陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

初恋

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「裕翔?」


暫く固まっていた裕翔君はハッと我に返ると、興奮した様子で更にグイッと近づいて来る。


「すごーい!はやとくんにそっくりだ!ちっちゃいはやとくんだね!」

「あ~、それ分かる~!僕も初めて会った時、そっくり過ぎて感動したもん!」

「だよね、だよね!」


興奮気味の裕翔君に便乗して岡田もキャッキャと騒ぎ出した。


「あの、葵が限界なんでそろそろやめてもらっていいですか?」

「えっ!ごめん!!」


俺と手を繋いだままプルプルと震えている葵は、目に涙をいっぱい溜めて泣くのを必死に我慢している。
極度の人見知りな葵には元気過ぎる岡田と裕翔君は刺激が強過ぎたらしい。


「葵、大丈夫だよ。怖くないからね。ちゃんと自己紹介できる?」

「…………とくら あおいです」


涙目になりながらも自己紹介をする葵、マジ可愛い。


「「か、かわい~!!」」


そんな葵を可愛いと思ったのは俺だけじゃなかったみたいで。

岡田と裕翔君が赤く染まった頬を両手で押さえながら悶えるという全く同じ動きをして可愛いを連呼している。

そうだろう、そうだろう。ウチの子は可愛いだろう。マジ天使。


「……うぅ……」


2人がまた騒ぎ出すと、葵はとうとう我慢の限界がきたらしくポロポロと涙を零した。


「ああっ、ごめんね!?ぼく、ゆうと。おかだ ゆうとっていうんだ!ほんとにごめんね?ぼくのへやでいっしょにあそぼう?」

「…………うん」


泣き出した葵を見て慌てた裕翔君がサッと手を差し出して葵を誘ってくれ、葵も溢れてくる涙を拭いながらそっと差し出された手を取って2人でゆっくりと歩き出す。


「裕翔君、お願いねー」

「はーい!」


2人の後ろ姿に声をかけると、赤い顔をした裕翔君が嬉しそうに頬を緩めて振り返り返事をしてくれた。

良かった。2人とも優しい子だから仲良くなれるといいな。


「ん~、あれは葵君に恋しちゃった顔だな~」

「えっ!?」


驚いて岡田を見ると、ニマニマと笑って2人を見送っていた岡田がニヤけ顔のまま俺に目を移す。

腰を抱かれた俺はグイッと引き寄せられ、岡田に密着した状態で体を固定されてしまった。
お互いの鼻先がくっ付くほど顔を近づけてくる岡田にドキドキする。
……クソッ、カッコイイ。


「あれは恋に落ちた顔だよ。裕翔は僕の甥だからね。僕と好みのタイプが似ているのかもしれないなぁ。葵君は隼人にそっくりだもんね?」

「そんな……んんっ」


岡田が俺の口をキスで塞ぎ話せなくしてしまった。

玄関に俺達以外誰も居なくなったのをいいことに、舌を絡めた濃厚なキスをしてくる。
普通の家よりもかなり広い岡田家の玄関はクチュクチュと舌を絡める音が響いて、キスなんていつもしているのに、いつも以上に興奮してしまう。


「はぁ……あ……ぁ」

「フッ……可愛い。続きは帰ってから、ね?」


ペロッと俺の唇を舐めてから遠ざかる岡田の顔を名残惜しく見つめると、岡田の綺麗な指が俺の頬をスルリと優しく撫でた。


「我慢してるんだから、そんな可愛い顔して見つめないでよ。ここで襲われたいの?」

「ち、違っ……!」


「フフッ、冗談だよ。僕達はリビングに行こうか」


クスクスと笑って俺の手を取る岡田の背中を俺は真っ赤な顔でポカポカと叩きながらリビングまで移動する。

お兄さんは遅くなるということなので、岡田のリクエストでオムライスを作って4人で食べた。

葵と裕翔君はすっかり仲良くなったみたいで、ずっとくっついて行動していた。……主に裕翔君が。


「あおいくんのとなりでたべたい」

「あおいくんといっしょにおふろにはいりたい」

「あおいくんといっしょにねたい」


葵にべったりの裕翔君による「あおいくんと」のおねだり攻撃で帰るのがかなり遅くなってしまった。
流石に明日も裕翔君は幼稚園、葵は保育園があるので一緒に寝るのは無理だと判断。
お風呂だけ岡田が2人に付き添って一緒に入ったが、その後帰る支度をし始めると「あおいくんかえらないで」と、裕翔君に駄々をこねられて大変だった。
こんな風に我儘を言う裕翔君は珍しいと岡田が少し驚きつつ、「愛が人を変えるんだねぇ」とニマニマしながら言う。
俺はそんなオヤジくさい岡田を白い目で見ていたのだけれど。

丁度そこへ帰ってきたお兄さんに宥められ、裕翔君はなんとか大人しくなった。

帰り際、シュンとして寂しいオーラ全開の裕翔君に葵がニッコリと可愛さ溢れる笑顔を向けギュッと手を握った。


「ゆーとくん、きょうはなかよくしてくれてありがとう。ぼくね、とってもうれしかったし、とってもたのしかった。またあそんでね?」

「……うん。つぎはいつあそべる?あした?あしたは?」

「え?えっと……ぼくはあそべるけど……」


葵が困ったように俺をチラッと見上げる。
せっかく仲良くなれたから葵も遊びたいのだろう。
はっきり返事をしないのは、我儘を言えば俺を困らせてしまうと思っているからだ。

俺は葵の頭をヨシヨシと撫でて目を細める。


「いいよ。葵ももっと裕翔君と遊びたいんだろう?明日も俺が保育園にお迎えに行くよ。いいですか?お兄さん、真巳さん?」

「勿論だよ。裕翔が言い出したんだし、大歓迎さ。葵君、ありがとう」


ニッコリと笑ってお兄さんにお礼を言われた葵が照れて顔を真っ赤にしている。
どうやら葵も岡田家の綺麗な顔は好きらしい。……まあ、これだけのイケメン達を嫌いな人はいないと思うけどね。

そんな葵とお兄さんの間に裕翔君が割って入ってムスッと頬を膨らませた。


「パパだめだからね!あおいくんはぼくとけっこんするんだから、パパにはあげないよ!」

「「「え!?」」」


驚いて固まる俺達大人なんてお構いなしに、爆弾発言をかました裕翔君は満面の笑みを浮かべながら「ねー」と葵と手を繋いで嬉しそうにしていたのだった。

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