陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

最強

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「美味しい~!」


お祖母さんが頬に手を当て幸せそうに悶えている。お祖父さんも満足気にウンウンと頷きスプーンをパクパクと口に運んでいた。


「いやいや、これは期待以上の美味しさだ」

「でしょでしょー!はやとくんのごはんは、せかいでいちばんおいしいんだよ!」

「この親子丼も凄く美味しいな……」

「え~?!いいないいな!おやこどんもたべたい!」

「ぼ、ぼくも!!」


お兄さんが食べながら感嘆の声を漏らすと、それを聞き逃さなかった裕翔君と葵がテーブルに身を乗り出して食べたいと騒ぎ出した。フフッ、可愛いけどちょっとお行儀が悪いぞ? 


「葵、裕翔君、ちゃんと座ろう?親子丼も用意してあげるから待ってて?」

「ああ、隼人君!私にも少し頂戴!」

「私の分も頼む!」


俺が子供達に座るよう促している横でお祖母さんとお祖父さんがズイッとお皿を差し出してきた。
2人とも既にオムライスを完食している。

小さめのお皿に親子丼を盛り付けトレーで運ぶと、早く頂戴と言わんばかりに4人がサッと手を出す。


「お口に合うと良いですけど」


親子丼を手渡していく皆の目が嬉しそうに輝いていて、そんな皆の反応が俺も嬉しくって笑みが溢れた。


「「「「おいしい~!!」」」」


4人が声を揃え美味しいと言ってくれてホッと息を吐く。良かった。


「もっとたべたーい!すくないよ、はやとくん!!」

「そんなに食べたら夜ご飯が食べられなくなるでしょ?また今度作ってあげるから、今日はこれでお終いだよ」


親子丼もペロリと食べてしまった裕翔君が頬を膨らませブーブーと文句を言い、その横では葵がスプーンを握り締めジッと俺を見上げてくる。
2人の親子丼は子供用のお茶碗に味見程度の量しか盛らなかったから不服らしい。


「こんどっていつ?あした?」

「う~ん?明日はまだ俺はここにいるから無理かな?帰ったら作ってあげるよ」

「むりじゃないよ!ぼくたちもかえらないから!ねえ、あおくん?」

「うん!」


……おおっと困った。どうしよう。


チラッと岡田の方を見るも、岡田も困ったなぁというように肩を竦めている。こうなった子供達は、なかなかに頑固なんだよね。


「ふふっ、よっぽど楽しかったのねえ。ここでは沢山遊べたかしら?」


親子丼を食べ終わったお祖母さんがニコニコと話しかける。
駄々をこねていた子供達はお祖母さんの問いかけに一瞬のうちに笑顔になり「うん!」と元気に答えた。


「うみにいっていっぱいあそんだんだよ!」

「あ、あのね、あのね、ゆーくんと、かいをいっぱいひろったの!きれいなかい!ね?ゆーとくん」

「うん!すっごくきれいなかいが、い~っぱい!」

「いいなぁ。私にもその貝を見せてくれる?」

「うん!」


お祖母さんに可愛くお願いされ、子供達はテンション高く自分達の荷物のある方へ走っていきビニール袋に入った貝を自慢気にテーブルへと並べた。


「凄いわねぇ、本当に綺麗!私も欲しくなっちゃったなぁ。ねえ、裕翔君と葵君、私が貝を拾うのをお手伝いしてくれない?」

「おばあちゃんも、ほしいの?」

「う、うん、いいよ!ねえ、ゆーくん?」

「うん!ぼくとあおくんが、いっしょにひろってあげるね!」

「わあ、ありがとう!じゃあ2人が帰る前に海に寄ってもらって貝拾いをしましょうか」

「「うん!」」


お祖母さんにお願いされた貝拾いの任務に2人のテンションはMAXになったらしく、元気よく返事をした2人はいそいそと帰りの準備を始める。


……す、凄い。あんなに帰らないと駄々をこねていた2人を、こんなにいとも簡単に心変わりさせられるとは……。


尊敬の眼差しでお祖母さんを見ていたら、お祖母さんと目が合い微笑みながらパチンとウィンクされる。……俺の中でお祖母さん最強説が誕生した瞬間だった。






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