陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

義兄と甥

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「はじめまして!立花君のの岡田真巳と申します!」



土曜日。


義兄と甥が到着すると岡田が早々に嬉々として自己紹介をした。


「あ、は、はいっ!義兄の都倉 隆弘です」


岡田の勢いに圧されてたじろぎながら義兄が挨拶すると、義兄の後ろに隠れていた甥が恐る恐る少し顔を出して岡田を見上げる。


「この子は息子で葵っていいます」

「……あおいです」


岡田は義兄の後ろに隠れる葵の姿を見つけると、目を瞠りバッと両手で口を押さえた。


「か、可愛い~!!!本当に立花そっくりだねー!!」


岡田の大きな声にビックリして葵が義兄の背中に完全に隠れてしまった。
岡田が自重して自分の口を押さえていなかったらもっと大きな声が出ていただろう。

隠れながらプルプルと震えている葵はとても可愛くて目尻が下がりまくるが、驚かせてしまった岡田がアワアワと慌てているので横からフォローをしてやる。


「葵。ビックリさせてゴメンね。この人は優しくてとっても良い人だから怖がらなくても大丈夫だよ」

「た、立花~」


泣きついてくる岡田の頭をヨシヨシと撫でてそう言うと、再び葵がそ~っと義兄の背中から顔を覗かせた。


「……いいひと?」

「うん、とっても」


ビクビクと岡田を見上げる葵に、おいでと手招きをする。
葵はおずおずと義兄の背中から姿を見せると、すぐに俺にピタッとくっついて岡田を見上げた。


「大きな声を出しちゃってゴメンね?葵君が可愛くてつい大声になっちゃったよ」


ペコペコと頭を下げて必死に謝る岡田の姿に安堵したのか、葵がホッと息を吐いてから少し微笑んだ。


「……ううん、だいじょうぶ。ぼくもビックリしちゃってゴメンなさい」

「やっぱり可愛いー!!立花~、可愛すぎてムリ~!!我慢出来ない~!!」

「いやいや、我慢してください」


ニコッと微笑んだ葵に胸を撃ち抜かれたらしい岡田は、俺にしがみ付いて悶えている。
そんな岡田に葵がまたビクリと体を強張らせたのが伝わってきて今度は葵の頭をヨシヨシと撫でながら見下ろした。


「ゴメンね葵、言い間違えた。この人はだけど、優しくてとっても良い人だから大丈夫だよ」

「え……へんなひとなの?」

「うん、ちょっとだけね」

「やめて立花!葵君が本気にしちゃうじゃん!!いきなり嫌われちゃったらどうしてくれるのさっ!!」


ビクビクしながら見上げてくる葵に慌てた岡田が俺の体をユサユサと揺さぶり泣きそうな声を出している。なんならもう半泣き状態だ。……本気で言ったんだけどな。

やれやれと、溜息を吐いてしゃがみ、葵と目線の高さを合わせてジッと目を見つめた。


「俺のね、大切な人なんだ。これから仲良くしてあげて?」

「はーくんの?」

「うん」

「…………わかった」


大きな目で俺をジッと見つめ返していた葵が大きく頷いてニコッと微笑んでくれた。

「ありがとう」と、葵の頭をひと撫でして岡田を見上げるとプルプルと震え両手で顔を覆い悶えていた。


「どうしよう……立花と葵君が可愛すぎて心臓がもたない」


…………俺もかい。

クネクネと体を捩って悶えている岡田を未知の生物でも見るかのような目で見ていた葵が俺の服の裾を引っ張り心配そうに眉尻を下げた。


「はーくん……ほんとにこのひと、だいじょうぶ?」

「…………うん……たぶんね。隆弘さん、葵、行こうか」


悶える岡田を横目で見ながら案内し、オロオロする義兄と葵の背を押してマンションの中へと入る。

ーーそう、此処はまだマンション前の道路なのだ。

俺と迎えに出た岡田が、義兄と甥の姿を見るなり駆け寄ってフライング気味に挨拶をしたのが冒頭の出来事。 


その岡田が俺達がいなくなったのに気付いたのは、俺達がマンションに入ってすぐのことだったみたいで、ロビーには外から叫ぶ岡田の声が響いてきた。



「もう、立花ひどい!置いて行かないでよー!!」



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