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第80話
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為景の葬儀の日、景虎は、自分の所為で為景が死んだのではないかと、自責の念に駆られていた。
畳に突っ伏していると、ズンと頭が重くなり意識が遠のいた。薄い意識の中で、己の体が勝手に動き出していた。景虎は己が体躯を取り返そうと意識の中でもがいたが、どうにもならなかった。景虎の意思とは別に、体は甲冑を装着し、葬儀の場へと向かった。気が付けば長兄晴景の隣に座っていたのだった。
―だ、が、みながお前を褒めそやし、城主に据えた。お前もさぞ気分が良かったことだろう。
「そんなことはない!家中の者の意に沿ったまでのことだ。己の体が言うことを聞かない。意思にそぐわぬ所業を行う。こんな、恐ろしいことはないではないか」
―でも、誉められたわけだ、結果的に。それで、お前はいい気になっている
「いい気になんかなってない!あれは、僕じゃない。僕の中にいる僕以外の何かの仕業だ!僕とは関係ない!だけど、皆が喜んでくれた。僕を誉めてくれた。城主になってくれと頼まれた。僕は、僕はみんなに応えただけなんだ」
―偽善だ!己が心中を満たす、賛美の言葉に酔い。有頂天になっているんだ。自分の手柄にしてしまおうとな。違うとは言わせねーぞ
「誰なんだ!お前は!姿を現せ!」
―為景を殺したのはお前だよ。お前のことを病んで、死んだんだ。
「やめろーー!!!」
景虎は自らの両耳を拳で殴り続けた。耳から血流してもなお、声は治まらなかった。
畳に突っ伏していると、ズンと頭が重くなり意識が遠のいた。薄い意識の中で、己の体が勝手に動き出していた。景虎は己が体躯を取り返そうと意識の中でもがいたが、どうにもならなかった。景虎の意思とは別に、体は甲冑を装着し、葬儀の場へと向かった。気が付けば長兄晴景の隣に座っていたのだった。
―だ、が、みながお前を褒めそやし、城主に据えた。お前もさぞ気分が良かったことだろう。
「そんなことはない!家中の者の意に沿ったまでのことだ。己の体が言うことを聞かない。意思にそぐわぬ所業を行う。こんな、恐ろしいことはないではないか」
―でも、誉められたわけだ、結果的に。それで、お前はいい気になっている
「いい気になんかなってない!あれは、僕じゃない。僕の中にいる僕以外の何かの仕業だ!僕とは関係ない!だけど、皆が喜んでくれた。僕を誉めてくれた。城主になってくれと頼まれた。僕は、僕はみんなに応えただけなんだ」
―偽善だ!己が心中を満たす、賛美の言葉に酔い。有頂天になっているんだ。自分の手柄にしてしまおうとな。違うとは言わせねーぞ
「誰なんだ!お前は!姿を現せ!」
―為景を殺したのはお前だよ。お前のことを病んで、死んだんだ。
「やめろーー!!!」
景虎は自らの両耳を拳で殴り続けた。耳から血流してもなお、声は治まらなかった。
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