戦国姫 (せんごくき)

メマリー

文字の大きさ
上 下
90 / 227

第89話

しおりを挟む
「有難いか、有難く無いかは、お主次第じゃがな。お主このままじゃ、闇に呑まれて、命を落とすぞ」

眼の奥に光を宿して、光育が焦点の合わない景虎を睨む。

「いいんですよ。死んでも。むしろ僕が死んだ方が、光育様だって嬉しいんじゃないですか?へへっ」

へらへらと笑う景虎の目が、所在なげに虚空を泳ぐ。

光育はふ~。っと、深いため息をついて、手を合わせた。

オン・ベイシラマナヤ・ソワカ オン・ベイシラマナヤ・ソワカ 
オン・ベイシラマナヤ・ソワカ オン・ベイシラマナヤ・ソワカ
オン・ベイシラマナヤ・ソワカ オン・ベイシラマナヤ・ソワカ

「お祓いですか?そんなの効くわけないじゃないですか。僕は物の怪に取りつかれている訳でも、病でもないんだから。僕自身の問題なんだ。お師さま。悪いが今日は気分が悪い。出て行って頂けませんか?それとも、呪詛でも唱えようと言うのですか?悪いがそれも効きませんよ」

景虎はどす黒い光を瞳の奥に宿す。
しおりを挟む

処理中です...