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社会人編
挨拶
しおりを挟む「真巳さん……本当に俺の格好、可笑しくないですか?やっぱりもっと落ち着いた色のスーツの方が……」
「もう~、大丈夫だってば!今日も隼人はメチャクチャ可愛いよ!」
緊張MAXの俺は、岡田のスーツの裾をギュッと掴んで何度も立ち止まる。
「可愛いって……可愛いじゃダメじゃないですか!もっと真巳さんに相応しくカッコいい感じじゃないと……やっぱり着替えてきます!」
「はいストップ~」
回れ右して帰ろうとした俺の肩をガシッと掴んで岡田が俺の動きを封じた。
「ここまで来て悪足掻きしないの。さあ、覚悟決めて中に入るよ」
「や、やだっ!ちょっと待って……まだ入れないで……!」
後ろからグイグイと肩を押して歩を進めようとする岡田を振り返り涙目で訴える。
「ちょ、隼人っ……そのセリフ、涙目で言うとエロく聞こえちゃうからヤメテ……ああ、こら!今は抱き付かないでっ!必死に我慢してるところなんだからっ!」
岡田が顔を赤くして立ち止まった隙にギューッと抱き付いて岡田の胸に顔を埋めた。
どうしてだか必死に俺を離そうとする岡田に俺も必死にしがみ付く。だって岡田の匂いを嗅いで気持ちを落ち着かせたいんだもん。
いつも一緒に居る岡田は俺の精神安定剤だ。一番心が安らぐし、癒される。好き。
岡田の胸に顔をグリグリと押し付けて何度も深呼吸していると、硬くなって存在を主張している岡田のモノが俺の腰にあたる。
「真巳さん?」
「も~……だから抱き付かないでって言ったのに~隼人がエロくて可愛いから我慢出来なくなっちゃったじゃん……」
天を仰ぎ赤い顔を手で覆っている岡田。そんな体勢で暫く動かない岡田は天を仰いだままブツブツ何か言っている。
「あ~……こんな可愛い隼人を今すぐベッドで愛したい……今日はもうこのまま帰っちゃってもいいかな……いいよね?うん、いい!よし帰ろう!」
「って、いいわけあるかっ!!」
帰ろう!と、俺の背中を押した岡田に、専務から激しいツッコミが入れられた。
頭を勢いよく叩かれた岡田は後頭部をさすりながら専務を恨めしそうに睨んでいる。
「痛いよ、宗君」
「そりゃ思い切り叩いてやったからな。ほら、お前たちの為に皆集まってるんだ。さっさと中へ入れよ」
同じマンションに住んでいるんだからと俺たちと一緒に来ていた社長と専務。
散々門の前で待たされてちょっとキレ気味な専務と苦笑している社長に促され、今までなんだかんだで渋っていた格調高い門の中へ、とうとう足を踏み入れてしまった。
この少し先に見える玄関の大きな扉を開ければ、もうそこには岡田家の方々がいるわけで……。
ああ、ヤバい。また緊張してきた。……でも、覚悟を決めないとな。今日は、なんとしても岡田家の皆様に俺を岡田のパートナーとして認めてもらわなければ。
頑張るぞ!と、意気込んで力む俺の腰を優しく抱いて引き寄せる岡田。
「大丈夫。隼人はいつも通りにしていればいいんだから。ね?」
「は、はい!」
俺を落ち着かせるようにフワッと柔らかく笑う岡田に、なんとか笑顔で返事をする。きっと、凄く不細工な笑顔だったと思うけど,さっきまでは笑顔も作れないくらい緊張していたから、ちょっとはマシになったかな。
岡田が隣にいてくれたら……岡田の隣にいる為なら、俺は何でもする。絶対、岡田の家族に認めてもらうんだ。
岡田のエスコートのもと、俺は意を決して開かれた扉の中へと歩み入った。
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