戦国姫 (せんごくき)

メマリー

文字の大きさ
上 下
117 / 227

第115話

しおりを挟む
秀忠の謀反から一年半が経ち、景虎は十五歳になっていた。

黒田秀忠は、景虎が強く要望し、段蔵に解毒剤を処方させたお蔭で、一命を取り留めた。

上杉定実に景虎が嘆願し、秀忠は元の黒滝城主としてことなきを得た。

越後守護上杉定実は、殊の外景虎を可愛がった。

お気に入りの景虎の頼みとあれば、造作も無いことだった。

「景虎よ、こっちこい。気に致すな、もそっと、こっちに」

定実は越後守護と言う地位にありながらも戦国大名の風格なく、流々と続く家柄に胡坐をかいた優男だった。

齢五十は悠に過ぎていると言うのに、つるりとした色白で、頬を赤く染めた血色のいい顔をしていた。

定実が女だけでなく、衆道にも手を出すほどの好色ぶりは、越後では有名な話だった。 

定実は美少年で高名だった景虎を嘗め回すように視姦し、舌なめずり、にやけた顔を景虎に向けた。
しおりを挟む

処理中です...