寄った。

「段蔵さん!!」

「はぁ。はぁ。俺は大丈夫だ」

息も絶え絶えな段蔵だったが、景虎に心配かけまいと、必死に笑って見せる。

「大丈夫じゃないよ!!!!!」

景虎は段蔵の左腕を両手でぎゅっと握りしめ、涙を浮かべる。

「何を泣いているんだ。泣き虫だな。景虎は」

萎れ顔で肩をしゃくる景虎の頭を、段蔵が右手で優しく撫でる。

「だって、段蔵さんの腕が、腕が!」

段蔵の左腕は、秀忠の体内に炸裂弾を押し込んだ時、根元から食い千切られていた。
しおりを挟む

処理中です...